打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

ミリシタ THE@TER CHALLENGE!! 終戦&分析編

2019年2月18日追記

 コメント欄を閉鎖しました。

 本記事が自分の予想を超えた勢いで反応をいただけたこと、また、多数のコメントを頂けた事に、誠に感謝いたします。しかしながら、自分にとって初めての事態のため、これ以上のコメントが来ても自分では管理しきれないと思い、一時的にコメント欄を閉鎖することといたしました。

 頂いたコメントは一つ残らず読んでおります。また、ご指摘いただいた内容(誤字等に限る)は修正いたしました。ありがとうございます。コメント欄については、ほとぼりが冷めたころに、一部のコメントの削除した後に再度公開・開放したいと考えています。

 また、下記の記事中にも言い訳しているのですが、本記事はあくまでも、TCの一人の参加者が自分の出来る範囲で情報を収集し、それを誰の査読も経ず一人の手でまとめたものになります。そのために主観的な表現を排除しきれなかったり、簡略化しすぎて重要な事実が抜け落ちていたり、事実とは異なる表現を含んでいる箇所もあります。これは私個人として大きな反省点であると同時に、この記事の信憑性もその程度のものであるとご認識ください。

 それぞれの陣営の方が書かれた記事の方が詳しく、そして正確です。本記事でTCについてより知りたくなった方は、そちらも是非ご覧になってください。

2019年4月30日追記

 一部コメントを削除し、コメント欄を再度開放しました。


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 1月20日0:00、1ヶ月の長きにわたって開催されたTHE@TER CHALLENGE!!(以下TC)が終戦を迎えた。魑魅魍魎が跋扈するコンベンションセンター、疑心暗鬼が加速する心理戦、1ヶ月の努力をあざ笑う浮動票の動向。その中で傷だらけになりながらも、自分たちと自分のアイドルの力を信じて最後まで戦い抜いた52陣営。激しい戦いの末に、スポットライトを浴びる15人が選ばれた。

 前回までの記事で「TCには注目して複数回記事を書いていきたい」とか抜かしておきながら、結局期間中一回も記事を上げられず、総括記事もTC終了後4週間後、しかも結果発表直前に出すという失態を犯してしまった。申し訳ない。ライブに行ったりおもむろに転職活動を始めたりインフルエンザにかかったりちょっくら世界を救ったりと忙しかった。やれやれ。

 それでも、期間中は各陣営の動向をつぶさに見守ってきたつもりである。流石に戦いの渦中に身を投じていた各陣営程には戦況を理解してはいないだろうが、それでも客観的な視点からそれぞれの戦いを分析し、総括できるくらいには観察してきたつもりだ。

 形式はどうなるか分からないが、おそらくTDは開催されるだろう。今回負けた陣営は次に勝つために、今回勝った陣営は次も勝ち続けるために、「TCはどのような戦いだったのか」「TCから何を学ぶべきなのか」「TDではどうするべきなのか」、それぞれ振り返るべきだ。そのための材料の一つにこの記事がなるならば幸いである。

 以下、「TC全体の傾向」「各選挙区についての勝因・敗因分析」の2部構成で振り返りを実施していきたい。なお、出来るだけ正確・客観的に記載しようとしたが、それでも一個人の力では限度がある。以下の記載は全て私の主観に基づくもので、根拠があやふやなまま書いている部分もあるが、その点はご容赦いただきたいし、各文の末尾には「(個人の感想です)」が省略されていると考えてほしい。また、各陣営の戦略や動向について否定的な見解を示している箇所もあるが、これはTDに向けての反省点の洗い出しを行なっているためであり、決して各陣営の最前線で戦っていた人々を非難する意図は無い事もご理解いただきたい。

 TCを戦い終えての感想、TDに向けて考えるべきこと、運営への要望等、主観的な話題を盛り込んだ記事は後日投稿予定である。

TC全体の傾向

裏テーマ「AS組 vs シアター組」

 この事実を直視しなければ総括はできない。期間中事あるごとに話題となったAS組(765 PRO ALLSTARS)とシアター組(ミリオンライブから登場したMILLIONSTARS)との対立構造。「52人揃ってのミリオンライブ」「荒らしの言うことには耳を貸すな」との声も聞こえたのだが、少なくともTC期間中はこの対立構造は間違いなくあったと断言できる。対立構造を成立させた要素は3つある。

 1つはAS組PのTCへのモチベーションについて。AS組は2018年初頭の「初星宴舞」を開催して以降ライブメインのイベントの開催予告がされず、コンシューマーゲームの商業的失敗、ラジオ番組の終了、そして8月のプロデューサーミーティングでの悲壮感溢れるMC等、今後の先行きに暗雲が立ち込めている。特にプロデューサーミーティング以降、多くのAS組Pの胸に「AS組の展開が終了してしまうかもしれない」という危機感が深く刻み込まれていた。

 そこに飛び込んできたのは、10月のミリシタ感謝祭でのTC開催告知。これはAS組Pにとって、「やっとAS組に投票する事ができる」以上の意味を持った。つまり、「TCで結果を残せば、AS組の人気・需要を示す事ができ、今の閉塞感に風穴を開ける事ができる」と考えたのだ。投票企画である以上、AS組Pがこのような考えを持つことはごく自然な事であり、非難するものでは無い。しかし、AS組PにとってはTCはAS組の存亡を賭けた戦いであり、シアター組をメインとするPとは一線を画する動機を持っていた。

 そのため、AS組Pにとってはたとえ他のAS組の陣営であっても、それは「TCを共に戦う仲間」であり、そんな意識が漂うAS組の陣営間には緩やかな協力関係があった。全陣営の中で最後に目指す役を決定した亜美真美を含めて、13陣営全ての目指す役が全く被らなかったのは偶然では無い。仲間であるAS組陣営との「同士討ち」は避けたいと考えるのは自然な事だろう。

 2つ目はシアター組PのAS組への警戒感について。これはバスターブレイド役・星井美希の項でも詳述するが、TC開戦初日にAS組が多くの役で1位を獲得する中、ベルベット役に向かうと思われた美希陣営が突如方針転換、シアター組6人が乱立するバスターブレイド役に参戦したことに端を発する。これはシアター組Pの中で「真陣営と戦うことを避け、勝てそうなバスターブレイド役に向かった」と受け取られ反発されることとなり、また「AS組が役を独占するかもしれない」という警戒感も、このタイミングを境にして大きく広がっていった。これを契機にして、シアター組陣営間でも、AS組に対抗する形での「緩やかな協力関係」が発生することになる。この時点で「AS組 vs シアター組」という対立構造は既に成立していた。

 3つ目は、そもそもお互いがお互いのアイドルの事をよく知らないという事。たとえばミリシタにはAS組のソロ曲は収録されておらず、コミュの出番も少ない。その状態では、ミリシタから入ったPはAS組の事を良く分からず、そんな良く分からないアイドルに投票する動機はない。AS組とシアター組で争っている役があるならば、良く知っているシアター組を応援しようと考えるのは自然な事だ。AS組Pにも同じ事が言える(特に、TCからミリシタを始めたAS組P)。この「世代間の断絶」とも言える状況が、対立構造をより強化することとなった。

