打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

全自分が選んだMA4カバー曲

 1/13(月)をもって終了した、「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST」シリーズ第4弾カバー楽曲リクエスト。自分がリクエストした曲を書き残しておこうと思う。公開することで採用されないリスクはあると思うんだけど、こういう企画は考えている時が一番楽しいので。本当に楽しいので第5弾、あるいはミリオンライブでもやってほしい。

 ちなみにお酒を飲みながら書いているので、後半になるごとに文章が力尽きていく。

天海春香 - Funny Bunny / the pillows

www.youtube.com

 ミリシタの春香って「センター」や「リーダー」の概念が強くてあんまり人間性を感じられないな、と思うんだけど、アニマス見てるとやっぱりちゃんとした人間で、ちゃんとドジやったり落ち込んだりする。個人的には終盤、追い詰められていく春香の心情は自分にもよく理解できて、強く感情移入してしまった。

 「Funny Bunny」は応援歌なんだかなんだかよく分からない。難解な歌詞には、どこか傷だらけの主人公が高台から世界を見下ろして諦めたように笑うような、やるせなさがどことなく感じられる。それでも「君の夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ」なのだ。叶うかどうか知らないけど、その夢を追いかけるなら、僕は背中を押すよ。

 765プロの中で一番傷だらけの春香(千早も大概だが)。そんな彼女だから、「Funny Bunny」がもっともっと、聴く人の背中を押す応援歌になる。

如月千早 - 恋 / 星野源

www.youtube.com

 何かと冬の歌や悲劇的な恋の歌を歌いがちな千早だが、だからこそそこから脱却した、180度反対の南風のような歌を歌ってほしいとリクエスト。壮大で荘厳な歌を歌うだけが歌姫じゃないぞ、と。軽快に恋ダンスを踊る千早を見てみたい。

 

星井美希 - 眠いオブザイヤー受賞 / ヤバイTシャツ屋さん

 美希は既に「すいみん不足」をカバーしているわけなのだが、あえて「眠い系」の曲をリクエスト。

 ヤバイTシャツ屋さんなので歌詞はふざけてるし、この曲に至っては本当に半覚醒状態で書かれたとしか思えない歌詞が続くんだけど、それがまぁ美希に合う。徹頭徹尾睡眠万歳な歌詞が続き、真昼間から堂々と昼寝を謳歌している美希にはまさにピッタリ。また、

甘やかされたい 優しくされたい 褒められたい 全部許されたい
君の愛情にぎゅっと包まれて 好きなだけ眠りたい

 とか、結構美希の心情ドンピシャな歌詞な気がする。

 ボサノバチックでオシャレな曲なので、美希の甘い歌声にもきっと合うだろうなぁと思っている。曲はふざけているけど選曲はガチのマジ。

萩原雪歩 - シーグラス / ストレイテナー

www.youtube.com

 あえての夏の終わりの曲。夏の終わりの切なさを3分少々に切り取って大切な思い出として閉じ込めたような、まっすぐで繊細なギターロック。

 雪歩の綺麗な歌声と物凄く合うだろうなぁと思ってリクエスト。

高槻やよい - シャクシャイン / 水曜日のカンパネラ

www.youtube.com

厚岸 国縫 上雷 川汲 住初 登別
上湧別 旭神 歌内 下川 剣淵 和寒 厚床 長万部

 と、北海道の地名と名物だけで構成された歌詞の曲。当然歌詞で選んだ訳ではないが、この曲はとにかく聴くだけで、口ずさむだけで楽しくなるし、そこに絶妙に神秘的なアレンジとトラックが乗っかりなんとも言えない世界観を構築している。

 やよいは舌ったらずなところがありそこが可愛いのだが、その声のかわいさを引き立てるのはやはりラップ。舌ったらずな声でラップのリリックを放つのはスリリングであり何よりかわいい。それに加えてこの曲のナンセンスな世界観。それが逆に、音楽本来の楽しさとか、やよいの根源的な可愛さを引き立てるんじゃないかなぁ。

菊地真 - ESCAPE / MOON CHILD

www.youtube.com

 おれは真のプロデューサーではないのでどうしてもカッコいい曲を求めがちになってしまう。選曲はそういうこと。

 ただそのカッコよさの中でも、この曲は今までの真のカッコよさとはちょっと違う、新たな一面になるんじゃないかなぁと思って選曲した。ハードボイルドというかなんというか。男が惚れるカッコよさというやつか。

水瀬伊織 - 最終電車 / パスピエ

 流れるような綺麗なメロディーに乗せて、恋人との別れを前にしても素直になれない感情を歌う曲。電車に乗る背中に「乗り遅れちゃえばいいのに」と思う一方で、「私いまうまく笑えてるかな」と一生懸命取り繕おうとする。そしてCメロで「違うの 言葉がいま ここまで出かかってんのちょっと待ってて」。自分の感情を押し殺して必死に誤魔化した言葉。いいですよねこういう曲。大好物です。

 曲もオシャレ過ぎずそれでいてかわい過ぎず、歌詞もちょっとひねくれていたりして、まさしく伊織そのものと思ったので選曲。伊織もまた一筋縄では行かない魅力を持っていると思うんだけど、この曲はそういう複雑な面を見せつつも、ストレートに伊織の魅力を表現してくれると思う。

 

四条貴音 - 愛をからだに吹き込んで / Superfly

www.youtube.com

 バリバリのロックンロールですね。

 貴音は神秘的でたおやかなアイドルだと思うけど、同時に強烈に芯の通った強い女性という二面性を持っていると思う。挫けて膝をつきもう立てないと思った時、そんな女性に強烈に背中を押してほしいと思ってリクエスト。

 貴音は意外とドスの効いた歌声を持っているので、この曲を歌っても原曲に負けず凄まじいエネルギーを放ってくれるはず。貴音のロックンロールが聴きたいなぁ。

秋月律子 - 若者のすべて / フジファブリック

www.youtube.com

 迷った。結果、シーグラスに続いて夏の終わりの曲。

 いくつも年月を繰り返していくとちょっと俯瞰した視点で季節の移ろいを観察するようになって、ちょっと感傷的になってしまう。この曲はそんな客観性とセンチメンタリズムが同居した曲で、そういう二面性が律子に合うなぁと思って選曲した。

三浦あずさ - シンデレラ / 椿屋四重奏

www.youtube.com

 背徳的な恋愛の歌。アイマスにも「KisS」とか、あずさ自身も「嘆きのFRACTION」とかで歌っているんだけど、この曲はフラメンコの要素を取り入れて非常に滑らかで軽やか、それが返って恋の虚しさを強調している。ALLSTARSの中でも最年長のあずさには、一歩階段を登って、こういう奥深い曲の表現にも挑戦してもらいたいなぁと思ってリクエスト。

双海亜美 - Electric Surfin' Go Go / POLYSICS

www.youtube.com

 とにかく楽しさ重視。おもちゃ箱をひっくり返したかのようにシンセサイザーの音が跳ね回る。奇抜な展開と奇想天外な歌詞、だけど徹頭徹尾ポップで徹底的に楽しい。亜美がカバーするならこういう曲だなぁと。真美がエンターテイナーなら亜美は切り込み隊長というイメージがあるので、この曲を歌ってフロア爆沸させてほしい。

双海真美 - 留学生 / MONKEY MAJIK × 岡崎体育

www.youtube.com

 真美はエンターテイナーだと言ったのでエンターテイメント寄りの選曲。「英語に聞こえる日本語」で構成された岡崎体育の歌詞を、MONKEY MAJIKがオシャレにアレンジしている。

