打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

「皇室報道局」の正体と皇室フェイクニュースビジネスの闇

皇室フェイクニュースの謎

 Twitterのトレンドにこんなのが上がっていた。

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 元記事はこちら。

imperialism.news

 小室さん関係の報道久々に見たなぁと思いつつ、それよりも常軌を逸した記事の内容と、それを鵜呑みにして小室佳代氏を叩きまくるツイートがトレンドに乗っているのにかなり嫌な気持ちになった。

 前にも同じようなことがあった。半年前、Twitterで大いにバズりまくったこの記事。   kikunomon.news

 タイトルだけ見ると死ぬほど面白いんだけど、記事の内容は現実性が無さすぎるし、実名が悠仁さま以外出てこず信憑性もない。何よりこのソースの「菊ノ紋ニュース」なるメディア、信じられないことに皇室専門のニュースサイトであり、皇室関係のニュースが毎日数記事配信されるという女性自身も真っ青の超ハイペースで皇室ニュースを量産していた。常識的に考えれば明らかなフェイクニュースサイトだ。クソ狭い皇室の世界でこんなおもしろニュースが毎日生産されるなんてことは絶対有り得ないからだ。

 さらに「菊ノ紋ニュース」周りには面白いことがある。「菊ノ紋ニュース」のこのページには運営者情報が書かれているのだが、分かっている限り、このサイトを運営している「メディアイノベーション合同会社」は以下のサイトも同時に運営している。これを以下では「MI社グループ」と呼ぶことにする。

koshitsu.today

kourozen.com

sekai-nippon.net

koshitsu-nanameyomi.com

tateyomi.info

 絶対おかしいだろ!!!!!!!!!!!

 どれもこれも皇室専門ニュースサイト。「菊ノ紋ニュース」の存在だけでも怪しいのに6倍だぞ6倍。

 これらのサイトは「菊ノ紋ニュース」以外は現在いずれも更新停止しているようだが、一時期はこれらのサイトを同時に運営し、全皇室ジャーナリストが束になっても敵わない量の記事を毎日量産していたのだ。当たり前だがその中身はまぁ酷い。スキャンダラスなタイトルが付けられているが、内容は全て憶測と匿名記者からの伝聞で構成されている。水を水で薄めた飲み物にキャッチーなラベルを貼り付けて売り付けるようなもの。買う方もどうかしてるのだが...

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 ちなみに「菊ノ紋ニュース」だが、現在に至ってはニュースにすらなっていない。毎日配信される記事はどれも本文は一切書かれておらず、出所不明のスキャンダルに対し「口コミ」「国民の声」と称して皇族への罵詈雑言が書き並べ立てられている、信じられないぐらいガチでホラーなサイトに生まれ変わっている。そしてそれに読者からの追加の罵詈雑言コメントが多数ついている。この世の終わりか。

「皇室報道局」という新手

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 さて、冒頭の記事に戻る。こちらのソース「皇室報道局」もまた皇室専門ニュースサイトであり、皇室関係のニュースを1日数本お届けする怪しすぎるメディアだ。お問い合わせページには謎の運営者と適当な住所、実在するのかもわからない編集長の名前が記載されている。仕方がないので「皇室報道局」でググる

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 皇室フェイクニュース仲間として「菊ノ紋ニュース」は分かるが、「皇室問題研究室」とは?

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 デザイン同じやんけ!!!!!!!!!!!!!

 という訳で、「メディアイノベーション合同会社」の他にも、皇室関係のサイトを複数運営してフェイクニュースを垂れ流している組織を発見してしまった。皇室フェイクニュース業界というアンダーグラウンドビジネス、まさか競合他社がいるとは...

 しかし以下の通り、このグループではメディアを複数持っていることを公言している。

imperatoria.net

 散らばっている情報をまとめると、皇室の今後を憂いていた元宮内庁職員・小内誠一氏が、2019年11月に「皇室是々非々自録」というサイトを公開したのが始まり。そのサイトが徐々に更新停止となり、その間の2020年2月に「皇室「是々非々」実録」が公開。そして5月にはこのお知らせの通り「皇室問題研究室」を公開し移転(しかし「実録」の更新も続いている)、さらに6月27日は「身の安全とリスク分散のため」として「皇室報道局」を新たに公開。小内誠一氏は、昨年11月から半年の間に、ほぼ同内容のニュースメディアを4つ立ち上げている。これらのサイトを「小内グループ」と呼ぶことにする。

 当然、小内グループのサイトも全てフェイクニュースサイトだ。記事の内容は同じく他週刊誌の要約や匿名記者からの又聞きでほとんどが占められているし、そもそも皇室関係の記事を複数メディアで毎日配信するということが、誠実なジャーナリズムを前提にしていればあり得ない。「皇室の今後を憂いて」サイトまで立ち上げた人間が、そんな適当な仕事をするだろうか? サイトにはもっともらしいことが書かれているが、信憑性ゼロのフェイクニュースサイトなので絶対に鵜呑みにしないように気をつけてほしいし、Twitter脊髄反射で誹謗中傷を書き込んでいた人は反省するか再発防止のため脊髄を抜くかしてほしい。

 ...というところで終わってもいいのだけれども。

点と線

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 「菊ノ紋ニュース」と見比べてみると、なんとなく、なんとなく「皇室報道局」のサイトと似てるように見えない?

