打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

ファンディーナはなぜ惨敗したのか

年明けからデビュー3連勝、そのどれもが圧勝。

牝馬として69年ぶりの皐月賞に挑んだファンディーナだったが、その願いは叶わず7着に惨敗した。

何故? やはり牝馬は牡馬に敵わないから? そうとは全く思わない。全く別の敗因がある。そう思ってこの記事を書いた。

同じようにファンディーナに期待して、同じようにむなしい思いを抱えた人たちに読んでもらいたい。

2戦目: つばき賞

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1戦目は9馬身差圧勝だったが、圧勝すぎてよくわからないので割愛。2戦目のつばき賞は絵面的には地味だが圧倒的なパフォーマンスを見せつけた。

内容としては、超スローペースを2番手追走し、ゴール前なんとか差し切ったという形。

上記はそのレースのラップタイム。見ての通り、ゴール前400m地点から急加速してゴールまでスピードを落とさない。

400m地点の10.7秒というタイムは、これまで1400m走ってきた馬にとってはほぼ限界タイム。しかもこのレースでは、馬場は雨を含んでいて緩かった。

このラップを刻んだ逃げ馬(タガノアスワド)も強かったが、ファンディーナは400m地点では全く差を詰められないものの、200m地点では前がほぼ減速していないのにも関わらず2馬身差を差し切って逆に1馬身差でゴールした。これはファンディーナ自身が11.0秒よりも速い足を使ったことを意味していて、おそらく10.7秒。

サラブレッドの限界の足を使えて、それを400mも維持することができる。人間で400m全速力で走り続けることは難しいし、それはサラブレッドも同じ。この時点でファンディーナはかなり強いな、と感じた人は多いはず。

ただ、この内容だけでは「超スローペース巧者なだけで、ペースが上がると大したことないのでは?」という懸念はあった。

3戦目: フラワーC

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GIIIレースということである程度メンバーが揃い、試金石になるかなと思っていたが、ここで5馬身差圧勝。正直度肝を抜かれた。

残り400m地点で一瞬のギアチェンジ、その数秒だけで勝負を決めてしまうというのは圧倒的なパフォーマンスだった。まぁ一瞬の加速力とかトップスピードといったところはつばき賞でも見せていたのだが、ここで注目していたのがペースへの対応力。

前半800mの通過タイムが48.8で、これは決して遅くない。ましてや馬場が荒れていた状態なので、どれだけ遅く見積もっても平均ペース。実際2着のシーズララバイで見たら全くの平均ペース。

それをファンディーナだけが48.8-12.3-47.6のスローペースでまとめてしまった。この時点で皐月賞は必ず勝てると感じた。

皐月賞は1000m通過が60秒を切る速いペースになりやすい。当然そのペースに耐えきれない馬は勝負の土俵に乗れない。つばき賞の内容だけでは不安だったファンディーナは、フラワーカップでこの条件をクリアしてきた。荒れた馬場で400m48.8秒で行けるならば、皐月賞のペースはクリアできるはず。その上でこれだけの足を使えるならば勝ちは間違いない。牝馬69年ぶりの皐月賞制覇は確実だと思っていた。

4戦目: 皐月賞

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現実は非情である。69年ぶりの偉業に挑んだファンディーナは7着に破れてしまった。もうちょっと頑張れれば… というレベルではない完敗。

ペースとしては59.0-58.8という平均ペース。フラワーカップの内容からは平均ペースに対応できそうなのに、直線全く弾けることなく終わってしまった。何故なのか? 以下に考えられる敗因を述べたい。

前半に無理をしすぎた

ペースとしてみたら平均ペースなのだが、今までのレースとは決定的に違うところがあって、それはスタートから200m地点でのラップタイム、10.8秒。スタートからの先行争いとして、このラップタイムは決して珍しいものではないが、ファンディーナにとっては経験したことのないぐらい速い先行争いだった。

思えばフラワーカップもつばき賞も、先行争い自体は非常に緩い。その中でポジションを取っていたファンディーナだったが、皐月賞でも同じように出していった結果、このペースに巻き込まれてしまった。このラップタイムが致命傷になった可能性は高い。

レース全体の仕掛けが早かった

ラップタイムを見るとゴール前800m地点から加速するような競馬になっている。これまでのレースではゴール前400m地点で一気に加速、トップスピードに乗ってあとは独走という、つまり加速力とトップスピードが最大の武器だった。

それが緩やかに加速し、トップスピードが要求されない競馬になったのは痛かった。これまで見せてきたファンディーナの武器が全く活きない展開となってしまった。

ただ、逆に言えば緩やかに加速する展開では力を発揮できないということになる。ちょっと速いスピードを踏まされるとすぐに体力が削られてしまうというか。

5戦目: ?

戦前では皐月賞日本ダービーというローテーションが伝えられていた。では日本ダービーではどうなのか。ちょっと微妙だなぁと思っている。

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映像・ラップタイムは昨年の日本ダービーのもの。皐月賞よりも400m長くなるが、ここでも先行争いは速いラップを踏むことになる。前半無理がきかないということが明らかになったので、勝つとすれば後方からの競馬、脚質転換を図る必要がある。

その上で、2400mは長距離戦の部類になるので、仕掛けどころが分散するリスクがある。このレースではゴール前1000mで一段階目の加速、400mで二段階目の加速が行われた。レースに勝つためには一段階目の加速で体力を削がれないことは絶対条件で、これは皐月賞で徐々に加速する展開でさっぱりだったファンディーナには厳しい条件。

では牝馬限定戦のオークスではどうかというと、距離も競馬場も同じなのでほぼ同じ展開。春二冠は確実だと思っていたけど、暗雲が漂ってきた。

ただ、つばき賞の内容は本物で、あれだけのトップスピードをあれだけ持続させることのできる馬は稀有。スケールは怪物レベルだと思うし、超スローペース→直線でのトップスピード戦になりやすい凱旋門賞では、日本馬で最も勝利に近いと思う。ダービーかオークスかは分からないけど、なんとか結果を出してフランスに行って欲しい。

さらに言えば、皐月賞の上位は1600m路線からの参戦を決めた馬が多かったわけで、それだけ短距離馬に有利な展開だったと言える。距離が伸びるダービーではその馬たちの序列はもちろん下がる。レースを見ても、牝馬は所詮牡馬に敵わないというような印象はなくて、適した展開・適した戦略であればダービーは狙える範囲にある。素質は本物だと思う。次戦どこに向かうか分からないけど、期待したい。