打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

9mm Parabellum Bulletと僕

※以下、まとまりのない内容です。

 僕が9mm Parabellum Bulletに出会ったのが11年前(もうそんな前になるのか...)、当時購読していたROCKIN' ON JAPANに掲載されていた、期待の新人バンドのコーナーに掲載されていたのを見てから。なんか「ガラス張りの部屋の中で目の前の全てを重力崩壊させようと音をかき鳴らすバンド」みたいな、ロキノンらしいクッソ寒い紹介文が添えられてたと思うんだけど、当時は絶賛中二病だったので「うわ何これ、カッコ良さそう!」と思い、検索窓にバンド名を打ち込み、どんな曲を出してるんだろうと調べた。

 そして衝撃を受けた。

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 talking machine。今見たらPVがとてつもなくダサい。

 ダンサブルなリズムに切れ込むようなギターリフ、叩きつけるようなドラムスネアの音。その全てが新鮮だったし、その上で歌われている歌詞が物悲しいのが味わい深い。

朝になったら悲しむなんて 何べんだって繰り返せる
感情のない 体温のない 人形に変わるまで
カーテンなんか関係なく 太陽が差し込んで
それを見て体内時計 再起動させるだけだもの

 すぐにアルバムを買った。『Gjallarhorn』と『Phantomime』。「Gjallarhorn」はラグナロクの到来を告げる角笛を意味するらしく、そこも中二病の僕の心をくすぐった。2枚のミニアルバムとも、激しい演奏ながら詩世界は物悲しくて叙情的で、とてつもないロマンを感じさせてくれた。一番好きだったのは「interceptor」のこの歌詞。

砂漠に吹いてる雨はみんな 日々を忘れるためにあるんだ
だからそこで暮らす人たちに 涙を拭う必要はないって
車道に吹いてる風はみんな チリを集めるために流れる
どこに運ばれていくとしても この場所とあまり変わりないかも

 切ない。だけどどこか他人事。激情をそのまま絵に描いたような演奏とは対照的に、歌詞はまるで一人称小説の主人公みたいに冷静だ。そこがたまらなく好きだった。

 この2枚のアルバムを繰り返し聴いているうちに、9mm Parabellum Bulletのメジャーデビューが発表される。デビュー作となるのは『The World e.p.』。「The World」、「Heat-Island」の新曲2曲、そして過去曲の再録5曲によるミニアルバムだった。表題曲の「The World」はどんな曲になるだろうと、僕はずっとワクワクしていた。そして解禁された。

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 強い。切ないメロディに寄り添うような演奏、激しいだけでなく情熱的なギター。特に間奏は、今まで溜め込んだものが張り裂けるような、強い感情の表現に思えて、自然と涙がにじむ。

「世界はずっと続くらしい」と 慌てた人たちの 虚しいから騒ぎのなか

 中二病ど真ん中なことは間違い無いんだけど、カッコよくて、切なくて、ロマンチックで、とにかく最高だった。こんな曲を作る9mm Parabellum Bulletは最高のバンドだと思ったし、もう数年で天下とってしまうんじゃないかとさえ思えた。

 続くメジャー1stアルバム、『Termination』も最高の作品だった。終点。

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 錆びついた金属を思わせるインダストリアルな演奏が、歌詞の退廃的な世界観を後押しする。でも退廃的でありながら、どこかロマンチックで美しい。メタリックで激しい間奏を抜けた先は、空虚で儚く美しいメロディ。凄い曲だった。この曲は未だによく聴く。

 他にも、「Discommunication」「Sundome」「Psychopolis」と自分にとってどストライクな曲が集まったアルバムだった。凄い。ただ一方で、「Heart-Shaped Gear」「砂の惑星」など、ちょっとコテコテの歌謡曲チックな曲もあって、ちょっとそれは苦手だった。ただ、大して気にはしていなかった。

 そして、その1年後の2ndアルバム『VAMPIRE』。

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 「Living Dying Message」「Vampiregirl」を始めとして、歌謡メタルを主軸としたアルバムとなっている。ここに挙げた2曲は、歌謡曲のメロディのキャッチーさを上手く取り入れることに成功していて最高の曲になっているが、「Supernova」「悪いクスリ」のように、それが悪い方向に出ているとしか思えない曲もある。何よりも、1stまでの歌詞にあった「切なさ」「ロマンチックさ」のような要素が欠片も無くなってしまった。歌詞に登場する主人公は明らかに強くなり、マッチョになり、以前のような感傷的な心象風景を見せてくれなくなった。

 9mmは確実に進化している。ただし、僕の思いとは少し逸れた方向に。当時、僕はかなりこのバンドに入れ込んでいたので、とても歯がゆい思いをしていた。もっと初期のような、弱さや儚さを見せて欲しい。次の3rdアルバムではそうした要素を見せてくれるだろうか...