 上記の事から、TCではAS組PはAS組に、シアター組Pはシアター組に投票するという傾向が非常に強かったと言える。AS組から見たときに、孤島サスペンスホラーは0勝4敗、おとぎの国の物語は1勝4敗、近未来アウトサイダーは4勝0敗という極めて極端な結果となったのは、この傾向が結果として現れたものである。さらに、最終日にシアター組同士のマッチアップとなった友達役・旅人役がさほど注目されず、AS組vsシアター組となった女主人役・魔法使い役への投票が異常に加熱したのも、この対立構造が大きな原因だ。

 TBまではAS組が参戦しなかったため、当然この対立の構図は存在しなかった。これまでは各マッチアップごとの「構図」が大きく勝敗を左右していたが、TCではそれに加えて周辺の役の戦況、言わば「地盤」も戦況を左右する重要なポイントとなった。

倍率の増加、振い落としの発生

 TBまでは39人で15役を争う、倍率2.6倍の戦いだったが、TCではその倍率が約3.5倍にまで高まった。つまり各役に対して平均3.5陣営が立候補するという混戦となった。実際、バスターブレイド役は7陣営が立候補する大混戦となった。

 ところで、選挙において有名な法則として、デュヴェルジェの法則(Wikipedia)というものがある。簡単に言えば、定数1の選挙では2位までにしか票が集まらないという法則である。記事内では202人が立候補した村長選挙が例として挙げられており、それでも3人のみに票が集中する結果となっていて興味深い。

 さて、デュヴェルジェの法則は開票時に票数が明かされる通常の選挙における法則だが、リアルタイムに票数が開示されていたTCでは、この傾向がより顕著だったと考えられる。つまり、3位以下の陣営は勝敗に絡む確率が非常に低いとみなされ、浮動票がほとんど入らなくなってしまう

 投票の序盤では、浮動票がほとんど取り込めない中で自陣営の票のみを積み上げるのが基本となるが、そもそもの陣営の人数が少ないと1,2位に入り込む事が出来ない。すると3位以下となり、浮動票を取り込む事ができず、1,2位の背中がより遠くなってしまう。このような悪循環となり、陣営のモチベーションが低下し、票が伸びずに事実上脱落となる。

 この事はTBでも起こっていたが、倍率が高まったTCにおいてはより顕著に発生した。どんなに倍率が高まっても2位以内に入らなければ勝負の土俵には立てないため、役の適正・戦略や宣伝の巧拙以前に、陣営の人数の少なさによって敗北に追い込まれた陣営が多数発生した。バスターブレイド役はもちろん、4陣営が立候補した少女役・妖精役にも顕著だった。特に規模の小さい陣営は、このような倍率の高い役を避けて最後まで戦い抜ける役を選択できたかも勝敗を分ける大きな要因となった。

各選挙区の振り返り

 公式の最終結果はまだ発表されていないが、以下の結果はmatsutihi.me様で公開されている速報値を元にしたものであり、不正票の除外による順位の変動は発生しないことを前提として書いている。もし結果が変わってしまったら笑って許して欲しい。

孤島サスペンスホラー

願いはバズワードに託されて —— 主人公・野々原茜(初当選)

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 開戦直後、コンベンションセンターに書き込まれた「茜ちゃん絶対に島流しにするからね ...」というコメントがハッシュタグ化されるや否や、12時間後にはTwitterで国内トレンド1位を獲得し、無関係の一般茜さんまで恐怖のドン底に落とした野々原茜陣営。初日の勢いのまま票を伸ばし続け圧勝。辛酸を舐めさせられ続けたキャスティング投票で初の栄冠を獲得した。

 全52陣営で唯一、スタートダッシュに完全に成功した陣営と言っていい。ただし、これはハッシュタグインパクトによるものだけではないと感じている。

 実は、野々原茜陣営は当初、友達役への立候補を考えていた。彼女自身のキャラクターやコミュの中で演じているバイプレーヤーっぷりから、友達役が最も似合うとなるのは自然な流れだろう。しかし、どこかからか「せっかくの投票企画なんだから、サポート役に回ることの多い茜ちゃんにセンターをやらせてあげたい」と言う声が生まれ、その声が次第に陣営内で大きくなっていった経緯がある。投票開始直前までどちらの役を狙うのかかなり微妙な情勢だったが、開戦直後に主人公役に票が集中、結果一丸となって主人公役に舵を切ることになった。この勇気が大きかった。ハッシュタグがバズる中、それと共に陣営の勇気と願いが拡散され、それが大きな共感を呼ぶ。その結果、最序盤から浮動票の獲得に成功し、本来茜陣営が持つポテンシャルを遥かに上回る票数の獲得に成功することで、序盤から圧倒的優位を形成することに成功したのだった。

 もし仮に目指す役が友達役だったならば、勝てなかった可能性はかなりある。ハッシュタグは偶然の産物であり、バズったのは時の運だが、それが票数として結実するには「この夢に自分の票を託したい」と思わせる事が必要不可欠だ。主人公役を目指すと言う勇気を持った決断が最大のファインプレーであり、最大の勝因だった。それにしても、TB選挙で最も適役だと思われたネコ役で勝負の土俵にもたてなかった茜が、主人公役で圧倒的支持を得て1位を獲得すると言うことが、キャスティング投票企画の特殊性を表している。

 この状況では競合陣営はひとたまりもない。佐竹美奈子陣営も最初から主人公役に狙いを定めていたのだが、一斉投票で思うように差を詰めることができず、そのまま逃げ切りを許してしまった。茜に圧倒的支持が集まる状況では浮動票の獲得も見込めず、また陣営の士気を保つことも難しかっただろう。美奈子陣営にとっては不幸な事故だった。

 そして問題の田中琴葉陣営。ここも開戦前から主人公役に立候補予定だったが、茜陣営がバズったことにより陣営が大きく動揺し恐慌状態に陥る。「茜ちゃん相手にする上に、TBと似たような役を狙いに行くのでは勝ち目が無いのでは」との声が大きくなり、ファイナルデイ役への転向を模索する派閥が現れるが、あくまでも主人公役を目指す派閥との対立が激化。1週間以上の対立の末ついに意見はまとまらず自由投票となり、事実上選挙戦から撤退した。

 まず一般的に、一度行われた意思決定を撤回するのは非常にリスキーだ。主人公役を目指すという意思決定はある程度多数の合意のもと行われたものであり、それを覆そうとするのは当然高コストである。さらに、主に議論が行われたコンベンションセンターは実質匿名掲示板であるため、どれだけの人数がファイナルデイへの転向を主張しているのか、誰にも全く分からない状況だった。人数的な裏打ちもないまま、意思決定を覆すという非常にリスキーな判断をするよう説得する事は非常に難しく、その状態でもなお強硬に転向を主張するものなら、議論が完全に紛糾するのも当然のことだ。「何故コンベンションセンターが崩壊したのか」という点に焦点を当てた振り返りも多く見られるが、そもそも無理矢理にファイナルデイ役への転向を図った事が大きな間違いだった。