 亜美とは違ったアプローチ、面白いんだけど、直接ではなく変化球のアプローチで。

我那覇響 - ガラナ / スキマスイッチ

www.youtube.com

 爽やかな曲調ながら力強い歌声で、思い人に告白するために勇気を振り絞る曲。

 曲中全体を流れる南風のような空気が、まさに響そのものだと思ってリクエスト。ちなみにガラナは北海道でよく飲まれる飲料だそう。

 改めて聴いたら、しみじみいい曲だなぁ。

その他、リクエストしようと思ったけど断念した曲

競馬賭博 第64回有馬記念 回顧編

www.youtube.com

レース展開

 先行馬のキセキがかなり出遅れてしまったものの、アエロリットが前半1000m58.5という超ハイペースで飛ばす。アエロリットは単騎逃げの形になっていたが実質先頭の2番手の位置で見ても59秒半ばぐらい。これは有馬記念としてはかなりのハイペース。先行各馬にとってはかなりシビアな展開になったはずで、事実、8番手までの先行グループはアーモンドアイ含めて壊滅している。

 第2コーナーでようやくペースが少し緩む。残り1000mを切ったところでアエロリットが再びスパートをかけるが、余力がなくなり徐々に下がってくる。残り600〜400mの地点で、1秒以上あったアエロリットのリードが無くなる。ここで2番手以降の実質ペースは12秒前後になっているはず。そこからは12.2、12.0。実質的なスパート地点は3コーナー付近、残り800〜700m地点だったと思う。ハイペースでも削がれないスタミナがまず第一に求められたレースだったと思う。

 勝ちタイムは2:30.5。これより早いレースは2009年のドリームジャーニーが勝ったレースに遡る。

各馬回顧

1着: リスグラシュー

 バケモノ。現役最強だと信じていたけどまさかこれ程とは。スピードのアーモンドアイ、ポテンシャルのリスグラシューと言うぐらい、ジャンルは違うけど肩を並べるぐらい歴史的名馬だった。

 これだけの厳しいレースになれば、ラストの200mはペースが落ちるはず。それを12.0でまとめられてしまうって。。 残り200mの地点ではサートゥルナーリアに並びかけていた。それを200mだけで0.8秒も差を広げていた。つまり、サートゥルナーリア以降のレースラップはラスト12.8にまで落ち込んでいるのに、リスグラシューだけ12.0で突き抜けていってしまった。怪物としか言いようがない。

 どんなハイペースでも削がれないポテンシャル、そして一旦解き放つとどこまでも突き抜けていってしまいそうな末脚。同父のジャスタウェイを彷彿とさせる強さで、来年ドバイシーマクラシックに行ったらとんでもない圧勝劇になるはず。でももう引退なんだよなぁ...

 そして鞍上のダミアン・レーンの好騎乗も忘れてはいけない。ハイペースを読んでか中段に下げ、道中はインでじっと待機。4コーナーで各馬が捲ってくるところでも我慢していて、これは大丈夫か? と思ったところで直線でスッと外に出して進路を確保。全く無駄のない騎乗がリスグラシューのポテンシャルの全てを爆発させた。まさに天才の所業。人馬の能力が噛み合って、有馬記念でも屈指のパフォーマンスに繋がった。凄かったで。そしておめでとうリスグラシュー

2着: サートゥルナーリア

 こちらも想像以上に強かった。3コーナーでは後方4番手にいたのだけど、そこから大外を回って一気に捲り上げていき、直線では先頭に並びかける。そこから一瞬出し抜いてこのまま勝利か? となったところでリスグラシューに飲み込まれてしまった。

 捲っている時には相当のペースで走っているはず。それで直線スパートをかける足があるんだから流石。トップスピードに乗ってしまうとすぐバテてしまうけど、ハイペースでも難なく対応できてしまう馬なのかもしれない。東京競馬場だと仕掛けどころが早くなってしまうから、直線の短い中山の方がサートゥルナーリアに合っているのもあるかも。

 返し馬ではスミヨンが輪乗りのところから離れたところでサートゥルナーリアを落ち着かせてたけど、そこは流石エピファネイアに乗ってたジョッキーだなぁと感じた。優等生に見えるサートゥルナーリアも、いつか狂気の血が爆発してしまうのだろうか...

3着: ワールドプレミア

 ダイワスカーレットが勝った年のアドマイヤモナークみたいな騎乗。菊花賞の再現を狙うなら中段に入り込んで直線抜け出してなんとか粘り切る、というレースになるはずなんだけど、この有馬記念では直線まで最後方。これによって前半のハイペースには乗らず、そしてコーナーでの捲りもしないので距離ロスも無い。前がバテたところを捉えるだけの余力を残すことができた。

 ただ、この3着をどれだけ評価するかは難しいところ。今回はハイペースで流れたから僅差の3着に入り込めたけど、スローでこれ以上に脚を高めることはできるのかは微妙。例えば、良馬場でのロングスパート合戦になりやすい天皇賞(春)なんかはかなり怪しいんじゃ無いかと思う。現時点ではあんまり明確な武器が無い印象で、展開待ちの面が強いんじゃ無いかなぁ。

4着: フィエールマン

 凱旋門賞帰りで心配してたけど、ちゃんと走れる状態にはなっていてひとまずは良かった。

 フィエールマンは3コーナーで捲り上がっていった馬の一頭なんだけど、当然、この競馬ではロスが大きくなる。この辺りでスタミナが削がれてしまい、サートゥルナーリアを捉えることができずワールドプレミアに差されてしまった要因なんだと思う。要は横のポジションの差。リスグラシューみたいにインで我慢してたら2着は合ったと思うんだけど、これは正攻法で勝ちに行く事を池添騎手が判断したのかな。ワールドプレミアよりは普通に強かった。

5着: キセキ

 まさかの出遅れでビックリした。そのまま後方からレースを進める形に。ハイペースなのでポジションのリカバリーも出来ず、そのまま3コーナーから大外捲りを敢行せざるを得ない羽目に。ただ、ロスの大きい大味な競馬だったのに5着にまで来てしまうのがこの馬の強さなんだよなぁ。出遅れさえなければ良いところまで行けたはず。衰えなんてないし、来年のレースもこの馬が中心になっていくと思う。

9着: アーモンドアイ

 危惧していた通りになった。横のポジションは一頭分外になっていたものの許容範囲。これで直線余力が無くなってしまったのはスタミナ不足、しかない。インで我慢してたらもう少しマシだったかもしれないけど、ルメール騎手としてもアーモンドアイが最強だと信じての騎乗だったと思うし、これは責められない。

 まぁアーモンドアイも、僕たちと同じ生き物だと分かって少しホッとしたというか。日本競馬史上最強のスピード、それに超一流のスタミナを兼ね備えていたなら、それはサラブレッドではなくサイボーグですよ。生き物である以上、飛び抜けた長所があるなら、どこかに短所があるはず。自分のそんな直感が当たった。

 戦前から言われていたスタミナへの不安が露呈してしまった形になるけど、でもこの果敢な挑戦にはみんなリスペクトを送るべきだと思う。GIを6勝もしていて、さらに未踏の領域へ挑んでいくのはとても勇気のある事。結果は出なかったけど、これで評価を下げる必要は全くないし、良馬場でスピードを生かす競馬になったら勝てる馬は世界のどこにもいないと思う。看板を汚すことを躊躇わず、来年も様々なチャレンジをして僕たち競馬ファンを沸かせてほしい。

競馬賭博 第65回有馬記念編

www.youtube.com

 12月の寒空の下、彼女の柔らかな手を握って二人並んで談笑しながら歩くカップルがいる一方で、同じ空の下ではガザガサの馬券を握り潰しながらオッサン達が肩を並べて絶叫しながら競馬観戦をしているのである。今年も有馬記念の季節がやってきた。

