打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

こんな時だからフリースタイルダンジョンを勧めたい

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 フリースタイルダンジョンの進行役を務めるUZIが麻薬で逮捕。衝撃的なニュースでした。

 すでに収録されている分はUZI出演部分をカットして放送、その後は代役を立てて放送されることが決まり一安心...でしたが、"ラスボス"を務める般若が司会のZeebraをラップでdisる等、状況はあまりよろしくありません。

 ですが、数ヶ月前からフリースタイルダンジョンにハマっている者として、このまま番組が終わってしまうのは悲しいものですし、このニュースによって「やっぱHIPHOP界隈ってそんなもん」と思われてしまうのも悲しいです。まぁHIPHOP界隈のことなんて正直あまりわからないですが、テレビで見ている限り、「HIPHOPは不良とチンピラのもの」という認識はだんだんと過去のものになりつつある気がします。

 その中でもMCバトルは異常な進化を続けていて、側から見ていると「能力者同士の異次元バトル」のような様相を呈しています。本当、言葉を操る能力者同士が、自分の考えの及ばないような領域で戦っているんですよ。HIPHOPに興味なくても絶対面白いですよ。これまでHIPHOPなんてB-RAPハイスクールでしか知らなかった僕がハマってるんだから間違いない。

 本当は紹介したいバトルが10戦ぐらいあるのですが、ここでは3戦に絞って、フリースタイルダンジョンとMCバトルの面白さについて解説していきたいです。ほんと面白いですよ。

CHICO CARLITO vs R-指定

 初期のベストバウトですね。ここまでモンスター達を相手に中々勝ち進むことの出来なかったチャレンジャーの中で、CHICO CARLITOは圧倒的な力を見せつけてモンスター達をなぎ倒していきました。そして、前人未到の4th Stageまでたどり着き、R-指定をバトルフィールドに引きずり出します。

 R-指定はラップバトルの全国大会「UMB」を3連覇した最強のフリースタイラー。ですが、その3連覇を最後にMCバトルから引退。これは引退から約1年ぶりの復帰戦となりました。

決める最強のロン毛とロン毛
それ出来ないなら本でも読んで
本命CHICO 乗っかるヒップホップ
最初で最後の出会いだぜ say hello もしくはグッバイ
正解などないぜ でもこれがアンサーになるか
最初で最後どうのこうの言うよりも
まずカマしてみてよフロウ

 いきなり「ロン毛とロン毛」「本でも読んで」で7文字の高度な韻を踏んでいますが、実はこれはオリジナルな韻ではありません。

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 この曲の2:40からの「交錯する本音と本音 出来なきゃお家で本でも読んで」という部分が元ネタです。このように、他の曲やバトルのリリックを引用する行為を「サンプリング」と呼びます。 

 この一節は度々サンプリングされる超有名なものなのですが、それをかつての最強フリースタイラーを引きずり出した場で、「決める最強のロン毛とロン毛」と改変した上でサンプリングするのだから、客席が沸かないわけがありません。試合開始一発目がこれだったら、これから先どれだけすごいバトルになるんだろう、と。

 先攻のCHICOの先制パンチは強烈でしたが、久々の実戦のR-指定の第一声もかなりエグいものになりました。

4連覇に高まってるぜ
でもそのロン毛は絡まってるぜ?
空回ってるスキルは要らねえ
正解不正解そんなもんは知らねえ
「こいつを倒せば前人未到」?
「よく頑張った感動した」自民党総裁 まるで小泉
こいつぶっ壊し 立つぜ懲りずにトップに

 末恐ろしいほどの韻の連打! たった8小説の間に4組もの韻を踏むという超絶スキルを見せつけます。「ロン毛」の話も「前人未到」の話もバトル直前やバトル中に出てきたワードなので、これも全部即興な訳ですよ。どんな頭してるんだ。

 そしてR-指定のエグいところは、韻やワードの連想によって話題を次々に切り替えていくところ。「前人未到」から韻を辿って「前自民党総裁小泉」の話になり、「自民党をぶっ壊す」の連想から「こいつぶっ壊し」。ここまででも十分凄いですが更に韻を踏んで「立つぜ懲りずにトップに」。つまり最終的に、この舞台が彼自身の復帰戦であることを踏まえた、R-指定の高らかな復活宣言となっているのです。ちなみに、前自民党総裁谷垣禎一氏でありこのリリックは誤りですが、カッコイイので許されます。

 対するCHICOの2バース目ですが、全体的にR-指定の言っていることの繰り返しになってしまい、ビートには乗っているもののかなり苦しい印象です。最終的に言葉に詰まってしまったところを、R-指定は見逃しませんでした。