 そもそも、琴葉陣営ほど規模の大きな陣営が、事前に役を決めてスタートダッシュを決める必要はあったのだろうか。元々スタートダッシュ戦法は、TAで母数の少ないロコ陣営が編み出した、電撃戦で役を確保するための戦法であり、いわば弱者の戦法だ。規模の大きな琴葉陣営がこの戦法を採用しても、そして準備期間がどの陣営にも平等に1週間与えられ、どの陣営もスタートダッシュを決めることのできたTCでそれを行なっても、メリットはほとんど無いのではないか。逆に陣営の大きさを生かして、選挙開始1〜2日後ぐらいに戦況を加味した上でどの役を狙うのかコンセンサスを取った方が、他陣営の予想外の躍進による事故を回避できるのではないだろうか。

 TCを経験した上での私見だが、ロコ陣営が確立したスタートダッシュ戦法の神話は、ここに至って完全に崩壊したと考えている。スタートダッシュ戦法はかなりリスキーであり、役を決定する意思決定のタイミングは可能な限り遅らせた方がいいのかもしれない。果たして、TDにおいて我々はスタートダッシュを決めるべきなのか。バスターブレイド役を勝ち取った美希陣営の事例とも合わせて考えたい。

友達は多い方が楽しいよネ! —— 友達役・島原エレナ(初当選)

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 友達役は序盤からエレナと奈緒の一騎打ちに。中盤までほぼ互角の票数で推移していたが、一斉投票でつけた票差をそのまま維持したエレナが終盤まで押し切っての逃げ切り勝ちを収めた。

 とにかく無風だった。友達役に投じられた票数は、ベルベット役に次いで全役中2番目に少ない。そもそもの役が「主人公の友達」であるわけで、そのイメージはどうしても主人公ありきのものになってしまう。立候補した陣営もイメージの確立に苦労していた事が見受けられたし、そうであるならば票を握る有権者も、イメージがつきにくいこの役に票を投じる意味が薄くなってしまう。その上さらにシアター組同士の対決という事もあり、注目度はますます下がる。つまり、この友達役は完全なる地力対決の様相を呈していた。

 興味深いのは、その地力対決でエレナが勝利を収めた事。奈緒はTBで勝利を収めたのに対し、エレナはそのTBでは勝負の土俵に上がることすらなく惨敗していた。この二人の対決となれば、奈緒が勝利まで行かなくても、もっと接戦になってもおかしくない。にも関わらず、奈緒陣営は数度の一斉投票を行いながらいずれも5万票以下の得票数に留まっているのに対し、エレナ陣営は一度の一斉投票で約10万票を獲得、そのまま押し切って勝利を収めた。何故か。

 おそらく、TBを勝利したことで奈緒陣営は縮小し、そして敗北したエレナ陣営は拡大した。そして生まれた地力の差が結果に直結したのだろう。つまり、TBで勝利した奈緒陣営のかなりの部分の人々が、TCでは未当選のシアター組、あるいはAS組の陣営に加わったのではないか。エレナ陣営にも逆のことが言えるだろう。ミリオンライブは52人全員の箱推しコンテンツとしての側面もある。誰か一人を推すというよりも、複数人、あるいは52人全員を推している人も大勢いるだろう。その人達が、これまで勝利した事のある陣営には加わらず、推しの中でまだ未当選の陣営に合流しようとするのは、考えてみれば当然のことだ。TDでは育や未来を応援しようという人、結構多いのでは。

 これまでは「未当選アイドルが強いのは浮動票を取り込めるから」と思っていたが、この考えはちょっと違うかもしれない。未当選アイドルはそもそも強いのだ。無風状態という、TCの中では特殊な状況となった友達役戦だったが、キャスティング投票選挙の興味深い一面も伺えた戦場だった。

どっちの先生が好き? —— 先生役・桜守歌織(2年連続2回目)

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 先生役ならばこの2人のマッチアップに決まっている。メガネをかけた鬼軍曹、キッチリカッチリテキパキ仕事をこなし、叱る時はガミガミ叱る。でもちょっと自分に自信がなかったりして等身大の少女の姿を時々覗かせる系先生の秋月律子19歳。対するは元音楽教室の先生で子供と遊ぶのが好き、少し天然が入っているほわほわ系お嬢様先生の桜守歌織23歳。結果は、終始優勢を保ち続けた桜守歌織陣営の勝利だった。

 「宣伝やダイマは律子陣営の方が頑張っていた」と言われていたが、実際その通りだと思う。律子陣営はTCで最も活動的な陣営の一つで、様々な企画の実行に加え、ニコニコ動画のへの動画投稿も行なっていた。それが何故TB当選というハンディキャップを背負っていた歌織陣営に負けたのかと言えば、単純な陣営の数の差としか言いようがない。また、孤島サスペンスホラーの役が全てシアター組優勢であり、シアター組の「地盤」が出来ていた事も大きい。例えば、選挙戦当初から優勢を保っていた茜・志保陣営にとって、先生役立候補の2人は「自分の担当アイドルを共演させる候補」となるため、仮に浮動票となって先生役に票が流れ込む場合には、同じくシアター組でありよく知っている歌織に票が集中する事が考えられる。

 一応、律子陣営の宣伝手法にも触れておきたい。ニコニコ動画への動画投稿は、残念ながら宣伝効果はほとんどないと思われる。TwitterではRT等で自分の興味のない分野のツイートが多数流れ込んでくるが、ニコニコ動画では意識的にクリックしない限り動画を閲覧する事ができない。つまりそれらの動画は律子陣営以外にはほとんど閲覧されない。仮に同じ動画をTwitterで流したとしても、一目で情報が飛び込んでくる画像と違い、動画は興味を持って見続けなければならない。自陣営のモチベーション向上には有用だが、動画は他Pへの宣伝には圧倒的に不向きだ。

 また、一斉投票企画「いっぱいいっぱい投票」は律子の持ち曲「いっぱいいっぱい」に由来するものだが、シアター組Pと思われる人が「律子陣営が本当にいっぱいいっぱいの状況なのかと思った」と思ったという、笑えない笑い話もある。ミリシタからアイマスに参入したPは、AS組の事をほとんど知らない。それらの浮動票を取り込むためにどのようなアプローチを取るのか。非常に難しい課題だが、AS組Pにとっては向き合わなければならない課題だろう。

 ただまぁ正直、これが律子陣営の敗因だとは全く思っていない。例えば春香陣営の「#ヴぁいナルディ」等をはじめとするハッシュタグなんかは、シアター組Pでは意味が分からない人がほとんどだと思う。にも関わらず春香陣営は圧勝しているわけで、この辺りから宣伝の巧拙は勝敗にほとんど影響しなかったのではないかという疑惑が生まれてきてしまう。正直どの陣営の勝敗も、対戦の構図や票集めの戦略なんかで説明がつくことがほとんどなので、この記事でも宣伝内容についてはほとんど考察していない。

そのハナ差は永遠 —— 女主人役・二階堂千鶴(初当選)

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 ここがTC最大の激戦区になると誰が予想しただろうか。AS組屈指の人気アイドル・00年代のツンデレシーンを牽引した財閥令嬢・水瀬伊織と、過去のキャスティング投票で箸にも棒にもかからなかった商店街セレブ・二階堂千鶴が正面衝突。中盤から終盤にかけては伊織陣営が優勢を保っていたが、1月18日10:28の千鶴側定時投票で逆転したのを契機に全面抗争に発展。ラスト24時間で両陣営に約200万票、特にラスト1時間では約110万票というとんでもない票数が流れ込む戦場となった。数百票程度の小さな差で数十回もの首位交代を繰り返した果てに、終了間際に千鶴陣営が約17000票の差をつけて終戦。速報段階だが、勝利の栄光は千鶴陣営に輝くこととなった。