 グランプリと言いながら今年活躍した馬が一切出てこない、まるで中日ドラゴンズ千葉ロッテマリーンズ日本シリーズやってるような状況でお馴染みだった有馬記念だが、今年は違う。GI馬は11頭。そのうち今年GIを勝った馬が7頭。GI勝利数は合わせて21勝。豪華というだけでは足りない、有馬記念65回の歴史上最もハイレベルなレースになってしまった。

 という訳で、久々に競馬予想してみたいと思う。ちなみに、馬券はここ3年当てていない。

展開予想

 先導したい馬はアエロリット・スティッフェリオ・キセキあたり。このうち、キセキは陣営のコメントや最近のレース振りから見ても、あまり積極果敢に逃げたりしたくなさそう。スティッフェリオは逃げたとしてもスローにコントロールしたいタイプ。アエロリットは距離不安があるためこちらもスローの逃げになる可能性大。たとえハイペースの逃げになっても誰もそこに着いて行かなくて単騎の大逃げになり、他の馬にとっては結局スローペースになりそう。結局、前半のペースは61秒〜62秒あたりのスローになると予想。

 仕掛けどころとしては2周目の向正面あたりか。リスグラシュー・フィエールマンあたりは無尽蔵のスタミナを生かしたいし、アーモンドアイもポジションを上げて行きたくなってくる頃。残り1000m地点でジワジワとペースが上がって、4コーナー出口地点が最速の二段階加速、という有馬記念にありがちな展開になりそう。

 馬場の傾向から見てもそこそこタイムがかかりそう。少なくとも東京競馬場のようなパンパンのスピード馬場ではない。タフな馬場で2500mを走りきるスタミナ、それを前提としてロングスパートへの対応、さらにはラストスパートの一足で出し抜く力という、あらゆる長距離能力が求められるレースになると予想する。

予想

リスグラシュー (2番人気: 7.7倍)

www.youtube.com

 現役最強だと信じている。

 宝塚記念はタイトなペースで流れながら、残り800m地点からのロングスパート勝負だったんだけど、そのペースを先行しながらあっさり突き抜けて3馬身差圧勝。2着のキセキはこの展開になったら相当しぶといはずだが、それを全く相手にしなかったのは衝撃的なパフォーマンスで、スタミナを要求されるレースなら間違いなく現役最強だと思う。

 オーストラリアのコックスプレートでも頭のおかしいパフォーマンスを見せている。4コーナーでは最後方で大外を回してたが、実はこのコーナーは5メートルの上り坂になっているそう。つまり大外を回して坂を駆け上りながら馬群を交わしきっての圧勝。パワーもスタミナも兼ね備えて、短い直線で勝負を決めてしまえるスピードも持っている。

 馬自身に不安は全く無い。全てを兼ね備えて弱点がない上に、宝塚記念で見せた圧倒的なスタミナ。年末のタフな馬場で、スローからのロングスパート戦になるのならばリスグラシューが間違いなく強い。鞍上のダミアン・レーンが中山初騎乗なのが少し不安だが... あれだけの天才ジョッキーだし、上手くやってくれることを期待したい。

 それにしても3歳の時には同期の牝馬にケチョンケチョンにされてきた馬が、最後の最後に有力馬として有馬記念に出走することになるとは... 昔からのファンという訳ではないけど、それでも3年間走り続けているのを見てきているし、思い入れが凄くある。勝てなくてもいいから、リスグラシューの強さの全てをラストランに魅せてほしい。

○フィエールマン (5番人気: 14.5倍)

www.youtube.com

 長距離適性を重視するならば、超長距離GIを2勝しているフィエールマンは外せない。

 このうち、菊花賞は残り400mしかレースしてないどうしようもないレースなので考えないとして、今年の天皇賞(春)が素晴らしい。1000m60秒を切る早いペースから極度の中弛み、そして3コーナーから楽な手応えで先頭に競りかけると、4コーナーからのグローリーヴェイズとの一騎打ちを制しての優勝だった。最初は超低レベルレースだと思ったけど、2着のグローリーヴェイズはこのレースと似たような展開になった香港ヴァーズを3馬身半差圧勝。それを物差しにすれば、フィエールマンの能力も相当高い。

 あとは状態面だけ。凱旋門賞は惨敗だったんだけど、心配なのはディープインパクト産駒は海外遠征から帰ってくると、別馬のように弱くなってしまう事があること。マカヒキにしろサトノダイヤモンドにしろ、遠征後に急激を能力を落としてしまい、全盛期の輝きを取り戻せないケースを見てきている。フィエールマンがそんな状態に陥っていないか心配。そこが克服できれば3着以内はかなりの確率である。

▲キセキ(8番人気: 25.7倍)

www.youtube.com

 動画は追い込んで勝った菊花賞だけど、今ではかなりキャラクターチェンジしてきて、タイトなレースを先導してロングスパートで粘りこむ戦法でGI戦線を引っ張っている馬。つまり先行するスピードとロングスパートを敢行するスタミナを両方持っていないと出来ない芸当で、大体どんなレースでも対応できてしまう。

 今年の宝塚記念リスグラシューが強すぎただけで、キセキ自身も3着を2馬身突き放している。大阪杯も、渋った馬場を先行して800mのロングスパート、そして2着に粘り込んだ。スタミナなら現役屈指。できればコテコテのロングスパート戦に出来ればいいのだが、陣営のコメントを見るにレースを積極的に引っ張る意識は無いっぽいので、400mではどうしてもトップスピードが要求される展開になりそうなのでこの位置。少なくとも8番人気にナメられる馬じゃない。

△アーモンドアイ(1番人気: 1.6倍)

www.youtube.com

 間違いなくデタラメに強い。前走の天皇賞(秋)3馬身差圧勝はもう圧巻だったし、スピード競馬なら現役どころか2010年代最強だと思う。父ロードカナロアがスプリント路線で爆発させていたスピード能力をそのまま受け継ぎ中距離路線で爆発させているような馬で、もう他のサラブレッドと一線を画しているのではないか。

 だがそれはあくまでもスピード競馬の話。アーモンドアイは長距離的なスタミナが要求されるレースをほとんど経験した事がなく、そこが唯一にして最大の不安。ジャパンCで2400mのレースを超絶レコードで制している訳だけど、超高速馬場の東京競馬場と、年末のタフな馬場の中山競馬場では、求められるスタミナ量が全く違う。そのスタミナをアーモンドアイは持っているのか、それは全くの未知数になる。単勝1倍台の信頼度は無い。

 一方で、近年稀に見るレベルの怪物であるアーモンドアイ。スタミナが要求されてもあっさり突き抜けて勝ってしまうかもしれない。だけど、超抜のスピードと無尽蔵のスタミナ、その両方を兼ね備える馬なんて存在していいのだろうか。アーモンドアイが優勝するのならば間違いなく日本競馬史上最強馬という称号が与えられるだろうし、そして僕は神の存在を信じ始めると思う。

△サートゥルナーリア(3番人気: 7.8倍)

www.youtube.com

 アーモンドアイと同じく父ロードカナロア。しかし、アーモンドアイと違って、サートゥルナーリアの本領は一瞬の加速力にある。神戸新聞杯では超スローペースからの直線だけのレースだったが、その加速力とトップスピードは他馬と次元の違う領域にいた。

 弱点はそれが一瞬しかない事。皐月賞は直線序盤で一伸びして圧勝かと思いきや、ヴェロックスに詰め寄られての辛勝だった。

 タフな馬場なので、アーモンドアイと同じくスタミナの不安がある。しかし、スタミナが完全に削がれずに4コーナーまで来た時、持ち前の加速力が火を吹いて出し抜く事ができれば、3着以内はもしかしたらあるかもしれない。例年では本命になるのかもしれないが、今年はライバルに怪物が居すぎる...

