打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

アイマスライブのマナーについて本気出して考えてみた

 別に発言された方が炎上目的だと言うつもりは毛頭ないのだが、ライブマナーに関する話は定期的に話題に上がる超絶人気コンテンツなのは間違いない。何故人気になるのかというと、この手の話は不毛で終わりのないものだから。不毛な話は人をイライラさせる。イライラさせる話題は人を強く惹きつける。世に蔓延る炎上コンテンツと全く同じ構造になっている。

 特にアイマスライブのマナーの話題では様々な話題が切り分けもされずごちゃ混ぜになって語られており、警察側は極悪厄介藁人形に向けて石を投げ、厄介側は究極警察藁人形に釘を刺す、藁人形論法の見本市と化している状態。まさに地獄の門みたいに煌々と赤く絶え間なく燃え続けているのだ。上手くいけばこの話題でPV稼いでメイクマネー出来る可能性がある一方、健全な一般人はこんな地獄とは距離をとって日々を過ごすのが身のためだ。イライラしまくって坂上忍状態になるだけでマジで何の特にもならんぞ。

 ただ、一方でライブに参加する人には一度、ライブマナーについて真剣に考えて欲しいなぁという気持ちもある。というのも、ライブは性善説で成り立っているから。性悪説でライブを運営しようとしても、とても現実的ではない。そして、ライブで性善説が成り立つのは、観客の間でマナーが共有され、それが育まれているからだ。

 このマナーが共有されなくなったり無視されたりしてしまうと、新規の客が入って来づらくなったり、無茶苦茶なライブになって楽しめなくなったり、レギュレーションがガチガチになったり、最悪ライブが成立しなくなってしまう。「レギュレーションに書いてないなら何をやってもいいでしょ」というものでもない。それが成り立つのは他の大多数の人がちゃんとライブマナーを守っているからで、全員がレギュレーションのギリギリを攻めようとする状態になるとたちまちそのライブは崩壊する。だから、みんながマナーを守る事が大事なのだ。

 だからと言って、マナーを聖典のように振りかざして他の観客を粛清して回るのも良くない。マナーは他の人を攻撃する材料なのではなく、一緒にライブの場を良くしていこうと働きかける材料であるべき。また、自分がこうだと思うマナーを他人に押し付けるのも良くない。多くの人の合意が得られそうな内容を「ライブマナー」として扱うべきで、そしてその内容は、特定の人間ではなくライブ参加者全員で考えるべきだ。

 ちょっくらここは、ロックバンドのライブ歴13年かつアイマスライブ歴2年のジジィこと僕が、アイマスのライブマナーについて考えていく。多くの事は別にアイマスのライブに限った話ではなくなってしまったが、あなたがライブマナーについて考える材料の一つにしていただければ幸いである。ここではいくつかに切り分けて書いていく。

  • 演者と演目、観客に対するリスペクトの話
  • 指定席でのライブマナーについての話
  • UOサイリウムの色の話
  • 番外編: 「アイマスにはライブマナー警察が増えてきた!」という話題

演者と演目、観客に対するリスペクトの話

 ライブは観客も参加者であり、参加者はライブを成功に導く義務がある。というのも、観客の質によってライブの出来栄えは良くもなるし悪くもなる、とりわけ悪くする方向にはとても簡単に、徹底的に破壊し尽くせるからだ。

 自分が参加したライブではないが、ネットで見聞きして印象に残っているのがBEAT CRUSADERSというバンドが2007年に大阪でやったライブの話。こちらのライブレポとかを見てもらえばわかるが、典型的な「観客に破壊されたライブ」になっている。観客が、演者や曲にリスペクトを払わなければ、ライブは簡単に崩壊してしまう。

 だからこそ、ライブでは観客の一人一人のがリスペクトの心を持ち、演者がステージ上で表現しようとしているものを、出来る範囲で尊重しなければならない。これはライブマナーを考える上での大前提だと思っていて、全員がこの事を真っ先に考えるべきだと思う。「チケット代払ってるんだからいいだろ」「レギュレーション違反じゃなけりゃ何やってもいいじゃん」という以前の話。憲法を改正してこの条文を書き加えて欲しいというレベル。

 たまに「バラードで奇声を発したり家虎する人」の存在が話題になるが、その人はこのリスペクトが欠けているという話になる。それは、演者の表現をいとも簡単に破壊してしまう行為であり、避けるべきだ。「じゃあどれくらいアップテンポな曲なら声出してもいいの?」という意見については、「演者の意図を汲め」としか言えないし、それがわからないのであればライブに来るべきでは無いと思う。みんなで作り上げる場なので。

 また、「興味ない曲で座ってスマホいじったり隣の人と私語をする人」も同様。演者に対して普通に失礼だし、その曲を楽しんでいる、一緒にライブを作り上げている周囲の人たちに対するリスペクトもない。

 一方で、ここでいわゆる「地蔵」を咎めるつもりはない。大事なのは演者のパフォーマンスを壊さないようにする事、演者にリスペクトを送ることで、それを満たしている範囲であればどんな楽しみ方でも自由だと思う。