 TCの千鶴陣営と言えばそのコンベンションセンターだろう。エセお嬢様言葉を使いながら、大喜利パワーワード、よくわからないノリ、生活に役立つ知恵が飛び交う、52あるコンベンションセンターの中でも最もヤバい愉快な雰囲気となっていた。

 これらの様子はスクリーンショットとしてTwitter上で拡散されており、「なんか千鶴陣営面白いことやってんな」と多くのPに思わせることに成功した(意図したものかどうかはわからないが)。強大な伊織陣営に立ち向かうためには浮動票をより多く取り込む事が絶対条件だったが、千鶴陣営は選挙開始直後から、浮動票獲得のための地盤を固めていた事になる。

 それだけではない。主にDiscord上で緻密な戦況分析を行い、そして各投票企画の名称・日時・方法・そして実施の目的に至るまで会議を行って決定、それをコンベンションセンターに提案する事で千鶴陣営全体としてのコンセンサスを得ていた。コンベンションセンターヤバさ愉快さばかりクローズアップされがちだが、千鶴陣営は最も頭脳的な選挙戦を展開していた陣営の一つだ。浮動票の数はおろか、相手陣営の規模も、そして自分の陣営の戦力も分からない不完全情報ゲームであるキャスティング投票において、「現状を出来るだけ正しく把握し、コンセンサスを得てから戦略を考える」というアプローチは、勝利に向かうための大きな一手だろう。

 その他、千鶴陣営の戦略や動向については以下の記事が詳しいので、参考にしていただきたい。

mokewo.hatenablog.com

 そして接戦に持ち込まれた女主人戦。最終的な票差は約17000票であり、惜敗率は99%を超えの、文字通りハナ差、紙一重の決着となった。惜しくも敗れた伊織陣営の敗因は何なのだろうか。最終盤のダイマが力不足だったのだろうか? それとも時の運だろうか? そのどれでもない。接戦に持ち込まれた段階で伊織陣営の敗北はほぼ決定していた。

 数十回もの首位交代が発生した女主人戦の最終盤戦だが、実際には千鶴が1位となっていた時間帯の方が長く、伊織が抜いてもすぐさま千鶴が抜き返すような状況。つまり千鶴を1位へと動かす力の方が強く働いていた。接戦のように見えて、実は千鶴陣営が終始優勢だったのだ。数百票差でずっと推移してきた最終盤戦で、いきなり1万票以上の差が付いて終戦したのが何よりの証拠。伊織陣営が追いつくのに必死だった一方、千鶴陣営は余力を残していたのだ。

 最終盤戦ともなると、投票される票はそのほとんどが浮動票。つまり、浮動票層は千鶴の方に多く味方していた。それは何故だろうか。それを紐解く鍵が以下の分析にある。

 ラスト2日間、伊織のコンベンションセンターに書き込まれた支援票メッセージから、書き込み者の担当アイドルを集計しグラフ化したもの。当然、この結果が実際に投じられた票数に直結しない事は確かだが、それでも、コンベンションセンターへの書き込みと投票数には、かなりの相関性がある事は推測できるだろう。

 これを見てみると、メッセージを書き込んだ人の55%はAS組P、「不明」を除外して考えると、実に68%がAS組Pである。いかにAS組に人気アイドルがいるとはいえ、52人中13人しかいないAS組のPの母数は、シアター組Pの母数よりもずっと少ないはず。その中でこの割合となっているという事は、浮動票層となったAS組Pは伊織の方に投票した傾向が強く、逆に言えば母数で勝るシアター組Pは伊織陣営にほとんど投票しなかった。千鶴コンベのデータは無いのだが、おそらくこのデータと逆の事が起こっているだろう。つまり、伊織陣営はAS組であるがゆえにシアター組Pの票を取り込めずに敗北した。AS組Pとシアター組Pの対立構造が伊織陣営にとって致命的な影響を及ぼしてしまったのだ。付け足して言えば、この時点で孤島サスペンスホラーの他の役は全てシアター組優勢だったため、それら優勢陣営の持つ浮動票が同じシアター組の千鶴陣営に取り込まれてしまった可能性もある。

 長々と書いてしまったが、伊織陣営の敗因は「接戦に持ち込まれた」こと。接戦を落とした敗因はダイマの質やスピードとは関係なく、ただ「AS組だった」こと。理不尽なことと思われるかもしれないが、接戦に持ち込まれて勝敗を浮動票に委ねた場合、その勝敗はほぼ確実に「当選回数」や「所属」などの属性によって決定される。締め切り間際に投票するような浮動票層が、各陣営の主張やダイマの内容など、事細かく比較して検討している訳は無いからだ。接戦に持ち込むべきか否か、自分と相手の構図を客観的に見て検討することが必要だろう。後知恵だが、伊織陣営は最終盤戦の開始までに、千鶴陣営に10〜20万票の差をつけておくことが勝利の最低条件だった。

無冠の女王、悲願の戴冠 —— メイド・北沢志保(初当選)

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 これまでの選挙で接戦を演じるも敗北、悔し涙を流し続けてきた北沢志保陣営。序盤では高槻やよい陣営との鍔迫り合いが続いていたが、フェス限SSRが実装されたのを契機に差を広げていく。最終的には全役中最小となる46%の惜敗率で圧勝。悲願の役獲得を果たした。

 何とも、勝利への執念が感じられる戦いだった。志保陣営は当初、メイド役・少女役・ダスク役との間で意見が割れていた。「絵本が好き」という志保のことを思うのならば、おとぎの国の物語の主人公、少女役を狙っても良かったのかもしれない。しかしメイド役に舵を切ったのは、他Pが抱く志保のイメージに合わせた役を狙うことで、浮動票を獲得するという戦略もあったのだろう。結果的に少女役・ダスク役は大激戦となった訳で、勝利を目指す上でこの選択は正しかった。

 フェス限実装以降は終始地力の違いを見せつけてやよい陣営を圧倒していたが、その状況でもラスト2日間で50万票を獲得するという念の入れよう。恐ろしいばかりの勝利への執念であると同時に、もしこの戦闘力を誇る志保が、少女役やダスク役に殴り込んでいたらどんな戦いになっていただろう.... というifの戦史も気になってくる。

 逆に、高槻やよい陣営はこの地力の差を跳ね返すことができなかった。このシリアスな役を、いつも元気一杯のやよいが何故演じるのか、と言う点での訴求力が少し足りなかったという面もあるのかも知れない。ただ、相手が悪かった点も大きく、やよいもアイマスを13年間引っ張ってきた人気アイドルな事には間違いない。TD以降の活躍に期待しよう。

おとぎの国の物語

熾烈な競争の果てに —— 少女役・箱崎星梨花(2年ぶり2回目)

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 4人、しかもメルヘンチックな物語の主人公としてはピッタリな4人ばかりが集まっての大混戦となった少女役戦。クリスマスの頃から雪歩と星梨花が抜け出す形となったが、星梨花が徐々に差を広げる一方、雪歩は最終盤の一斉投票に望みを託す。一斉投票後、その差は一気に縮まったが手は届かず。雪歩陣営の急追を凌ぎ切って、星梨花陣営は15人中唯一となる返り咲きでの勝利を収めた。