△スワーヴリチャード(6番人気: 18.5倍)

www.youtube.com

 前走のジャパンカップは低レベルだったかなと思う。3歳牝馬のカレンブーケドールと3/4馬身差だった訳で、これをもって復活とかは考えない方がいいと思う。

 ただ、こういう道悪の馬場をこなせたのは有馬記念を戦う上では大きいし、またリスグラシューが圧倒した宝塚記念でも3着に入っている。一定量のスタミナは持っているし、内枠を利して噛み合えば... というところ。

アルアイン(15番人気: 111.9倍)

www.youtube.com

 今年の大阪杯勝ち馬がこの人気。本当、どの馬が勝っても驚けないレース。

 スワーヴリチャードと大体同じ理由になる。渋った馬場の大阪杯を、内を通したとはいえクビ差制した。本来のこの馬であれば、渋った馬場でスローペースから入るのであれば力を十分に発揮できる。ただ、ここ2走の結果が余りにも悪すぎるので、なんとか持ち直してくれればワンチャンスあるかな...

△クロコスミア(16番人気: 146.5倍)

www.youtube.com

 大穴。というか、クロコスミアが最下位人気になってしまうところに今年の有馬記念のメンバーのヤバさがある。エリザベス女王杯3年連続2着の実力馬。そして負けた相手はモズカッチャン、リスグラシュー、ラッキーライラックという名だたるメンバー。牝馬限定戦と思うなかれ、レースレベルは相当に高い。

 ここ2年ではレースの仕掛けを先導して、800mのロングスパートから必死に粘りこむという戦法をとっている。この再現が有馬記念でも出来れば、3着以内に残れるチャンスは十分にある。

消 ワールドプレミア(4番人気: 11.5倍)

www.youtube.com

 菊花賞馬は有馬記念とは非常に相性がいい。それは有馬記念には長距離適性が求められるからだと思っているのだけど、今年の菊花賞馬のワールドプレミアは消した。

 純粋に、今年の菊花賞はレベルが低かったと思う。ちゃんと長距離的なレースになっているし全馬が力を出し切ったと思っているけど、馬場が悪いわけではないのにタイムが遅すぎる。この勝利も武豊が最内を上手く立ち回ってのもので、ワールドプレミア自身のパフォーマンスはそれほど高くはない。その前提で、この怪物だらけのメンバーの中で食い込める余地があるかと言われると、NOだと思う。

レイデオロ(7番人気: 22.6倍)

www.youtube.com

 衰えかな...と思う。去年まではトップクラスのパフォーマンスを見せ続けていたけど、今年は惨敗続き。特に前走のジャパンカップで11着というのは、全盛期の彼からすれば考えられないぐらいに負けてしまった。ここから持ち直すのは難しいかな... 2歳の時からホープフルステークスを勝って、ダービーも勝って、そして天皇賞を勝ったのは十分すぎるほど立派だった。

消 ヴェロックス(9番人気: 25.9倍)

www.youtube.com

 現時点では明確な武器がない器用貧乏な馬。流石にこのメンバー相手に太刀打ちはできないかな...

 父ジャスタウェイも祖父ハーツクライも、4歳秋まではイマイチだった。おそらくヴェロックスもそのタイプ。だから、来年はもしかしたら大化けするかもしれない。ジャスタウェイの現役時代のファンとして、その時を楽しみに待ちたい。

消 アエロリット(11番人気: 83.8倍)

www.youtube.com

 もっとこの馬の逃げを見たかったんだけど、もう引退か... 今年の天皇賞(秋)は本命でした。アーモンドアイには負けたけど、アエロリットも稀代の名牝だということを証明してくれたと思う。

 明確に距離不安。ハイペースで飛ばすにしてもバテる不安があるし、スローにしても切れる脚が使えるわけではない。この距離では残念ながら勝ち筋が見えない。

 だけどラストランに有馬記念に出てくれるのは、1人のファンとして感謝したい。なんとか、悔いのないレースを。

ミリシタ真壁瑞希出番多杉内

 

 昨日突如実装された真壁瑞希のSilent Joker、MVもカッコよくて、コミュもまぁまぁ良くて、まぁまぁ堪能させてもらったけど、やっぱりこのモヤモヤは消えない。真壁瑞希が最推しなのにも関わらず。

 何がモヤモヤするって、単純に真壁瑞希の曲がミリシタに実装され過ぎという点。

  • 2018/09/29 ...In The Name Of。 ...LOVE?
  • 2018/10/22 ラスト・アクトレス
  • 2019/01/04 Raise the FLAG
  • 2019/07/23 dans l'obscurité
  • 2019/09/03 赤い世界が消える頃
  • 2019/10/12 Silent Joker

 この1年で6曲も。メインコミュは月2回更新になったとはいえ、一年間で実装されるのは24曲。52人いるミリオンライブで一年足らずで2週目が来るのは明らかにハイペース。ユニット曲もこの一年で実装された24曲のうち、4曲で真壁瑞希が参加している。当然イベントコミュにも登場している。どう考えたって出過ぎている。ラスト・アクトレスはTBによって勝ち取った報酬でイレギュラーだとしても、その結果が出たのは2018年の1月。それだけ猶予があればこの偏りは何とか出来たのではないか。いや、偏らないように最大限頑張ったけどこの結果になってしまいました、という可能性もあるんだけど、こんな事になってしまう事情って、一体どれだけヤバい事情なんだと勘ぐってしまう。

 真壁瑞希の出番が大きく偏っている事で不満なのが2つあって、第一は真壁瑞希の曲の資産がハイペースで消化されていてもうほとんど残っていないこと。デフォルト曲で実装された「Sentimental Venus」を始め、「Growing Strom!」も「Raise the FLAG」も、TAで勝ち取った「赤い世界が消える頃」も、もう既にミリシタ内に登場している。残りは何年後になるのか分からないメインコミュ3周目での「POKER POKER」、コミカライズの内容と深く結びついているため実装されるかどうかも怪しい、そもそもコーラスでしか参加していない「アイル」、そして「Cut. Cut. Cut.」しかない。資産が消費され過ぎて、もう今後実装される曲がほとんど残っていない。単純に、先の楽しみが無くなってきた。

 そして2つ目は、実装を待っている間にワクワクする事が無くなってしまう事。メインコミュ1周目が来た時にはめちゃくちゃ嬉しかったけど、それは他のアイドルのメインコミュが実装されるのを横目にして「真壁瑞希のメインコミュは果たしてどうなるんだろう...」とワクワクし続けられたから。その助走の期間があるから、いざ実装された時に本気で喜べるし、おおこう来たのか! という驚きも持てるし、待った甲斐あったなぁと思うし、感動もより深くなる。EScapeの時もそう。ダークファンタジー、青春、特撮ヒーローと来て、真壁瑞希が参加するユニットはどんなテーマになるんだとワクワク出来た。その時間は自分にとって、とても大切なもの。

 だけどこの一年、真壁瑞希のまだ見ぬ出番に対してワクワクする事が無くなった。あまりにも登場する頻度が高過ぎて、噛みしめる前に、次の出番を待ち望む前に「次」がきてしまう。自分はこれでは楽しめない。MTWという新シリーズでも第一弾を飾ってしまった事も辛い。属性混合になるであろうユニット、その組み合わせを妄想してワクワクするチャンスも奪われてしまった。(そう考えると、トップバッターを貼る事の多い春日未来Pや七尾百合子Pにも同じようなつらみを抱えている人がいるかもしれない)