詰まっちゃって立ち往生
俺ならマイクロフォン末期症状でも
気づけば後ろにチャンピオンロード
まるでロード トラブル起こすか?
高橋三舟のような関係
ヒビが入るより日々ライムするぜ
今見せるぜ このkick it
まるでお前俺が出て来た事が危機

 言葉が詰まったところを捕まえて「立ち往生」「マイクロフォン」「末期症状」「チャンピオンロード」と怒涛のライミング。「気づけば後ろにチャンピオンロード」はR-指定の歩んできた歴史を思い起こさせる一節です。

 そして「ロード」から「虎舞竜」を連想しての芸能ネタに移行してからの「ヒビが入るより日々ライムするぜ」というパンチラインまでの流れが美しすぎます。何度も言いますがこれ即興なんですよね。

 このバトルは、HIPHOPシーンに付きまといがちな「ワルの文化」的な要素が一切なく、ひたすら「韻の上手さ」「フローの気持ちよさ」「ディスの的確さ」「ユーモア」といったテクニカルな要素で構成されています。要は頭脳戦です。HIPHOPに全く詳しくなくても、見ただけで「ヤバい」と分かるようなものにまで進化を続けているのが今のMCバトルシーンです。

D96 vs FORK

 R-指定は昨年の8月をもってモンスターを卒業したので、通常回では彼の姿を見ることはできません。

 今のモンスター達は全員2代目となるのですが、2代目モンスターの中でも別格の存在となるのが、"ライム至上主義"を掲げるラッパー、FORKでしょう。

 モンスターとなって数々のチャレンジャーを返り討ちにし未だに無敗ですが、その中でも最もヤバい1戦を。

 D96は若手の中でも有望株のラッパーであり、そのフローも中々悪くはありません。対するFORKはフローのほとんど無い語り口調。しかしそれでも圧巻なのがFORKの2バース目です。

全く入って来ねぇよ こいつの
客は棒立ち まるでカカシ
見てるとなんだか俺の方まで悲しい
お前はまだまだ剥けてない
より中身 人は 見据える高み
ヘッズは興奮して前屈みだよ
見た目じゃねぇ 俺は中身オリジナル
俺が勝ってまた深夜2時になる

 8小説のほぼ全てを「ああい」の韻で網羅。韻はスノーボードで言うところのトリック、けん玉で言うところの技みたいなもので、つまり連続で決められるとすげぇってなるんです。動画を見ても、韻を踏んでいくたびに客席が高まっていく様子がわかります。

 そして最後、腕時計を見ながら「俺が勝ってまた深夜2時になる」。フリースタイルダンジョンが深夜1:30〜2:00の番組であること、FORKがモンスターになってから未だ無敗であることを利用したパンチラインです。客席からも「ヤバいヤバい」という声が溢れるほど、えげつないぐらいカッコイイです。韻にこだわるだけでなく、「絶対王者感」の演出が巧みなのもFORKの凄い所です。  

NAIKA MC vs FORK

 ラップは韻を踏めばいいのか? と言われるとそうでもありません。韻を重視したバトルスタイルもあれば、相手との対話を重視したスタイルもあります。そのような異なるスタイル同士のバトルを「スタイルウォーズ」なんて呼んだりします。ここではその中から一つ。

ようNAIKA お前に足りねえのはライムだ
それを教えに来た FORKレペゼンICEBAHN
これはルールじゃねえ HIPHOPマナーだ
お前は今まで群馬で何を学んだ?
そのマナー学ぼうとしねえ奴は
マナーモードみたく黙って ブルブル震えとけ ボケ
邪魔なんだよ下がれチャレンジャー
俺はお前が超えられる壁じゃねえんだ

 「韻にこだわる」という姿勢を見せながら固く韻を踏んでいくFORK。最後の「チャレンジャー」「壁じゃねえんだ」は一見韻では無いですがそれでも踏んでいます。こうした高難易度の韻をさりげなく踏むことで、自身のライミングスキルの高さを示しています。

 そして対するNAIKA MCですが、

え? 壁だと思ったこと一度だってねぇけど?
え~何この人? 韻がどうこう
はぁ?死ねよテメーおい!
別に気にしてないよ韻を踏むんだろ
ひたすら踏んでくれよ
踏まなくてもお前の10年後によ
韻踏まなくてもテッペン取ったぞ おい

 一切韻を踏みません。NAIKA MCの持ち味は韻を無視し、ユーモアと熱さだけで試合を強引に持っていくストロングスタイルにあります。実際このリリックの通り、彼はこのスタイルで2016年のUMBチャンピオンに輝いています。