 星梨花陣営の強さはさすがだが、一方で、正直雪歩陣営は運が悪かったとしか言いようがない。確かに星梨花陣営はかなりの強敵で、さらにTBで接戦を落とした事からも、陣営としてかなりパワーアップしていたはずである。それでも雪歩はAS組の中でも人気アイドルであり、実際の得票数推移を見てもほぼ互角。陣営の規模は星梨花陣営に分があるにしても、その差を逆転できるポテンシャルは十分に持っていた。戦術としてもほぼ完璧に近く、終盤戦に入ったあたりから星梨花陣営が徐々に差をつけていくのを、無理に追いかけず最後の一斉投票に全てを賭ける形としていた。彼我の戦力差を見てもこれは妥当な戦術であり、一斉投票で抜けないまでも差を詰めることが出来れば一気に浮動票を呼び込むことができ、この時点でほぼ勝利はほぼ手中に収まる、はずだった。

 誤算だったのは、女主人役・魔法使い役がそれ以上の接戦となってしまったこと。伊織陣営の例を汲めば、雪歩陣営に投じられるはずの浮動票の大半はAS組Pが持っているはずだ。しかし、女主人役も魔法使い役もどちらもAS組が絡む対決であり、AS組Pの持つ浮動票は、少女役よりも接戦の女主人役と魔法使い役に向かってしまった。取り込めるはずの浮動票が奪われてしまったのである。

 ここに、浮動票を取り込む戦略の難しさがある。浮動票を持つ立場からすれば、自分が票を投じることによる影響力を最大化したい。つまり、出来るだけ接戦の陣営に投票したい。「接戦」と一言で言ってもそこにはグラデーションがあり、この戦場よりももっと接戦のところがあれば、浮動票は簡単にそちらに行ってしまうのである。浮動票を呼び込むためには、「この戦場が一番の接戦」であることを、数字上でも雰囲気でもショーアップしなければならない。浮動票を握る有権者の前では、我々はショーケースに並べられた商品だ。隣のアイテムよりも魅力的であることもアピールしなければならない。

 なお、このように「自分の好きなアイドルに投票するのではなく、出来るだけ自分の票の価値を最大化するために票を投じる」ような行動を、専門用語で「戦略投票」という。キャスティング投票も3回目を迎えたところで、参加者もルールを把握し、情報収拾も上手くなり、そして戦略投票を行う割合がかなり大きくなってきた。最終日の女主人役・魔法使い役の異常な推移がその証左ではあるが、TDではこの傾向がより強まることが予想される。それを踏まえ、戦略投票を行う層にアピールするために、TDでは我々はどのように立ち回るべきか... ゲーム理論でも勉強すればいいのだろうか。

 ところで、ひなた陣営と育陣営は、12月25日までの星梨花陣営と雪歩陣営の一斉投票で大きく水を開けられ、その差を縮める事ができなかった。両者とも少女役にぴったりだと思うが、単純な地力では上位とは大きな差があり、振るい落とされてしまう結果となった。TCの残酷な面が顕著に出た形だが、そもそも「少女役」はユニークなアピールを打ち出しにくい。その結果各陣営とも似通ったアピール方法となってしまい、差別化して浮動票を集めようとすることも難しかった。この辺りの事は育陣営に所属されていた方が詳しく分析している。

nktn19.blog.fc2.com

 陣営の母数がなければ勝負の土俵に立てない厳しい勝負。果たして、母数が小さい陣営はどうすればいいのだろうか。育陣営がTC期間中運営していたアカウントがあるのだが、そのアカウントはTCが終了した現在もなお更新を継続している。「中谷育」というアイドルについて、少しでも注目を集めるためだ。

twitter.com

 TDに向けた戦いはもう始まっている。  

踏み台は揺るがない、磐石と貫禄の3連覇 —— 妖精・周防桃子(3年連続3回目)

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 「過去に役を獲得したアイドルは不利」——その定説を打ち破り、四つ巴の中で周防桃子陣営が妖精役の1位を獲得。TA・TB・TCと無敗の三冠を達成した。当初は矢吹可奈・白石紬に先行を許したものの、1/1の一斉投票で首位を奪取、そのまま得票数を積み重ね、首位独走でゴールインした。

 強い。とにかく周防桃子陣営の組織力は高い。Twitterで検索しても、ダイマ画像や一斉投票告知画像のRT数が群を抜いており、人数の多さと選挙にかけるモチベーションの高さが伺える。この磐石の組織力が、周防桃子陣営の強さであり、最も大きな勝因であろう。TD以降も、この地盤を突き崩すのは容易なことではないかもしれない。

 しかしながら、既に2連覇を果たしていた桃子陣営へは大きな向かい風が吹くはずだった。その吹くはずだった風が吹かなかったことが桃子陣営の大きな勝因となるのだが、これは紬陣営の果たした役割が大きい。実は白石紬陣営は当初目指す役がまとまらず、12/26にようやく妖精役で一本化、参戦を決定した経緯があるのだが、これが桃子陣営にとって大きな追い風となった。

 当初は3連覇を目指す周防桃子と、初当選を目指す矢吹可奈・春日未来という構図になっていたが、白石紬陣営が参戦を表明したことによって桃子vs紬という構図に入れ替わってしまった。結果、1/1の桃子陣営の一斉投票後に可奈・未来の両陣営が3位以下に転落。浮動票を獲得できないことに加えて陣営の士気も低下。この時点で可奈・未来の両陣営は脱落してしまった。

 そして桃子vs紬の構図だが、両者ともTBで当選しているため、この構図では戦況に積極的に介入しようとする浮動票の動きが弱くなり、注目度が低下。両陣営の地力勝負の展開となった。地力勝負ならばTB最多得票の紬陣営には持ってこいの展開だ。ここで激しい鍔迫り合いが行われる... かと思われたが、紬陣営の票が伸びず終始劣勢。まんまと逃げ切りを許してしまった。何だかピタゴラスイッチみたいだが、大まかに言うとこんな流れである。

 では何故紬陣営の票は伸びなかったのだろうか。意思決定と参戦が遅れたのはTBと同様なのでここが敗因ではない。しかし、今回の紬陣営は、意思決定に多数決を用いていた。ここが大きな敗因である。

 どうやらコンベンションセンター内でそれぞれの役についてのプレゼンが行われ、その後どの役を目指すかについてアンケートが行われるという、極めて民主的な手法を採用したらしい。結果、半数強の支持を得て妖精役へと一本化された訳だが、この段階で妖精役へ舵を切ると、半数弱の意見を切り捨ててしまう。つまりこれを契機に陣営を離れていく人も出てくる訳で、自陣営が大きく弱体化する。票数が伸びなかったのはこのことが大きい。

 基本、多数決は悪手である。ウィンストン・チャーチルも「民主主義は、民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば最悪の政治形態だ。」と言う言葉を残しているし、実際、多数決が最良の方法ならば、国会は毎日平和なはずだ。多数決は最終手段の一つであり、多数決を選ばなければならない状況に追い込まれるということは敗北が近いということだ。そうなる前に何かしらの手を打たなければならない。