 はっきり言って、年明けの「Raise the FLAG」以降、真壁瑞希の曲がミリシタに実装されてもほとんど嬉しくなかった。それはこの「Silent Joker」もそう。52人いるから出番の一つ一つが貴重。そのはずなのに、こんなにハイペースで出番が固め打ちされると全然そう思えなくなるし、全く有り難みがない。言葉を選ばずに言えば、ミリシタの真壁瑞希に飽きてきている。あまりにも供給が多過ぎて食傷気味なんだ。

 「出番が多過ぎてつらい」というのは人によっては贅沢な悩みに映るかもしれないし、気分を害する人もいるかもしれない。でも、現実として嬉しくない。いつサービス終了が来るか分からないソシャゲでは、推しの出番が早めに来る事に越したことはない、という意見は、一般論としてはわかる。ただ、例えばミリシタが2年以内にサービス終了するとは全く思えないし、そんな状況でここまで出番が集中しても嬉しくはないし、何故? という思いが拭いきれない。

 まぁ現実として真壁瑞希の出番はここまで消費されてしまったわけで、今後は大きく出番を減らすことになる。中谷育さんはトゥインクルリズム以降、1年半以上にわたってイベントに登場していない(!)ようだが、それくらいは覚悟をしている。というか、その方がいい。今年中に「Cut. Cut. Cut.」が実装されてしまったら、何をモチベーションにミリシタを続けていけばいいんだろうか。

 f:id:realizemoon:20191013160147j:plain

 それはそうとSilent Jokerのイケ真壁めっちゃカッコいい。でもミリシタではイケ真壁オンリーで、かわ真壁の出番がほとんどない気がするなぁ。

アイマスライブのマナーについて本気出して考えてみた

 別に発言された方が炎上目的だと言うつもりは毛頭ないのだが、ライブマナーに関する話は定期的に話題に上がる超絶人気コンテンツなのは間違いない。何故人気になるのかというと、この手の話は不毛で終わりのないものだから。不毛な話は人をイライラさせる。イライラさせる話題は人を強く惹きつける。世に蔓延る炎上コンテンツと全く同じ構造になっている。

 特にアイマスライブのマナーの話題では様々な話題が切り分けもされずごちゃ混ぜになって語られており、警察側は極悪厄介藁人形に向けて石を投げ、厄介側は究極警察藁人形に釘を刺す、藁人形論法の見本市と化している状態。まさに地獄の門みたいに煌々と赤く絶え間なく燃え続けているのだ。上手くいけばこの話題でPV稼いでメイクマネー出来る可能性がある一方、健全な一般人はこんな地獄とは距離をとって日々を過ごすのが身のためだ。イライラしまくって坂上忍状態になるだけでマジで何の特にもならんぞ。

 ただ、一方でライブに参加する人には一度、ライブマナーについて真剣に考えて欲しいなぁという気持ちもある。というのも、ライブは性善説で成り立っているから。性悪説でライブを運営しようとしても、とても現実的ではない。そして、ライブで性善説が成り立つのは、観客の間でマナーが共有され、それが育まれているからだ。

 このマナーが共有されなくなったり無視されたりしてしまうと、新規の客が入って来づらくなったり、無茶苦茶なライブになって楽しめなくなったり、レギュレーションがガチガチになったり、最悪ライブが成立しなくなってしまう。「レギュレーションに書いてないなら何をやってもいいでしょ」というものでもない。それが成り立つのは他の大多数の人がちゃんとライブマナーを守っているからで、全員がレギュレーションのギリギリを攻めようとする状態になるとたちまちそのライブは崩壊する。だから、みんながマナーを守る事が大事なのだ。

 だからと言って、マナーを聖典のように振りかざして他の観客を粛清して回るのも良くない。マナーは他の人を攻撃する材料なのではなく、一緒にライブの場を良くしていこうと働きかける材料であるべき。また、自分がこうだと思うマナーを他人に押し付けるのも良くない。多くの人の合意が得られそうな内容を「ライブマナー」として扱うべきで、そしてその内容は、特定の人間ではなくライブ参加者全員で考えるべきだ。

 ちょっくらここは、ロックバンドのライブ歴13年かつアイマスライブ歴2年のジジィこと僕が、アイマスのライブマナーについて考えていく。多くの事は別にアイマスのライブに限った話ではなくなってしまったが、あなたがライブマナーについて考える材料の一つにしていただければ幸いである。ここではいくつかに切り分けて書いていく。

  • 演者と演目、観客に対するリスペクトの話
  • 指定席でのライブマナーについての話
  • UOサイリウムの色の話
  • 番外編: 「アイマスにはライブマナー警察が増えてきた!」という話題

演者と演目、観客に対するリスペクトの話

 ライブは観客も参加者であり、参加者はライブを成功に導く義務がある。というのも、観客の質によってライブの出来栄えは良くもなるし悪くもなる、とりわけ悪くする方向にはとても簡単に、徹底的に破壊し尽くせるからだ。

 自分が参加したライブではないが、ネットで見聞きして印象に残っているのがBEAT CRUSADERSというバンドが2007年に大阪でやったライブの話。こちらのライブレポとかを見てもらえばわかるが、典型的な「観客に破壊されたライブ」になっている。観客が、演者や曲にリスペクトを払わなければ、ライブは簡単に崩壊してしまう。

 だからこそ、ライブでは観客の一人一人のがリスペクトの心を持ち、演者がステージ上で表現しようとしているものを、出来る範囲で尊重しなければならない。これはライブマナーを考える上での大前提だと思っていて、全員がこの事を真っ先に考えるべきだと思う。「チケット代払ってるんだからいいだろ」「レギュレーション違反じゃなけりゃ何やってもいいじゃん」という以前の話。憲法を改正してこの条文を書き加えて欲しいというレベル。

 たまに「バラードで奇声を発したり家虎する人」の存在が話題になるが、その人はこのリスペクトが欠けているという話になる。それは、演者の表現をいとも簡単に破壊してしまう行為であり、避けるべきだ。「じゃあどれくらいアップテンポな曲なら声出してもいいの?」という意見については、「演者の意図を汲め」としか言えないし、それがわからないのであればライブに来るべきでは無いと思う。みんなで作り上げる場なので。

 また、「興味ない曲で座ってスマホいじったり隣の人と私語をする人」も同様。演者に対して普通に失礼だし、その曲を楽しんでいる、一緒にライブを作り上げている周囲の人たちに対するリスペクトもない。

 一方で、ここでいわゆる「地蔵」を咎めるつもりはない。大事なのは演者のパフォーマンスを壊さないようにする事、演者にリスペクトを送ることで、それを満たしている範囲であればどんな楽しみ方でも自由だと思う。

指定席でのライブマナーについての話

 オールスタンディングのライブであれば、基本的には自由でいいと思う。飛び跳ねるもよし体を反らすのもよしダイブするもよしグルグルもよしモッシュするもよし俺によしお前によし。ただし法に触れずライブを壊さない範囲に限る。

 それが成り立つのは、オールスタンディングが自由に移動できる場からだ。自分に合った場所でライブを楽しむのがオールスタンディングであり、モッシュしたければ前に行き、じっくり見たいのであれば後ろに行けばいい。目障りな人間がいれば移動すればいい。極論、不慣れなのに前方に行ってモッシュに巻き込まれて骨折してもそれは自己責任。それは、あなたがわざわざその危険な場所を選んだからだ。

 指定席のライブは決定的に違う。席は抽選で決定され、ライブ中はそこを動く事ができない。自分の視界の前方にUOグルグルしたりして視界を妨げる人間がいると、その環境から逃れる術が無い。このような環境では、自由な行動をとってもいいという正当性が無くなる。「嫌なら他に行けばいいんじゃ無いですか?」とは言えないからだ。望む望まざるに関わらず抽選で席が決定されてしまう指定席ライブでは、鑑賞する際には周囲(特に後方)には配慮をするべき。オールスタンディングライブでやっていたノリは、そのまま指定席ライブに持ち込む事はできないのだ。