 いや、見た目は当然大きく違うんだけど、デザインのダサさは共通している。およそ皇室メディアとしての風格がカケラも感じられない、個人ブログかと勘違いしてしまいそうなほど簡素で質素で貧相なデザイン。実際、MI社グループと小内グループのサイトは全てWordPressを利用して構築されている。両者共に、似たようなセンスの人がサイトのデザインを行ったんだろうなというのが分かる。

 ...果たして「似たような人」なのだろうか?

 whois情報を見てもロクな情報が得られなかったので困っていたのだが、見比べてみるとMI社グループと小内グループのサイトでは似たような画像が使われていることが分かる。どちらもモラルの低さはどっこいどっこいなので、ネットから適当に引っ張ってきた画像なのかもしれない。では以下はどうか。

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 これは小内グループの「皇室問題研究室」のこの記事より。「皇室の今後を憂いて」いる割にはテレビのスクショを平気で貼り付けるモラルの低さに頭を抱えるのだが、注目してほしいのは画面左側のコンソールに表示されているファイル名。スクリーンショット-9.jpg」という投げやりな名前が付けられているのだが、

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 全く同じファイル名・全く同じ内容の画像がMIグループの「菊ノ紋ニュース」のこの記事に掲載されている。これはどういう事だろうか? Google画像検索をしてみたが、この画像に「スクリーンショット-9.jpg」という名前がつけられているのはMI社グループ・小内グループのサイトのみだ。

 また、「皇室問題研究室」や「皇室報道局」は同じく「スクリーンショット-xxx.jpg(png)」というファイル名を掲載している記事が複数存在する。

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 例えばこの記事は先ほどの記事の10日前に作成されたものだが、ファイル名が「スクリーンショット-415.jpg」であり明らかに不自然だ。これはただの連番であり、過去に公開されているブログの素材であるなら、普通に考えてこの数字は9より小さい番号が与えられるはずだ。

 さらに、小内グループの記事の中で、「スクリーンショット-xxx.jpg(png)」の最小の連番は、「9」を除けば「皇室問題研究所」5月25日付のこの記事に登場する373。MI社グループの中で登場する最大の連番は「令和新聞」5月6日付のこの記事に登場する359小内グループとMI社グループでは似たようなファイルの採番方法を採用しながら、その番号帯は全く重なっていない。それどころか、小内グループはMI社グループの番号体系を引き継いでいるように見える。

 おかしな事は他にもある。「皇室報道局」が公開されたのは6月27日。前述のように「菊ノ紋ニュース」はニュース本文の代わりに罵詈雑言が記載されるようになったが、このような記事が初めて登場するのは6月26日公開分、6月28日公開分からは全てこの形式の記事となっている。

 上記のことより、以下の可能性が非常に高い。

  • メディアイノベーション合同会社」と「小内誠一氏のグループ」は実質同一の組織である
  • メディアイノベーション合同会社」は皇室関係のブログを多数立ち上げた。「小内誠一」なるペルソナを擁立した「皇室是々非々自録」もその一つである
  • 「菊ノ紋ニュース」以外の新規サイトは軒並み伸び悩んだが、「小内誠一」のキャラクターは好評を博したため、この枝を発展させようと試みた
  • 資源を集中させるため、「菊ノ紋ニュース」以外の新規サイトは全て更新を停止した
  • 「菊ノ紋ニュース」には固定層が多数いるため、PVを確保するために罵詈雑言オンリーの省エネ更新スタイルに切り替えた
  • 現状、「菊ノ紋ニュース」を執筆していた人間は「皇室問題研究室」「皇室報道局」に移って創作活動を続けている

 ここまで長々と書いてきてアレなんだけど、それはそうって感じだ。

皇室フェイクニュースの闇

 皇室フェイクニュースビジネス、以下の点でとてもよく出来ている。

  • 皇族に対する名誉毀損の告訴は、総理大臣が代理で行う必要がある(刑法第232条より)ため、告訴リスクが低い
  • 政治ネタのように派閥が存在せず事実について争われる事が少ない
  • その他のニュースのように、一般人が真贋を確かめる方法がない
  • 皇室ニュースを好む層は比較的年齢層が高く、情報の真贋を確かめるスキルを持っていないことが多い
  • そもそも、皇室ニュースを好む層は情報の真贋などどうでも良く、井戸端会議のネタや日頃の鬱憤をぶつける事が出来れば何でもいいと考えている(偏見)

 正しくメディアイノベーション。玉石混交の石だけを詰め合わせたものを垂れ流してもメディアは金を稼げるということを教えてくれる。日々遅くまで仕事し日々ネットでぶっ叩かれてる新聞記者がもの凄い目で睨んでいるぞ。

 しかしこれがTwitterのトレンドに載るってどうなの。Twitterやってるって事はある程度のネットリテラシー持ってるんかと思ってたけど。

 ニュースを見る際にオススメなのがソースを確認すること。ニュース記事のサイト名を見たり、yahooニュースなどのニュースサイトの場合は記事の配信元を確認する。見たこともない聞いたこともないサイトであれば読まない信じない。そこに書かれているものは新聞記者の1/1000以下の取材力で書かれた日記または感想文または小説なので、読んでも意味がないし、その内容を信じるなんて事があれば末代までバカにされるぞ。誰もバカにしなくても俺がバカにしてやるから安心してほしい。

 それにしても、この記事を書くためにMI社の皇室フェイクニュースサイトを見回ったんだけど、とにかく酷くて気分が悪くなった。記事の内容もそうだけど、それに乗じて皇室に対する悪意を剥き出しにしてコメントを書き込む人がこんなにいるのかと。記事の内容を信じちゃうのと、それに乗じてあんな酷い言葉まで吐けるという二重苦。

 もうネットが登場して25年。一般の人までもがネットに手を触れて情報の洪水に揉まれるようになって20年ぐらいか。もうそろそろ、こんな下らない事は終わりにしなければならない。そうするためにはWeb技術に何ができるだろう、とエンジニアの端くれとしては思う。