 韻を踏むのはラップの重要な要素。ですがそれだけで勝敗は決まりません。重要なのは「どちらがヤバいラップをできるか」。正直FORKもNAIKA MCも最早ラップかどうか若干怪しい部分はあるのですが、カッコよければいいんです。

最後に

 本当はDOTAMA vs ACEという抱腹絶倒かつエゲツないバトルも紹介したいのですがここでは割愛。興味があれば調べてみてください。

 いやもう本当に面白いですよMCバトル。一回見てもすげぇってなるし、バトル中のリリックを紐解いてみてもすげぇってなります。HIPHOPに対するイメージだけで避けられるのはちょっと勿体ないのでこの記事を書かせていただきました。

 それだけに今回の事件は残念ですね。フリースタイルダンジョンはMCバトルブームの火付け役だっただけに... この勢いを止めないようなんとかしてもらいたいものですが。

ヤバイTシャツ屋さん「Galaxy of the tank-top」が超エモい傑作ですよと言いたいだけ

 ”ヤバイTシャツ屋さん”という名前からして「あっなんか面白い系の曲やってるバンドなんだな」と直感するんだけど、本当にその通りでヤバイTシャツ屋さんの曲には基本的に何のメッセージ性も無い。

床一面に並べて タンスを一面に並べて
その上で踊るんや それがそう DANCE ON タンスや
何やこの歌の世界観 何歌ってもええってもんとちゃう
って分かってるけどそれでも歌う
YES! This is "DANCE ON タンス"や

タンスの上で さあ DANCE and DANCE
踊れ DANCE ON TANSU and DANCE ON TANSU
なんやこれ タンスの上で さあ DANCE and DANCE
踊れ DANCE ON TANSU and DANCE ON TANSU

 「DANCE ON TANSU」と歌いだけのようにしか思えないサビと、そこまで持っていくために用意された「タンスを一面に並べ」るという強引な設定。本当に中身の無い。しかし、語感重視で組み立てられたサビは一度聴いたら忘れられなくなるほどキャッチーで、ライブではここをみんなで歌いながら飛び跳ねるんだろうなぁと想像できる。自分たちの歌ってることの意味不明さに「なんやこれ」とツッコみながら、頭空っぽにして飛び跳ねるんだ。

 ちなみにこの「DANSU ON TANSU」はアルバムの3曲目に収録されているが、同アルバムの「メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されてる感じの曲」では以下のように歌われている。

メロコアのアルバムの3曲目ぐらいに
よく収録されてる感じの曲
メロコアのアルバムの3曲目ぐらいの
ライブでお客さんを無理やり飛ばせる曲 とべー

 「他の奴ののあるあるを言いながら自分もそのあるあるの中に入ってる」という関西人が良くやりがちなボケ、それをアーティストが心血注いで完成させるアルバムの中でやってしまうのがヤバイTシャツ屋さんというバンドだ。

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Silent Jokerの歌詞考察、または真壁瑞希とかいうジョーカー

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 「Silent Joker」、めっちゃいい曲ですね... 身体はおっさんになっても心はまだまだ中二病です。10年前の僕がこの曲を手にしてたら誇張抜きで1日50回は聴いてました。マジで。この時期に聴いてたら本当に性癖も人生も狂わされるところだった... って、もう狂ってるやないかい! ガハハ。

 過剰なまでに煌びやかでゴシックで激しい音に心動かされるのはもちろん、歌われているのは「言い出したくても言い出せない恋心」というのがまた良い。「もっと上手に伝えられたら...」「素直になりたい」と歌った後に続くのが「月が綺麗な夜ですね」ですよ。もう臨界点寸前まで思いが溢れそうなのに、それでも素直な言葉を伝えることができないんですよ。はぁ。好き。

 さて、歌詞に何度も出てくるジョーカー、「切り札そろそろ見透かして」なんて言葉と共に歌われるものですから、「ジョーカー」=「切り札」=「恋心」、つまり「今あなたのハートの真ん中に Silent Joker」という歌詞は「あなたにこの恋心を打ち明けたい」という比喩表現に聞こえそうですが...