 一方で、この事は後方の席の人が前方の人を攻撃する材料ではない。例えば「背が高いから屈め」と言ってはいけない。それはあなたの背が低いからであり、不運にもあなたの前の席となってしまった人に、屈んでライブを見ろと言える正当性はない。「肩より上に腕を上げないでもらえますか?」とも、おそらく言えないだろう。それによって視界が大きく塞がれるわけではない以上、その人のライブの楽しみ方を制限する理由は多分無い。

 結局、制御不能な要素が多い指定席でのライブでは、必ずしも快適な鑑賞体験を保証されることはない。大事なのは、お互いがお互いに配慮することだ。理不尽なことでなければ、多少のことには目を瞑る寛容な心もまた、ライブを楽しむためには重要だと思う。

UOサイリウムの色の話

 一番言われるのがUO(ウルトラオレンジ)。UOUOの折るべきタイミングで折るべきであり、それ以外のタイミングで折るべきではない。盛り上がる曲でも「蒼い」曲では折るべきではない、という主張。

 上記のようなライブマナーと同じ文脈で語られる事が多いけど、この話はマナーの話ではない。マナーとは「日常的に生きていけば身につくもの」、あるいは「少し考えればわかること」に限定するべきで、UOの件はそこに入れ込むのはハイコンテクスト過ぎる。

 僕のアイマスライブ初参戦は2017年のハッチポッチフェスティバルDay2なのだけれど、そこで演奏された「アライブファクター」でUOを折った(そして連番者の友人に注意された)。「蒼い曲は会場が蒼に染まるから美しい」というのは、2,3回参加してやっと「あぁ、そういうことなんだな」と分かる。でも当時の自分は、何故そこで折ったらダメなのか分からなかった。周りにも折ってる人いたし、他の曲でも盛り上がったタイミングでみんな折ってたし。

 「この曲なら折ってもいい、折ったらダメ」というのは、新規に入ってきた人にとってはとても分からない。そういうものをライブマナーの範疇に入れるべきではない。そんな風に肥大化したマナーは他の人を攻撃する材料にしかならず、本来の目的を逸脱してしまう。

 これは他のサイリウム芸も同様。先日のシンデレラ7th幕張公演で「小さな恋の密室事件」でみんなサイリウムの色替えをしてなかった、と嘆くツイートを見かけた。気持ちはわかるのだが、これも同様にライブマナーの話ではない。ライブの質をよりよく高めるための「努力目標」だと考えるべきだと思う。

番外編: 「アイマスには警察が増えてきた」という話題

 当たり前の話で、アイマスはアニソンコンテンツの中でも動員人数が多く、公演回数も多い。当然、観客間のトラブルもそれに比例して発生するし、他人のマナーに対して敏感な観客も多く参加する。ライブ後にお気持ち表明ツイートが多く観測されるのは別に自然な事だ。

 もう一つ、アイマスは10年以上の長く続いてきたコンテンツで、様々なタイミングで様々なバックグラウンドを持つ人が流入してきた多様性に満ちたものとなり、アメリカ風に言うならば「オタクのサラダボウル」状態にある。当然、世界情勢を見ればわかる通り、多様性はメリットだけでなく、様々な軋轢をも生じさせる。ライブマナーの件もその一つだろう。

 解決方法は2つ。1つはトランプばりに強権的な権力者(ライブ運営)にガチガチに全てのルールを決めてもらい、それにそぐわない人間を排除させる方法。もう一つは、このコンテンツの住人の間でお互いを理解するよう努力し、みんなで手を取り合ってライブをより良い方向へ進めていく方法。前者がいいと言う人は、多分そんなにいない。そんなライブは楽しくないから。だから、みんながライブマナーについて考えることが大事なのだ。

退職してみた2019

 タイトルの通り。と言っても、退職したのは結構前。最近ようやくメンタルが安定してきだしたので、これから転職したり就活したりする人のために、あと自分の備忘録としても書いておく。なお、この物語はフィクションです。

前職

 どこにでもある大手SIerに新卒入社。主にグループ会社からの受託開発を行っている。最近は一般市場向け案件に力を入れて爆死を繰り返している。

よかったところ

充実した新人教育

 集合しての新人研修が約3ヶ月、その後2年間は散発的に研修が組まれるなど、新人教育は徹底しており、充実していた。

 内容も、基本的なビジネスマナーから、開発・営業の実践研修までと幅広く、2年間を終える頃にはこの会社で行われる全業務の基礎を習得している、という人材になる。さすが総合職採用。

 反面、新人が2年間の間存在と消失を頻繁に繰り返すことになるので、新人を受け入れる職場からはすこぶる評判が悪い。しかし、新人の僕たちにはそんなことは関係ない。しゃぶれるモノはしゃぶり尽くそう。  

職場の人

 本当に、先輩方には良くして頂いた。コミュ障を煮詰めて固めたような入社当時の自分に対しても根気強く接してもらったし、構成管理の概念すらも知らなかった自分にgitを教えてくれ、そこからJenkinsを使ってのCI/CD環境構築を任せてもらった。正直、この会社じゃなかったら、この先輩たちがいなかったら、自分はエンジニアになれていなかったんじゃないかと思う。

 その他、ベテラン社員の人たちもほぼ全員温厚で、優しい人たちだった。別部署ではパワーがハラスメントしている民族がいるようだが、少なくとも自分の業務の範囲ではそのような人は一人も観測できなかったし、この会社では少数派だったんだろうと思う。  

福利厚生

 最強。特に家賃補助がチート級の能力を誇り、生きているだけで数万円の家賃補助が振り込まれる。その他、財形貯蓄や持株会の奨励金、確定拠出年金などオーソドックスな福利厚生は全て網羅している。

 さらに有給が年20日+夏休みの5日の計25日あり、ありすぎて使いきれなくて困るという贅沢すぎる悩みを抱えることになる。特にベテラン社員は有給の使い方がヘタクソで、年末になると有給消化のためベテラン社員がゴッソリ居なくなる。

転職のきっかけ

 非常にレガシー極まりないプロジェクトに突っ込まれた事がきっかけ。この記事の主旨とはブレるが、面白いのでちょっと書いてみようと思う。

 就職してから3年後、数十年前に開発されたあるシステムの更改プロジェクトに参画することになった。開発言語は当然C言語、それで実装されているのは独自実装の謎の通信プロトコル、仕様書は数千ページあるPDFファイル。この時点で泣き出したくなる。

 途中参画者がいきなり開発に入れる訳がないので、まずはテスト環境構築の業務を行っていた。僕たちは電車ではるばる2時間かけて、サーバの置いてある「研究所」なる施設まで赴き、残業しながら粛々とOSをインストールしたり、数十台あるNW機器のコンフィグをコンソールで接続して設定したり、数百本あるLANケーブルで数十台のサーバと数十台のNW機器を接続してサーバラック群を巨大な毛糸玉のように変貌させていた。(クラウド全盛期の昨今だが、レガシープロジェクトのレガシー人間が採用するテスト/商用環境は、当然オンプレミスであり、愛情のこもった手作業である)

 一回きりの構築ならまぁ大したことではないが、ある問題がある。このプロジェクトは予算がほとんどなく、本来テスト環境が6セット必要なところ、3セット分の設備しか揃えられなかった。しかしそれでも、テストしたい環境構成のパターンが6つある。じゃあどうするか。テスト環境のローテーションを決めて、一週間ごとにテスト環境の一つを解体して、そこにまた別のパターンのテスト環境を作るのだ。

