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競馬賭博 第64回有馬記念 回顧編

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レース展開

 先行馬のキセキがかなり出遅れてしまったものの、アエロリットが前半1000m58.5という超ハイペースで飛ばす。アエロリットは単騎逃げの形になっていたが実質先頭の2番手の位置で見ても59秒半ばぐらい。これは有馬記念としてはかなりのハイペース。先行各馬にとってはかなりシビアな展開になったはずで、事実、8番手までの先行グループはアーモンドアイ含めて壊滅している。

 第2コーナーでようやくペースが少し緩む。残り1000mを切ったところでアエロリットが再びスパートをかけるが、余力がなくなり徐々に下がってくる。残り600〜400mの地点で、1秒以上あったアエロリットのリードが無くなる。ここで2番手以降の実質ペースは12秒前後になっているはず。そこからは12.2、12.0。実質的なスパート地点は3コーナー付近、残り800〜700m地点だったと思う。ハイペースでも削がれないスタミナがまず第一に求められたレースだったと思う。

 勝ちタイムは2:30.5。これより早いレースは2009年のドリームジャーニーが勝ったレースに遡る。

各馬回顧

1着: リスグラシュー

 バケモノ。現役最強だと信じていたけどまさかこれ程とは。スピードのアーモンドアイ、ポテンシャルのリスグラシューと言うぐらい、ジャンルは違うけど肩を並べるぐらい歴史的名馬だった。

 これだけの厳しいレースになれば、ラストの200mはペースが落ちるはず。それを12.0でまとめられてしまうって。。 残り200mの地点ではサートゥルナーリアに並びかけていた。それを200mだけで0.8秒も差を広げていた。つまり、サートゥルナーリア以降のレースラップはラスト12.8にまで落ち込んでいるのに、リスグラシューだけ12.0で突き抜けていってしまった。怪物としか言いようがない。

 どんなハイペースでも削がれないポテンシャル、そして一旦解き放つとどこまでも突き抜けていってしまいそうな末脚。同父のジャスタウェイを彷彿とさせる強さで、来年ドバイシーマクラシックに行ったらとんでもない圧勝劇になるはず。でももう引退なんだよなぁ...

 そして鞍上のダミアン・レーンの好騎乗も忘れてはいけない。ハイペースを読んでか中段に下げ、道中はインでじっと待機。4コーナーで各馬が捲ってくるところでも我慢していて、これは大丈夫か? と思ったところで直線でスッと外に出して進路を確保。全く無駄のない騎乗がリスグラシューのポテンシャルの全てを爆発させた。まさに天才の所業。人馬の能力が噛み合って、有馬記念でも屈指のパフォーマンスに繋がった。凄かったで。そしておめでとうリスグラシュー

2着: サートゥルナーリア

 こちらも想像以上に強かった。3コーナーでは後方4番手にいたのだけど、そこから大外を回って一気に捲り上げていき、直線では先頭に並びかける。そこから一瞬出し抜いてこのまま勝利か? となったところでリスグラシューに飲み込まれてしまった。

 捲っている時には相当のペースで走っているはず。それで直線スパートをかける足があるんだから流石。トップスピードに乗ってしまうとすぐバテてしまうけど、ハイペースでも難なく対応できてしまう馬なのかもしれない。東京競馬場だと仕掛けどころが早くなってしまうから、直線の短い中山の方がサートゥルナーリアに合っているのもあるかも。

 返し馬ではスミヨンが輪乗りのところから離れたところでサートゥルナーリアを落ち着かせてたけど、そこは流石エピファネイアに乗ってたジョッキーだなぁと感じた。優等生に見えるサートゥルナーリアも、いつか狂気の血が爆発してしまうのだろうか...

3着: ワールドプレミア

 ダイワスカーレットが勝った年のアドマイヤモナークみたいな騎乗。菊花賞の再現を狙うなら中段に入り込んで直線抜け出してなんとか粘り切る、というレースになるはずなんだけど、この有馬記念では直線まで最後方。これによって前半のハイペースには乗らず、そしてコーナーでの捲りもしないので距離ロスも無い。前がバテたところを捉えるだけの余力を残すことができた。

 ただ、この3着をどれだけ評価するかは難しいところ。今回はハイペースで流れたから僅差の3着に入り込めたけど、スローでこれ以上に脚を高めることはできるのかは微妙。例えば、良馬場でのロングスパート合戦になりやすい天皇賞(春)なんかはかなり怪しいんじゃ無いかと思う。現時点ではあんまり明確な武器が無い印象で、展開待ちの面が強いんじゃ無いかなぁ。

4着: フィエールマン

 凱旋門賞帰りで心配してたけど、ちゃんと走れる状態にはなっていてひとまずは良かった。

 フィエールマンは3コーナーで捲り上がっていった馬の一頭なんだけど、当然、この競馬ではロスが大きくなる。この辺りでスタミナが削がれてしまい、サートゥルナーリアを捉えることができずワールドプレミアに差されてしまった要因なんだと思う。要は横のポジションの差。リスグラシューみたいにインで我慢してたら2着は合ったと思うんだけど、これは正攻法で勝ちに行く事を池添騎手が判断したのかな。ワールドプレミアよりは普通に強かった。

5着: キセキ

 まさかの出遅れでビックリした。そのまま後方からレースを進める形に。ハイペースなのでポジションのリカバリーも出来ず、そのまま3コーナーから大外捲りを敢行せざるを得ない羽目に。ただ、ロスの大きい大味な競馬だったのに5着にまで来てしまうのがこの馬の強さなんだよなぁ。出遅れさえなければ良いところまで行けたはず。衰えなんてないし、来年のレースもこの馬が中心になっていくと思う。

9着: アーモンドアイ

 危惧していた通りになった。横のポジションは一頭分外になっていたものの許容範囲。これで直線余力が無くなってしまったのはスタミナ不足、しかない。インで我慢してたらもう少しマシだったかもしれないけど、ルメール騎手としてもアーモンドアイが最強だと信じての騎乗だったと思うし、これは責められない。

 まぁアーモンドアイも、僕たちと同じ生き物だと分かって少しホッとしたというか。日本競馬史上最強のスピード、それに超一流のスタミナを兼ね備えていたなら、それはサラブレッドではなくサイボーグですよ。生き物である以上、飛び抜けた長所があるなら、どこかに短所があるはず。自分のそんな直感が当たった。

 戦前から言われていたスタミナへの不安が露呈してしまった形になるけど、でもこの果敢な挑戦にはみんなリスペクトを送るべきだと思う。GIを6勝もしていて、さらに未踏の領域へ挑んでいくのはとても勇気のある事。結果は出なかったけど、これで評価を下げる必要は全くないし、良馬場でスピードを生かす競馬になったら勝てる馬は世界のどこにもいないと思う。看板を汚すことを躊躇わず、来年も様々なチャレンジをして僕たち競馬ファンを沸かせてほしい。