指定席でのライブマナーについての話

 オールスタンディングのライブであれば、基本的には自由でいいと思う。飛び跳ねるもよし体を反らすのもよしダイブするもよしグルグルもよしモッシュするもよし俺によしお前によし。ただし法に触れずライブを壊さない範囲に限る。

 それが成り立つのは、オールスタンディングが自由に移動できる場からだ。自分に合った場所でライブを楽しむのがオールスタンディングであり、モッシュしたければ前に行き、じっくり見たいのであれば後ろに行けばいい。目障りな人間がいれば移動すればいい。極論、不慣れなのに前方に行ってモッシュに巻き込まれて骨折してもそれは自己責任。それは、あなたがわざわざその危険な場所を選んだからだ。

 指定席のライブは決定的に違う。席は抽選で決定され、ライブ中はそこを動く事ができない。自分の視界の前方にUOグルグルしたりして視界を妨げる人間がいると、その環境から逃れる術が無い。このような環境では、自由な行動をとってもいいという正当性が無くなる。「嫌なら他に行けばいいんじゃ無いですか?」とは言えないからだ。望む望まざるに関わらず抽選で席が決定されてしまう指定席ライブでは、鑑賞する際には周囲(特に後方)には配慮をするべき。オールスタンディングライブでやっていたノリは、そのまま指定席ライブに持ち込む事はできないのだ。

 一方で、この事は後方の席の人が前方の人を攻撃する材料ではない。例えば「背が高いから屈め」と言ってはいけない。それはあなたの背が低いからであり、不運にもあなたの前の席となってしまった人に、屈んでライブを見ろと言える正当性はない。「肩より上に腕を上げないでもらえますか?」とも、おそらく言えないだろう。それによって視界が大きく塞がれるわけではない以上、その人のライブの楽しみ方を制限する理由は多分無い。

 結局、制御不能な要素が多い指定席でのライブでは、必ずしも快適な鑑賞体験を保証されることはない。大事なのは、お互いがお互いに配慮することだ。理不尽なことでなければ、多少のことには目を瞑る寛容な心もまた、ライブを楽しむためには重要だと思う。

UOサイリウムの色の話

 一番言われるのがUO(ウルトラオレンジ)。UOUOの折るべきタイミングで折るべきであり、それ以外のタイミングで折るべきではない。盛り上がる曲でも「蒼い」曲では折るべきではない、という主張。

 上記のようなライブマナーと同じ文脈で語られる事が多いけど、この話はマナーの話ではない。マナーとは「日常的に生きていけば身につくもの」、あるいは「少し考えればわかること」に限定するべきで、UOの件はそこに入れ込むのはハイコンテクスト過ぎる。

 僕のアイマスライブ初参戦は2017年のハッチポッチフェスティバルDay2なのだけれど、そこで演奏された「アライブファクター」でUOを折った(そして連番者の友人に注意された)。「蒼い曲は会場が蒼に染まるから美しい」というのは、2,3回参加してやっと「あぁ、そういうことなんだな」と分かる。でも当時の自分は、何故そこで折ったらダメなのか分からなかった。周りにも折ってる人いたし、他の曲でも盛り上がったタイミングでみんな折ってたし。

 「この曲なら折ってもいい、折ったらダメ」というのは、新規に入ってきた人にとってはとても分からない。そういうものをライブマナーの範疇に入れるべきではない。そんな風に肥大化したマナーは他の人を攻撃する材料にしかならず、本来の目的を逸脱してしまう。

 これは他のサイリウム芸も同様。先日のシンデレラ7th幕張公演で「小さな恋の密室事件」でみんなサイリウムの色替えをしてなかった、と嘆くツイートを見かけた。気持ちはわかるのだが、これも同様にライブマナーの話ではない。ライブの質をよりよく高めるための「努力目標」だと考えるべきだと思う。

番外編: 「アイマスには警察が増えてきた」という話題

 当たり前の話で、アイマスはアニソンコンテンツの中でも動員人数が多く、公演回数も多い。当然、観客間のトラブルもそれに比例して発生するし、他人のマナーに対して敏感な観客も多く参加する。ライブ後にお気持ち表明ツイートが多く観測されるのは別に自然な事だ。

 もう一つ、アイマスは10年以上の長く続いてきたコンテンツで、様々なタイミングで様々なバックグラウンドを持つ人が流入してきた多様性に満ちたものとなり、アメリカ風に言うならば「オタクのサラダボウル」状態にある。当然、世界情勢を見ればわかる通り、多様性はメリットだけでなく、様々な軋轢をも生じさせる。ライブマナーの件もその一つだろう。

 解決方法は2つ。1つはトランプばりに強権的な権力者(ライブ運営)にガチガチに全てのルールを決めてもらい、それにそぐわない人間を排除させる方法。もう一つは、このコンテンツの住人の間でお互いを理解するよう努力し、みんなで手を取り合ってライブをより良い方向へ進めていく方法。前者がいいと言う人は、多分そんなにいない。そんなライブは楽しくないから。だから、みんながライブマナーについて考えることが大事なのだ。