 それでは、意見が割れた時にはどのようにして意思統一を行えばいいだろうか。最良の方法は陣営全員が統合思念体となって1つの役を目指すことだが、次善の方法は少数のカリスマが素晴らしくインパクトのあるアイデアを打ち出し、陣営全体がそこに向かうように仕向けることだ。とても難しいように思われるかもしれないが、それを実現したのがTBでの白石紬陣営である。いわば、そのカリスマの欠如が紬陣営の敗因と言えるのだろう。

 とはいえ、現実には万人が納得するようなアイデアはそうは出てこない。最後まで足掻くことも重要だが、現実的には、陣営内で意見が割れた段階で敗戦を覚悟することが必要なのかもしれない。

涙の数だけ強くなれる —— 魔法使い・徳川まつり(初当選)

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 まるで2003年の天皇賞(秋)ローエングリンゴーステディの自爆覚悟のハナ争いを再現しているかのような、そんな暴走気味の超ハイペースで票を積み重ねていった徳川まつりと四条貴音の両陣営。TC選挙の中でも有数の激戦区となったのだが、制したのは過去2度の選挙で2位となり涙を呑んできた、徳川まつり陣営だった。

 まつり陣営の勝因は一つではない。まず一つに統率力。特に1/8に実施された一斉投票では19分間で22万票以上を叩き出し、TC選挙の中でも最も威力のある一斉投票となった。これに限らず、まつりは3度の一斉投票で全て首位交代を成功させており、陣営内外の士気を高いレベルで保持させていた。

 無論、これらの一斉投票はまつり陣営だけの票によるものではない。まつり陣営が過去2度惜敗していたという事実はよく知られており、「今度こそ」と言う意識はまつり陣営以外にも広がっていた。つまり浮動票を取り込みやすい下地が整っていたのだが、まつり陣営は「はい砲」「わんだ砲」等のキャッチーなフレーズで一斉投票を企画し、票を投じやすくすることでチャンスをしっかりとモノにしていた。実際、まつり陣営の選挙活動は非常に活発だった印象があり、イラストや宣伝画像も多く投稿されていた。3度目の正直にかける思いの強さと、それを実現させるためのクレバーさが結びつき、大きな結果につながった。

 一方の貴音陣営は健闘むなしく敗北を喫する事になった。お互いハイペースの競り合いという戦術を選択したのだが、これにより選挙区の注目度は高くなるものの、浮動票は過去2度惜敗のまつり陣営に若干傾き、つまり貴音陣営の体力の方が多く消費されてしまった。また、両者ともに3度の一斉投票を実施しているが、そのいずれも貴音陣営が先行を取っている。つまり、まつり陣営に目標を与えると共に、首位交代による士気向上の効果も与えてしまった。最終日の浮動票流入も女主人役と並んで非常に激しかったのだが、それでもリードを奪えなかったのは、概ね女主人役・伊織陣営と同じ要因となる。

 惜しくも敗れてしまった貴音陣営。しかし、この敗北は決して無駄ではない。TDではこれを糧にして、さらに強くなって戻ってくるだろう。それ以上に、貴音コンベンションセンターを通してミリシタPオススメのラーメン情報のデータベースが成立したことが大きい。ありがたく利用させていただきます。

ハマり役? それとも —— オオカミ役・我那覇響(初当選)

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 オオカミ役ならばこの二人のマッチアップになるに決まっている。765プロが誇る野生児、我那覇響と大神環の対決だ。序盤はやや拮抗していたが、12月23日の一斉投票で響陣営がリードすると、そのままリードを広げての完勝だった。

 少女役と似たような分析になる。二人ともあまりにもイメージそのままなため、差別化がしにくく地力がモノを言う勝負となった。さらに環はTAで役を獲得しているため、浮動票から見ると、どうせなら響の方に投票しようという意識が強く働くはず。似合う役だからといって、それが自陣営に有利に作用するとは限らない。オオカミ役は環陣営にとって罠だった。ハマり役そうだからといって安易に飛びつかず、勝つ見込みのある勝負なのか吟味することも大事だろう。

 イメージそのままの配役を狙った二人とは対照的に、意外性を突いてきたのが百瀬莉緒陣営。しかし、765プロ唯一の肉食系女子がオオカミ役を演じるというのは説得力があるし物凄くいいアイデアだったと思う。意思統一がもっとスムーズに出来たなら、響陣営の強力な対抗馬となった可能性もある。惜しい...

ヒットかゴロかホームランか、振ってみなければわからない —— 旅人役・永吉昴(初当選)

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 TA当選アイドルの北上麗花、未当選の永吉昴、AS組の三浦あずさ、そしてロコというバラエティ豊かな面々による対決。途中まで3位に甘んじていた昴陣営が、1/1の一斉投票により12万票以上を獲得する特大ホームランを放ってからは昴陣営と麗花陣営の一騎打ちに。地力の差で麗花陣営が引き離すものの、最終日に逆転、タイムリーヒットを放ってサヨナラゲームとし、昴陣営がこの接戦を制した。

 よく勝てたな... というのが正直な感想。得票数推移を見ても、ここで敗北が決まってもおかしくないようなタイミングがいくつもある。そう考えると、今回のTCで不可能を可能にしジャイアントキリングを成し遂げた唯一の陣営が永吉昴陣営なのかもしれない。

 まず麗花陣営が思ったよりも強かった。TBで敗北したことにより、TA勝利による陣営弱体化が打ち消されたのかもしれない。それに加え、人気ユニット・4Luxuryのメンバーとして「花ざかりWeekend」の歌唱やコミュに登場したり、「brave HARMONY」でもポイント報酬となったり、そしてTC開幕直前でのSSR実装されたりと、2018年は麗花が露出する機会が多くあった。そこに麗花自身の強烈なキャラクターが合わさり、麗花はこの一年で非常に多くのファンを獲得していたのかもしれない。対して昴は(止むを得ない事情ではあるが)7月の「Blooming Star」以降、目立った露出が無かった。

 それに加えAS組からあずさ陣営も参戦したことで、昴陣営はますます厳しくなる... と思っていたのだが、潮目が変わったのは1/1の一斉投票「新春特大ホームラン」で12万票以上を獲得して1位を奪取してから。昴陣営はここまで一斉投票企画を行っておらず、その上この時点で3位に位置していたため、まず昴陣営のモチベーションが維持されているのか心配になるほど極めてリスキーな状況だった。そんな中でここまでの票を積み上げたインパクトはかなり大きく、昴陣営ここにありを示すことの出来た、旅人役戦での最も大きなターニングポイントと言える。

 昴陣営はその後、最終日の一斉投票で浮動票を取り込む戦略を取るが、ここも女主人役・魔法使い役が極めて高いレベルで競って注目を集める中で、「この旅人役自体が浮動票を取り込めるのか」という点で非常にハイリスクな戦略だった。正直、ここで昴陣営が勝てた理由ははっきり分からない。それくらい、昴陣営はこの戦いで危険な橋をいくつも渡っていたし、一歩間違えればどころか、何も間違えていなくても負けていた可能性すらあった。様々な不利な条件が重なった中で勝利を掴む事が出来たのは、正直奇跡と言っていいと思う。