 「切り札」=「恋心」なのは間違いないと思いますが、ここでは少し違う解釈をしていきたいです。

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初星宴舞に行って色々とぶっ壊された話

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1/6〜7に開催された「THE IDOLM@STER ニューイヤーライブ!! 初星宴舞」に行ってきました。

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読書感想文『月は無慈悲な夜の女王』

 人類の歴史において、抑圧する側・される側という構図は常に存在する。抑圧され支配される側は不満を抱えながらも、領主に土地や階級を与えられ、政府に安全を保障されるというギブアンドテイクの関係が成り立っていて、ガス抜きされている。そのバランスがおかしくなると不満がパンクし、暴動が起き、反乱が起き、革命が起こる。これまでの歴史ではそのような事が幾度となく起こってきた。未来においてもそのはずだ。

 我々は月に住む人間だ。月で収穫された食物は飢饉にあえぐ地球のために相当数を輸出しなければならず、代わりに与えられるのはわずかな貨幣。月に置かれた行政府の連中は横暴で、少しでも反抗するそぶりを見せたら徹底的に弾圧してくる。そんな状況に腹を据えかねていた頃、このまま行くと月は数年以内に資源が枯渇し、食糧危機・人肉の共食いが避けられないとの試算が出た。我々は資源を月に輸出してばかりで、地球からは何も返ってこないからだ。

 我々が生き残る術は、あの憎い行政府を打ち倒して、この月世界の独立を勝ち取るしかない。さて、我々には何がある? この月世界で相当な切れ者として有名な無政府主義者の教授、見目麗しくエネルギッシュな革命運動家の女性、そして何より、会話もできて自己学習もできて未来予測もできて自己プログラミングもできる優秀な計算機・マイクもいる。布陣としては十二分過ぎる。しかし...... 月は犯罪者たちの流刑地で、彼らの中には愛国心や独立心など全く無かったのだ。


 「月は無慈悲な夜の女王」は1966年に発行されたSF小説。半世紀以上経ってもSFのオールタイムベストとして名高い作品です。内容は知らなくてもどこかでタイトルは耳にした事があるのではないでしょうか。関係ないですが「君は淫らな僕の女王」ドシコいですよね。

 あらすじは上記の通り、月・地球間の独立戦争を題材とした物語なのですが、月世界は国でもなんでも無いため、個々人に不満は渦巻いていても、団結して地球に一発喰らわせていこうみたいなマインドは最初っから無いんですよね。いくら優秀なブレーンとチート級のスペックを持つ計算機がいたところで、月世界がバラバラでは圧倒的武力を持つ地球軍には敵いません。

 というわけで、この物語は「月世界での独立の機運」「地球での月世界の独立を認める世論」の二つを醸成するための地道な政治的作業が大半を占めます。星間戦争でドンパチのような展開を期待していたらちょっと面喰らうかも。僕もそうでした。

 ただ、そのための方法論・組織論がかなり理にかなっているんです。革命を起こすためには相当数の人間を味方につけなければなりませんが、人数が増えるだけ行政府側のスパイが入り込む余地も増えていきます。ではどうやって、スパイが入り込んでも大丈夫な組織を作ればいいのか。それがこの本の中で語られているのですが、なるほどという感じです。その他にも、主人公たちはあの手この手で月世界の世論を変えよう(団結して行政府に反抗させよう)とするのですが、それもかなり丁寧な描写なのでリアリティがあります。まるでこの方法を実践すれば簡単に政府を転覆させる事ができると錯覚するみたいに。気分は外山恒一

 難を言うとすれば、物語の大筋はほぼ主人公側の意のままに進むのであまりハラハラドキドキする展開が無いということでしょうか。物語というよりは、初期条件とゴールを定めた思考実験といった感触を覚えました。いや、でも流刑地としての月世界を背景とした、月の住人達の暮らしぶりはなかなか興味深かったですし、計算機のマイクはユーモアを解し時には笑えない冗談まで起こしてしまうお茶目な奴ですし、その他の登場人物もちゃんと個性が立っていて、そうした端々のディティールが細かく魅力的に描写されていることによって、この物語全体も説得力があるものに仕上がっているんだと思います。

 あと、まぁこれ仕方ないんですけど、訳文がかなり直訳気味でかなり読みづらかったです。去年の11月の終わり際に少し読んで「ウッ」となってしまったので、このお正月に集中して読むことにしました。まぁ元の文章がかなり訳しづらいものだったらしいですが、それにしても40年前の初訳から一切改訂されていないらしいですよ。傑作SFとして今でも名前が残っているんですから、新訳版出してくれませんか、ねぇ...

ルーテさんアドベントカレンダー 閉会宣言

こちらはルーテさんアドベントカレンダー 最終日の投稿です。


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いい加減、ルーテさんの結婚相手に最も相応しい人を決める

ルーテさんの結婚相手候補にはアスレイ・カイル・ヴァネッサ・ロス・ノールの5人がいる(意義は認めない)。しかし、こんなに多くの選択肢からルーテさんはちゃんとした結婚相手を選べるだろうか? 変な男(女)に引っかからないだろうか。ここでは親戚のお節介ババァと同じように、「ルーテちゃんにはこの男(女)が似合うと思うわよ〜」と適切な結婚相手を斡旋していきたい。

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