 つまり一週間ごとに、僕たちは電車ではるばる2時間かけて、サーバの置いてある「研究所」なる施設まで赴き、残業しながら粛々とOSを再インストールしたり、数十台あるNW機器のコンフィグをコンソールで接続して修正したり、巨大な毛糸玉と化したサーバラックを一つ一つ解き、また数十台あるサーバとNW機器の間を数百本あるLANケーブルで接続し、再び巨大な毛糸玉を再構築するのだ。

 それだけではなく、このプロジェクトは炎上プロジェクトらしく、テスト工程に入っても仕様が決定していなかった。仕様が変わるとテスト環境も変わる。「仕様変わったから環境こうやって変えて。来週月曜日にはテストできるようにしてね(今は金曜日夕方)」なんて普通にあった。その度に休日出勤して、丹精込めて作った環境を再びバラバラにするのだった。ここは賽の河原か。折角構築した環境も、すぐに鬼によって粉砕される。それを分かっていながらも電車に乗って研究所に行き、残業しながら石を積んで帰って寝るだけの生活が数ヶ月続いた。

 お金があれば。何らかの仮想環境が使えれば。そのどちらかが叶えば、こんなしょーもない肉体労働をする必要なんてなかった。その歪みを僕が一身に受けているようなものなので、この時期は本当にフラストレーションが溜まっていった。

 数ヶ月経つと環境構築作業もだいぶ落ち着き、すわ、我が世の春到来か? と思っていたのだが、間髪なく絶賛大炎上中ロングラン公演大決定のテスト業務にぶち込まれる。僕が投入されたのは、その中でも性能試験、つまり、システムが仕様通りのスループットを満たせるかどうかをテストするチームだ。

 HTTPであれば負荷試験ツールなんて選びきれないほど世の中にあるのだが、前述した通りこのシステムは独自プロトコルを喋るので、それに対応する負荷ツールは世の中に存在しない。じゃあどうするの? と思った僕に手渡されたのは、開発チーム内で製造された独自の負荷試験ツールと、Excelで数千行にも及ぶ手作りのマニュアルだった。

 地獄だった。当然、負荷試験ツールはまともにテストされてないしマニュアルも極めて難解、システム自体も絶賛テスト中(炎上)、そしてテスト環境は賽の河原の石積みの果てに知能が5歳児並みに低下した僕たちが作ったのであちこちおかしい。よって、負荷試験はうまくいかない。うまくいかなくても、負荷試験ツールがおかしいのかシステムがおかしいのかテスト環境がおかしいのかツールの使い方がおかしいのかマニュアルがおかしいのか頭おかしいのか切り分けできないのだ。

 極め付けは、前述した通りテスト環境が限られているクセに、テスト工程が炎上しているため、どのテスト環境も使用予定が埋まっていて使えないこと。じゃあどうするかというと、みんなが残業終わって帰宅する午後10時から、みんなが出社する午前10時までの間、テスト環境をこっそり使わさせていただくのだ。2010年代も終盤になって、ただ「サーバが足りないから」という理由で、人間の方が徹夜するのだ。眠気を通り越して吐きそうになりながら、コンソール画面と向き合い続けた。

 「テスト終わったので使っていただいて大丈夫です!」と連絡を受けてさぁテストするぞと思ったら、テスト環境が滅茶苦茶になって崩壊していたこともあった。「次使う人のことも考えて使いましょう」という小学生でも出来る事が出来ない50代男児がいる事に驚いたのだが、この人も度重なる残業で幼児退行してしまったのだろうか。この時は孤立無援手探りでのテスト環境再構築で10時間を費やした。

 そんな古き悪きプロジェクトで過ごして約1年、気がつけば意味不明なプロジェクトで馬車馬のようにこき使われた思い出しかないし、エンジニアとしてのスキルもほぼ上がっていない。L2以下のレイヤのNW構築とかWiresharkで謎プロトコルの読解とかしかしてきてないし。もしかして、このまま自分はこんな調子で使い潰されるのでは? このままスキルが上がらない肉体労働ばかりさせられて、気付いた時には市場価値もないし、仕事が嫌だから転職する、ということもできなくなるのでは? という恐怖が沸き起こり、転職に大きく気持ちが傾くことになった。

 その他にも、会社の先行きに不安があったり、会社の人事方針に不信感を持ったり、労働組合が強すぎて逆に働きにくくなったり、色々あったが割愛。

転職して

 適当に2ヶ月ぐらい転職活動をしていた。テスト工程が落ち着いた辺りから業務をバレない程度にサボタージュし始め、定時に帰って面接に通ったりしていた。4社受けて最終的に2社から内定をいただいた。

転職先について

 今流行りのWeb系企業。正直、自分の実力では十分すぎるくらいの地位の会社だと思う。期待通りの実績を出せるか今でも不安。

働き方

 前職に比べて非常に働きやすい。裁量労働制なのだが、ひたすら残業して成果を上げろというプレッシャーは一切なく、むしろ定時内に帰ることを推奨される。業務量もそこまで多いわけではなく、のんびりと働いて、空いた時間で学習してさらに業務に生かすという、ポジティブサイクルを回すことができる会社だなと感じる。

 また、前職であったノー残業デーが無いのも非常にありがたい。好きな日に残業が出来るので、プライベートの時間を組み立てやすい。残業時間にも制限がないので、元気がある日に気兼ねなくバーストして働くことも出来る。前職では一々、上司と労働組合の顔色を伺う必要があった。

 そもそも、前職とは違い、自分達の手でプロダクトの仕様策定・設計・開発を行っているので、その開発の過程で忙しくなってしまっても、それは自分達の設計だったり開発のスキルがイケてないからということなので、「残業しなければならない」という事に対して納得感がある。前職ではPMの無能さのツケを払うために残業しているようなものだった。

 そういえば、前職では炎上したプロジェクトで残業フェスティバル真っ只中となったある日、残業させてくださいと上司(PM)に言ったら、またか、みたいな顔と同時に「まろみくん、稼ぐねぇ〜〜〜〜」と言われたのを多分一生忘れないと思う。誰のせいでこんな残業する羽目になったんでしょうね????

給料

 変わらない。給料upを目指して転職したわけではないので特に文句はない。

福利厚生

 下がった。有給日数は半分程度になったし、家賃補助も無くなったので、前職勤務時よりも質の下がる家に住まざるを得ず、QoLがかなり下がっている。無理のない範囲で成果を出して昇給し、借家をランクアップさせたい。

飲み物

 無料でコーヒーやお茶やコーンポタージュやコンソメスープが出てくるドリンクベンダーがあって最the高。

総合

 良い。

その他

SIerはやめとけ」という言説について

 よくSIerに就職をキメる新卒に向かって、哀れんだり、嘲ったりする風潮をネット上では感じるのだけど、新卒でSIerは別に悪くない選択肢じゃないのと思う。どんなレベルの新卒でもかなりしっかり教育してくれるし、そこで働くことである程度はスキルアップ出来ると思う。

 逆に、キラキラWeb系企業は即戦力を求める傾向にあり、ある程度のエンジニアリングスキルがなければマトモな会社には入れない。そうでなくても入れる会社は、そうでない程度のスキルの人が集まっている会社なので、低スキルを勇気と根性でカバーしてる運用のところが多いんじゃないかなぁと思う。お手本となる高スキル者が居ないわけだから。

 文句があって結局は転職することになったけど、初手SIerはまぁ悪くない選択だったんじゃないかと思う。

転職することについて

 新卒時にはこのまま終身雇用される気マンマンだったけど、レガシープロジェクトに入れられてから、ずっとぶら下がり続けるのはリスキーな選択だよなぁと強く感じるようになった。クソみたいな仕事ばかり回されて「もう辞めてやる!」と思っても、その時には特に市場価値のない冴えないオッサンになっている可能性が非常に高いし、そもそも大手SIerと言っても、定年時まで倒産せずに存続している保証なんてどこにもない。