 しかし、勝てた理由はわからなくても、負けなかった理由はわかる。それは、昴陣営は諦めなかったからだ。開戦後10日間、3位が定位置となってしまっては陣営のモチベーションはいつ枯渇してもおかしくない。それでも一斉投票で12万票積み上げたのは、それだけ陣営に諦めていない人、勝利を目指し続ける人が大勢いたからだ。どんなに不利な状況でも、自分達と自分のアイドルを信じ、行動し、票をつぎ込む決心をした人が大勢いたからだ。その行動は、もしかしたら無駄になるかもしれない。その労力を惜しみ、票が死票になるのを恐れて勝負の場から去ってしまうのも、人間の感情として仕方がない。しかし、バットを振らなければホームランを打つこともできないのもまた事実である。勝つための最低条件は、試合終了まで打席に立ちつづけることだ。

近未来アウトサイダー

その強さ、正にインフェルノ —— ダスク役・如月千早(初当選)

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 AS組の中でも屈指の人気を誇る如月千早と、TA・TBと過去二連覇を果たしている真壁瑞希のマッチアップ。千早陣営が「無尽投票」と称して常に票を積み上げ続ける戦法を選んだのに対し、瑞希陣営は一斉投票をベースにして浮動票を取り込むという真逆の戦法を取った。注目の対決となったが、千早陣営が終始圧倒、最終的には瑞希陣営に40万票以上の差を付けて圧勝した。

 蓋を開けてみれば、52陣営中最強だったのは千早陣営だった。接戦であればあるほど票数が釣り上がる傾向があるのがキャスティング投票企画だが、大接戦だった女主人役が約173万票で決着しているのに対し、千早陣営は終始優勢だったのにも関わらず156万票を獲得している。近未来アウトサイダー全体がAS組の地盤だったこともあるが、ここまで票を積み上げられるとそういう次元ではない。率直に、どの役に行っても、誰が相手でも勝てたレベル。

 母数が多ければ士気も非常に高かった。ダイマ募集ツイートを見かければ矢のような速さでリプライを飛ばし、圧倒的なリードを形成しても決して油断することなく、最後の最後までファイティングポーズを崩さなかった。陣営のモチベーションを維持するための施策も申し分なく、千早の代表曲「蒼い鳥」の15周年記念として実施された一斉投票のカウントダウン企画として、千早の持ち曲を日替わりで語り合うという企画は、シアター組Pから見て羨ましくなると同時に、一斉投票を盛り上げる上でこれ以上ない素晴らしい企画だった。

 自分は瑞希陣営に所属して戦っていたのだが、千早陣営には虎牢関の呂布並にバチバチに士気の高いPがウジャウジャいるという印象だった。質量共に全く隙がない千早陣営に、負ける要素は何一つ無かった。千早陣営の各Pを褒め称えるほかない。

 なお、瑞希陣営の1Pとしての振り返り記事は後日投稿予定です。

ヒロインは遅れてやってくる —— バスターブレイド星井美希(初当選)

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 6人が犇めき合う超激戦選挙区・バスターブレイド。予測不可能な大混戦を制したのは、7人目の参戦者、星井美希だった。ベルベット役に向かうと思われた美希陣営だったが、開戦初日の夜に役柄を突如転向、一斉投票を行い圧倒的得票数でバスターブレイド役の1位に躍り出た。紗代子陣営の一斉投票により一時は首位を譲ったものの、その差も馬なりのまま縮め、1/5の一斉投票で逆転。その後は差を広げるばかりの圧勝劇だった。

 開戦から23時間23分後の本格参戦は、今回勝利を獲得した陣営の中でダントツに遅い。にも関わらずここまでの圧勝劇を繰り広げた美希陣営を見ると、果たして開戦直後のスタートダッシュは本当に必要なのかと思ってしまう。流石に3〜4日経過してしまうと遅すぎるが、美希陣営のように、ある程度出遅れても一斉投票を行う事で1位に立つ自信がある場合、開戦初日の夜ぐらいに戦況を俯瞰しながら役を決定するというのが最適の戦略なのかもしれない。ここまで倍率が高いと、勝利のためには現実的に「誰が相手になるのか」も重要な要素となってくる。美希陣営はその対抗馬情報が出揃った状態で役を吟味することができたので、勝利に向けて大きなアドバンテージを確保できたと言える。

 また先述したように、美希陣営の動きはこのTC全体に大きな影響を与えたと言えるだろう。バスターブレイド役への参戦方法は良くも悪くも衝撃的だった。実際には、当初ベルベット役へ向かったように見えたのは少数のPの暴走によるもので、その後意思統一を行い改めてバスターブレイド役を目指す事となった、というのが真相であるようだ。しかし、初日で浮き足立っている各陣営が美希陣営の意思決定の過程など細かく観察しているはずもなく、多くのPの目には「真との戦いを避けて勝てそうなバスターブレイド役に乗り込んできた」と映った。特にシアター組Pが受けた衝撃は大きく、この時点では他の多くのAS組も1位に立っていた事もあり、これを契機に「AS組に役を全て取られてしまうのではないか」という警戒感が大きく広がっていった。美希陣営のバスターブレイド役参入は、結果的にAS組vsシアター組の対立構造の成立に一役買ってしまったのである。当然、美希陣営にそのような意図はなく、さらに役柄を転向したという事実そのものが無く、これは他のPの勘違いによるものだ。しかしこの状況では、そんな勘違いも起こるべくして起こったというべきもので、当時の各シアター組Pにこの状況を正確に把握しろと言う方が無理があるだろう。

 もし、仮にベルベット役に向かっていた場合、強大なAS組同士のマッチアップとなり、真陣営と美希陣営の持つ票は浮動票とならなくなる。つまり、春香陣営や千早陣営への支援票が大きく減っていた可能性がある。そればかりか、AS組Pの中でも美希派・真派に分かれてしまった可能性もあり、近未来アウトサイダーの戦況はより混沌としていたことだろう。現実には、美希陣営がバスターブレイド役に向かい首位を確保したことで、AS組陣営同士で票の支援ができるようになった。美希陣営は近未来アウトサイダーのAS組陣営にとってある種の橋頭堡となり、AS組陣営が盤石の勝利を収めた大きな要因となった。美希陣営は当然そんな意図は微塵も無いだろうが、こうして俯瞰して見ると、美希陣営の意思決定一つでTC全体に様々な影響が及ぼされている事がわかる。これがバタフライエフェクトなのだろうか。

(※2/19追記: 「AS組陣営同士で票の支援ができるようになった。」と記載していますが、ここでは「一斉投票の際に他のAS組陣営からの支援票が入りやすくなる」という程度の意味合いです。各陣営同士で連携しての組織的な行動を意味しているわけではありませんでした。)

 そんなバスターブレイド役戦だが、美希陣営の参戦により、6陣営のバトルロイヤルだったはずが、「美希vsその他」の構図となってしまった。この状況は紗代子陣営が一斉投票を行って「その他大勢」から抜け出すまで長く続き、結果、美希陣営の圧倒的優勢のイメージが強く根付いてしまった。浮動票を取り込むためにはまず2位にならなければならないが、混戦の場合は、いかに早く2位の座を決定的なものにするかも重要だろう。

蜃気楼の果てに咲いた一輪の花 —— アマリリス・エミリー(初当選)

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 あんゆり戦争再び。TA選挙で最多得票数を叩き出した七尾百合子・望月杏奈の両者による直接対決が再び行われたのだった。激戦の末、戦いを制したのは——TA・TB未当選のエミリー。下馬評を覆した大番狂わせだった。