 そんな僕の思いは完膚なきまでに打ち砕かれた。

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 Black Market Blues。2ndアルバム後初のシングル曲。

 ファンの人には本当に申し訳ないんだけど、未だにクソしょーもない曲だと思ってる。「もしかしたらスルメ曲かもしれない、10回聴けば良くなるかもしれない」と思って繰り返し聴いてみたけど、ダメだった。歌詞がダサい、メロディがダサい、ギターリフがダサい、何もかもがダサい。愕然とした。

 さらに僕を絶望させたのは、「これを夏フェス前にリリースしたこと(つまり各地の夏フェスで演奏することを前提としていること)」「この曲でMステに出演したこと」。つまり事務所としては9mmをこの曲の方向性で売り出して行きたいということだった。

 当時9mmが好きという人の中でも、この曲を受け付けないという人は少数派だったようで、ファンの中では絶賛だったし、フェスやライブで演奏されているシーンを見ても会場は大盛り上がりだった。僕はそれを冷めた目で見ていた。エンタの神様で、画面の向こう側で小梅太夫が会場の爆笑をかっさらっていくのを真顔で見るのと同じように。僕と9mm Parabellum Bulletはこの時点で決裂した。

 義務感として3rdアルバム『Revolutionary』を買った。40秒ちょっとの一曲目「Lovecall from the world」と、それに続く2曲目の「Cold Edge」のイントロ部分がこのアルバムのクライマックスだと思っている。残りの部分には何の感情も湧かなかった。悲しくなった。

 でも完全に9mmから離れたわけではなかった。「VAMPIRE」までの曲は程度の差こそあれ好きだったし、以前ほどの興味は失ったにせよ定期的に情報はチェックしていた。アルバム後のシングル「新しい光」、マッチョなメタルだったのでスルーした。4thアルバム「Movement」。

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 正直全く期待していなかったんだけど、収録されている「Scenes」がすごく良かった。9mmらしくない、明るい曲調に優しい歌詞なんだけど、でもマッチョで強い9mmよりも、こうしたちょっとナヨナヨした9mmの方が好きだった。

 この「Movement」というアルバムは全体的にさっぱりとしたアレンジがされていて、従来からの9mmのファンからしたらかなり不評のアルバムらしいのだけど、僕からしたら彼らが傑作として挙げている「Revolutionary」よりも遥かにこちらの方が好きだ。「銀世界」「カモメ」はいずれも儚くロマンチックな曲で、僕が9mmに求めていたものだった。ただ、アルバム全体としてはそこまで好きではない。

 5thアルバム「Dawning」。

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 「黒い森の旅人」、凄い曲だった。メタルな演奏に乗せて歌われているのは、旅人と黒い森の住人との友情。激しくて、ファンタジックで、とてもロマンチックだった。こういう曲、こういう曲を書いて欲しかったんだよ僕は!!

 ただ悲しいかな、この曲以外はどれもマッチョで力強い曲ばかりだった。なんで...

 この辺りの数年間、僕にとって9mmは「たまにいい曲を出してくれる」バンドになっていた。ほとんどの曲は、なんか違うという感情になるけど、たまにいい曲を出してくれるから目を離せない。1stの頃にこのバンドに抱いていた期待感はとっくに消え失せていたが、それでもたまのいい曲のために、ずっと追いかけていかなきゃいけない。ちょっと厄介な存在になっていた。

 「Dawning」発売からはライブ活動や事務所独立などもあり、目立った音源発表は無かった。2年ぐらい経っただろうか。僕は学生から社会人になり、音楽に対する興味もだんだん薄れていった。そういえば、とふと思い出して、Youtubeの検索窓に9mm Parabellum Bulletと打ち込んだ。最近何か音源出してるんだろうか。

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 「反逆のマーチ」。

 クッソダサかった。僕にとっては「Black Market Blues」の再来だった。ファンの反応がいいのも同じだった。

 僕はそっとタブを閉じた。それから2年間、彼らのことを思い出しもしなかった。

 今年に入って2年ぶりに思い出した。ふと思い出したのて調べてみると、僕が離れている間にアルバムを2枚出していたらしい。ギターの滝がジストニアによりライブ活動を休止しているらしい。全く知らなかった。この頃邦楽の情報サイトとかも全く見てなかったから。

 そして今日、TSUTAYAアイドルマスターのCDを借りるついでに、昨年に発売されていた9mmの最新アルバム「BABEL」を借りた。10枚借りたら割引になるので、数合わせのために。

 CDを全て取り込み終わった。お目あてのアイマスの曲も一通り聴き終わったので、ついでに「BABEL」もかけてみる。かけた瞬間、衝撃が走った。

 稲光を思わせるようなタッピングギターの音色、その直後のブラストビートの轟音。そして、

君のまばたきが終わる前に
長いお別れをすませておくんだ

旅に出かけよう 少しの荷物で
戻らない部屋の鍵はかけないで

打ち捨てられた夢を拾い上げたら

僕のいる意味がこの世界に見つからないとしたら
意味のない歌で ララルララルラ 壊してやるのさ

 たゆたうようなメロディで歌われる別れの言葉。どうしようもない運命によって告げなければならない決別の言葉を、どうしようもないほど切ないメロディで歌い上げる。

 9mm Parabellum Bulletに、僕が11年間求め続けていたものが、ここにはあった。

 「BABEL」、徹頭徹尾メタルでダークなサウンドながら、歌詞もメロディも、これまでの作品の中で最もナイーブだった。無価値に煌びやかに輝く街の中で君を想う「ガラスの街のアリス」、アコースティックギターを取り入れた「眠り姫」をはじめ、どれもこれも、切なくて、儚くて、ロマンチックだった。

 どうしてこのバンドは、こうして僕を弄んでくるんだろう。いや、彼らは別に僕のことなんて眼中にないと思うんだけど、最初に僕の趣味趣向にガッツリ会う音源をリリースして、徐々に離れていって、全然解釈の違う曲を出して、たまにいい曲を出して、また解釈の違う曲を出して、そして11年の時を超えてまた僕の心のど真ん中に音源を投げ込んでくる。どこまでも翻弄されている。

 彼らは「BABEL」以降、まだ音源をリリースしていない。次はどんな曲を出してくるんだろう。また裏切られたら嫌だから、期待は絶対にしない。ただ言えるのは、また9mmが見逃せなくなってしまったということ。おそらくこのバンドが解散するまで僕は翻弄され続けるんだろう。