 どの会社もそうで、数年後の未来は何も保証されていない。自然界と同じく、市場でも時代の変化に適応できた企業が生き残ると思うんだけど、じゃあどの企業が適応力があるのかと言われると外部からは全く分からないし、そもそも、変化の激しい時代を数十年切り抜けられる企業体ってほとんどないのでは? という気がする。自分としては、適応力を会社に求めるのではなく、自分が環境に適応できるようにせっせとスキルを身につけ、職を転々と出来る方が一番セーフティな気がする。これはどこの業界でもそうだと思う。

 じゃあ今の会社もいつか辞めるのかと言われると、そうではない。大事なのは職を転々とすることではなくて、職を転々としても生きていけるだけのスキルを身につけること。

EScapeとMythmaker、同じ曲だけど違う曲

f:id:realizemoon:20190705222528j:plain

 ミリオンライブ6thライブツアーお疲れ様でした。埼玉でもお会いしましょう。

 僕が6thライブで一番期待していたのは、Princess公演での「咲くは浮世の君花火」と「Super Lover」と「リフレインキス」だったので、そのうち2つが聴けてマジで最高だった。本当に最高だったので、福岡のFairy公演には悪い意味ではなく、特に何も期待を持っていなかった。Princess公演の楽しさを上回ることは難しいだろうなぁと思ってたので。

 確かに、Princess公演の方が楽しかった。ただ、Fairy公演の方が圧倒的にヤバい。エモいとかではなく、ヤバい。とんでもないライブだった。

 これだけ衝撃的なライブは、自分がアイドルマスター初心者だった頃に参加した初星宴舞以来だった。

kokukoku.hatenablog.com

 久々に読み返してみると文章が稚拙だったり曲名間違えてたりするしコイツ最低だな。

 Fairy公演は衝撃的瞬間の連続だった。まさかのトップバッターD/Zealに始まり、まさかの流星群、弾き語り、餞の鳥。そしてミュージカル一本やってスパッと去っていく夜想令嬢。これまでのライブの流れを覆してソロ曲から始まる後半戦。Silent Joker、俠気乱舞。上げていったらキリがない。

 キリがないからここでは一点だけ濃厚に語りたい。それは3番目に登場したユニット、EScapeの4曲のセットリスト。

 f:id:realizemoon:20190705210810j:plain

 EScapeのステージは「I.D~EScape from Utopia~」から始まった。これまでのライブでも、ミリシタ実装曲から始まるユニットが多くを占めていた訳だが、曲調から考えてEScapeが「I.D」から始まることは驚きではなかった。

 しかし、1曲目が終わった直後、僕は凄まじい衝撃を受けることになる。

 f:id:realizemoon:20190705211319j:plain

 Mythmaker。

 マイフェイバリットソングの1つ。インダストリアルで徹底的に熱を排除した曲調、そこにソウルフルでかつ透明な歌声が乗る。ライブで歌われたら絶対に映える。一度でいいからライブで、生でMythmakerを聴きたい。Princess公演終了後、友人にそう熱く語っていた。

 まさかここで。EScapeのカバー曲には「Next Life」を激推ししていたのだけど、それとは違う、でも喉から手が出る程聴きたかった曲。あの極端に誇張されたドラムの音が聞こえた瞬間、衝撃と驚きと喜びでしばらく頭を抱えてしまった。

 ただ、そういう「自分とMythmaker」みたいなことを語りたい訳ではない。「Mythmakerの曲調と、EScapeの雰囲気ってすごいマッチするよね」みたいな自明のことを改めて言いたい訳ではない。「Mythmaker」を、このEScapeのステージで歌われることによって生まれる妙と凄さについて語りたい。

Don't speak carelessly アドリブなど挟ませず
いっそ「人形だ」と揶揄されてもskip it
Would you play? Would you bless? 望むように
この歌が呼ぶ よろこびたち
誰にも隔てないで Please flow like a dream
眩いほどに紡ぎあって
Uprise, euphoria...

 三浦あずさの歌う「Mythmaker」は、ステージに立つ者の矜持をシリアスに描いたものだ。その歌詞に描かれている姿勢は尋常ではない。チャンスを掴むために、バックステージを抜けて戦場に身を投じる。ステージに立てば、違う自分が目覚める。観客の期待に応えるために、その望まれる「姿」を「完璧」に演じきる。どこまでもこの歌よ響けと、祈る。プロ意識という言葉では生温い。描かれているのはまさに「Mythmaker = 神話を創る者」、ステージ上で伝説になろうとしている人間だ。

 一方でEScapeの世界観は「近未来の徹底した管理社会」であり、EScapeの3人は「管理社会を維持するために生産されたアンドロイド」だ。「Mythmaker」が描く「ステージ上のエンターテイナー」という世界観とは、本来は全く交わらない。

 しかし。

 Fairy公演での「Mythmaker」のイントロ。暗闇の中で空から光が降り、それが演者と重なると弾け、衣装に光が宿り、動き始める。これだけで観客は分かる。これはドラマCDの冒頭、3体のアンドロイドの起動シーケンスを、ステージ上で表現したものだ。起動した直後、そしてキサラギチハヤに出会う前。ステージに立つのは、そんなココロを持たないアンドロイドであり、この世界の支配者たるマザーの操り人形。そして、そんな彼女たちが歌う「Mythmaker」は、全く違う意味を持ち始める。

Don't speak carelessly アドリブなど挟ませず
いっそ「人形だ」と揶揄されてもskip it
Would you play? Would you bless? 望むように
この歌が呼ぶ よろこびたち
誰にも隔てないで Please flow like a dream
眩いほどに紡ぎあって
Uprise, euphoria...

 EScapeの歌う「Mythmaker」は、このユートピアを担うアンドロイドの姿を描いたものだ。「より良い社会を作りたい」という人間の欲望の果てに生まれたアンドロイドによる管理社会。インストールされたロジックとインプットされた入力通り、「あなた」が望むように働くアンドロイド。彼女らの動きは完璧に調律され、まるで美しいハーモニーのように響いて、そうしてこの世界は「幸福」に満たされる。そう信じて疑わないアンドロイドたちの歌だ。そう考えると、「Mythmaker」というタイトルさえ皮肉に感じてしまう。mythは神話、要はフィクションであり、「Mythmaker」とはつまり「ありもしない幻想を創り出す者」だ。

 1人の歌手を描いた歌が、歌い手が変わり演出が加わると、ディストピアを構成するアンドロイドを、暗喩を散りばめながら描く曲になる。

 ある曲が他の人にカバーされることによって、違う意味合いが生まれることはよくある。しかし、それは原曲のベクトルを基にして、そこに歌い手の心情や背景が上乗せされることによるものだ。この「Mythmaker」のように、ベクトルの向きを全く変えてしまって、同じ曲なのに完全に違う世界観が与えられる例を、僕は他に知らない。凄い。こんな芸当ができるのはミリオンライブ以外に無いのではと思うくらい凄い。

 「Melty Fantasia」を経て披露された「LOST」もそう。美しい思い出を振り返りながら、失恋の痛みを抱えて感傷的になる曲。しかし、EScapeのステージで披露された「LOST」は、それとは全く違う意味を持った曲になっていたことを、観客はみんな分かったはずだ。

 考えれば考えるほど唸らされる。ただカバーするだけでは無い、ステージ演出を付加させて観客にバックグラウンドを想起させることで、同じ曲ながら全く違う曲に生まれ変わらせる。こんな手法が存在することを知らなかった。仙台公演の時にセットリストをボロクソに叩いてしまい申し訳ないという気持ち。負けを認めると同時に、ミリオンライブのもつ底知れないポテンシャルに改めて感服するライブだった。