 勝敗を分けたポイントは2つある。一つは1月8日0:00から開催された「エミリースチュアート生誕祭2019」。3位が定位置の苦しい戦いを強いられていたエミリー陣営は、開始直後の1時間で15万票を獲得し首位に立つ。日付が変わる頃には25万票、2位の杏奈には10万票以上の差をつけ形勢逆転に成功した。

 正直、なぜこの一斉投票が成功したのかはちょっと分からない。エミリー陣営は12月31日にも一斉投票を行なっているのだが、この時は約10万票の獲得に留まり、首位の百合子を捉えることが出来ずに終わっている。自分としては「首位交代のできない一斉投票は失敗」と思っていて、一斉投票が失敗した場合、陣営のモチベーションと浮動票へのアピール力が低下し、戦況が非常に苦しくなると考えていた。にも関わらず、2度目の一斉投票で大成功を収めることができたのは、もしかしたら「相手があんゆりだったから」かもしれない。大晦日の一斉投票では首位こそ交代できなかったが、そこでは「シアター組最強格のあんゆりと互角に戦えている」というムードが生まれていた可能性がある。それが、3位が定位置となってもモチベーションが下がることなく耐え続けられ、1月8日の一斉投票で浮動票を巻き込んで逆転した要因の一つかもしれない。合ってますかね? エミリー陣営からの補足お待ちしております。

 もう一つのポイントは1月11日、2位以下に甘んじていた杏奈と百合子の両陣営の一斉投票。ここでエミリーがどれだけの差をつけられてしまうのかが大きな焦点のはずだったが... 結果は両者とも不発。10万票弱の増加に留まり順位の変動は無かった。結局この事が決め手となり、百合子陣営は脱落、杏奈陣営はビハインドを背負ったまま終盤戦に突入し、差を詰められず敗戦となった。

 普通に考えて、この両者の一斉投票はあまりにも規模が小さすぎる。先日開催されたあんゆりイベントでは、上位ボーダーが最高記録を更新したわけで、2人の人気は52人の中でもトップクラスと言っていい。にも関わらず、票のストックが十分にあると思われる段階で、一斉投票で10万票弱しか集まらなかったというのは、この時点であんゆり陣営の規模が非常に小さくなっていたとしか考えられない。

 なぜ小さくなってしまったのか。一つは、友達役戦でも分析した通り、すでに勝利したことのある陣営なので、TCでは他の陣営に向かった人が大勢いた可能性。もう一つは、エミリー陣営が1月8日に浮動票を巻き込んで逆転したことにより、もうエミリーに勝ちを譲ってもいいのではというムードが広まった可能性。杏奈も百合子も既に役を獲得しており、なおかつ客観的に見て人気アイドルである。浮動票から大きな支持を獲得していたエミリーと戦うことに対して、かなり引け目を感じていた人がいたのかもしれない。その人たちが陣営を去ってしまった可能性がある。

 キャスティング投票選挙では当然、それぞれの陣営の人数は可視化される事はない。杏奈陣営も百合子陣営もエミリー陣営も、そしてTCに参加していた全員が、杏奈陣営と百合子陣営の規模を大きく誤解していた可能性がある。

鋼の意志を貫いて —— ベルベット・菊地真(初当選)

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 ベルベット役には菊地真・伊吹翼の2人が参戦。序盤から真陣営が先行する形で、翼陣営も一時は一斉投票で逆転するも、その1日後には倍の規模の一斉投票を行い一気に突き放す。その差は縮まる事はなく、真陣営が終始強さを見せつける形で圧勝した。

 まずは真陣営が分裂しなかったこと。周囲からは「カッコいい」を求められるが、本人は「カワイイ」を目指したいと言う二律背反が十数年間テーマであり続けた菊地真、そのPが目指す役を決める際には、その2つどちらを選ぶかで議論が紛糾することを予想していた。ところが、実際にはそうした混乱は発生せず、「カッコいい」側のベルベット役を一丸となって目指すこととなった。「カワイイ」側に真に似合いそうな役が無かったというのもあるが、慎重に議論を進めることのできた真陣営の人々の努力も、その裏にはあることだろう。そういえば、13陣営あるAS組はそのどの陣営も崩壊する事はなかった。平均年齢が若干高めなことにより、冷静で謙虚な議論を積み重ねることができたのだろうか。心当たりのある人々はこの辺りを見習うべきだろう。

 あとは一方的な試合展開となったので特に言うことがない... 真自身の人気に加えてAS組の地盤を背負っている陣営を相手にするのは、翼陣営にとっては荷が重すぎたか。しかし、この強敵相手にも50万票に迫る得票を達成することができた。これはTDに繋がる結果を残せたと言えるだろう。

試合を作ったイリュージョニスタ —— ファイナルデイ・天海春香(初当選)

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 ファイナルデイ役には、センターのはずなのに52人の中で悪役が最も似合う天海春香、そして悪役とは対極の位置にいるはずの宮尾美也の2人が参戦。美也陣営は終盤戦で6日間のロングキャンペーン「サンドイッチ作戦」を展開し、TB同様超ロングスパートによる差し切りを図ったが、先行していた春香陣営がそれ以上の末脚を発揮、そのまま押し切って栄冠を獲得した。

 改めて、TBで「38時間一斉投票」がなせ成功したのかを考えてみると、それは「これはもしかしたら追いつくことができるかもしれない」と言う期待感を内外に持たせられたから。あの時1位の志保陣営には大きな差をつけられてはいたが、じわりじわりと縮まる差に比例して、「追いつけるかもしれない」という予感が高まっていった。それが浮動票の呼び込みにつながって票数の伸びが大きくなり、またムードが高まって浮動票が入る、という好循環となっていたのがあの時の美也陣営である。

 対してTCでは、そのロングスパートは完全に封じられる結果となってしまった。これは春香陣営の作戦勝ちなのであるが、春香陣営の主な戦略は「美也陣営とは常に一定のリードを保つこと」。接戦になったら不利と見られている美也陣営の方に票が入ることが予想されるため、一定のリードを保つ。また一斉投票で票を伸ばすしぎてしまうと悪目立ちしてしまう可能性もあるので、これも抑制する。この春香陣営の動きはかなり精密で、確かに得票数グラフで美也陣営との差を見てもほぼ平行線となっているし、選挙期間中も春香陣営の一斉投票が話題になる事はなかったと思う。結果、ファイナルデイ役ごと目立たせなくなることに成功した。この辺りは以下のブログで解説されている。

stantonharuka.hatenablog.com

 こうなると、「サンドイッチ作戦」を展開しても一向に追いつけず、そもそもファイナルデイ役の注目度自体を下げられてしまったため、美也陣営は浮動票を取り込むことが非常に困難となってしまった。

 春香陣営は試合自体を巧妙にコントロールしていたという点で、勝った15陣営の中でも最も特殊な戦略を実行していた。正直、春香陣営ほどの規模であれば普通に戦っていても勝てたのではないかと思うのだが、これも少しでも勝率を上げるための策というところか。このように試合を作ることができるという点からも、キャスティング投票は陣営の規模が大きい方が圧倒的有利という事は、当然のようでいて改めて頭に入れておいた方がいい。