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「#神域リーグ」は何故大成功したのか、そして来期への要望

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 天開司主催・神域リーグの半年にも及ぶ戦いが終結し、チームアトラスが優勝の栄誉に輝いた。

 神域リーグは麻雀のリーグ戦である。4名の麻雀のトッププロがそれぞれ監督を務め、ドラフトによりYoutuber・VTuberの中から3名を指名。それにより構成された4名x4チームで全30試合を戦い抜き、優勝チームを決定する。

 自分としては、神域リーグはほぼ全ての試合をリアルタイムで観戦し、半年もの間楽しませてもらった、非常に満足度の高いコンテンツだった。

 それが自分だけではないことは数字の上にも現れている。本配信は常に4万人程度の同時視聴者を確保し、そして各チームの楽屋配信や視点配信でもそれぞれの枠で1000~数千程度の人が集まるという大規模なコンテンツとなった。この興行が成功か失敗かは主催者側が判断することだとは思うが、傍目から見れば神域リーグは間違いなく成功したと言える。

 順調に行けば、来年もMリーグのオフシーズン中に神域リーグ第二期が開催される見通しだろう。というわけで、今回の神域リーグで良かったところ、もし次回があれば改善してほしいことを主観的に書いていこうと思う。

 ちなみに、筆者は雀魂において雀豪3にまで昇段したものの、そこから階段を転がり落ち続け、現在雀傑に降段寸前の中級者と言っていいのかどうかも分からないレベルの打ち手である。麻雀の内容について書いてある部分は信憑性がないので、そのつもりで読んでほしい。

神域リーグの良かったところ

視点配信・応援配信の存在

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 神域リーグの特徴的なところとして、卓全体を俯瞰することのできる本配信の他に、出場選手自らの視点での配信が行われていた点がある。

 Mリーグの卓上ではクールな立ち振る舞いのイメージがある松本吉弘プロだが、上記の神域リーグの視点配信では「ぐわあああああ!!」「何やってんだ!!!!!」と熱く叫びながら打っている様子を見ることができる。

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 リアクションだけではない。千羽黒乃など上級者のプレイヤーであれば、自身から見た盤面を実況中継しながら、自分の思考を視聴者に伝えつつプレイをしている。視点配信を通して、選手の感情や思考をダイレクトに受け取ることができる。

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 これは実は麻雀の放送対局の歴史の中では革命的なことだったのでは、と思う。Mリーグや通常の放送対局では、プレイヤーは「チー」や「ツモ」などの発声以外は一言も言葉を発しない。マナーが悪いだけではなく、それが他のプレイヤーとのチーミングに繋がる恐れがあるからだ。

 選手の思考や心情はそこから中々窺い知ることは出来ない。実況・解説がある程度汲み取ろうとはしてくれるものの、それにはどうしても限界が存在する。どれだけ応援していたとしても、ファンは選手と同じ目線に立つことは出来なかった。

 対して神域リーグでは、選手の思考をリアルタイムで知ることが出来る。「今はこの手を目指してるんだ!」と知ることが出来れば、次にツモる牌によって同じように一喜一憂できるし、説明がなければ分からないような打牌でも、裏側にある思考を知ることで「そんなことまで考えているんだ!」と、より応援に熱を入れることが出来る。

 選手と同じ目線に立って応援する、というのはこれまでの麻雀の放送対局では実現できなかったことだ。ネット麻雀に舞台を設定したことで、それが許される環境を作り、麻雀の新しい観戦体験を作り上げたことが、神域リーグが成功した大きな要因だろう。

初級者・上級者混成のチーム構成

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 神域リーグのドラフトにおいては雀魂のランクを元にCランク(初級者)・Bランク(中級者)・Aランク(上級者)から1名ずつ指名することが条件となっており、必然的にチームはスキルレベルの異なる4人の構成となる。

 初級者が参戦するリーグ戦となったことで、運によって上級者やプロとも互角に立ち回ることのできるエンターテイメント性溢れるゲーム性を、麻雀にあまり明るくない層にもアピールすることが出来たと思う。特にチームヘラクレス・渋谷ハジメは、セオリーに囚われない打ち筋で数々の逆転劇を演じ、神域リーグの台風の目となった。

 また、麻雀初心者層にとっても、同じ初心者のプレイヤーに感情移入して応援する事も出来た。これも、既存のリーグ戦には無かった構造だ。

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 また、各チームが行っていたのが、B・Cランク選手のスキルを底上げするための練習。その多くはYoutube上で配信されることになるのだが、この配信群により麻雀のトッププロが初級者の目線に立って手取り足取り指導するという贅沢極まりないコンテンツが量産されることになった。

 教えられているのは画面の向こうのプレイヤーなのだが、その多くの教えは視聴者達も吸収することが出来る。配信を楽しみながら自分の麻雀スキルを向上させることができた。

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 また、当然ながら選手のスキルも神域リーグ中に大きく伸びた。

 特に、抽象的思考能力の高さで鉄強の思考を次々に吸収し、初級者らしからぬ渋い打ち手に成長したチームゼウス・Fra、漢気麻雀の経験からくる高打点志向はそのままに、手組みや押し引きの技術を身につけ超攻撃的麻雀の打ち手としてポイントを荒稼ぎしたチームアトラス・歌衣メイカの2名の成長は目覚ましかったと思う。

 既存のリーグ戦では各選手の腕を競うという側面が強かったが、選手の成長を楽しみにすることができるというのも神域リーグ特有の魅力だった。

ストリーマーとしての企画力

 神域リーグの各節は2週間ごとに開催されるため、単体ではそこまで濃密なスケジュールではない。その程度の連続性では半年もの期間勢いを維持し続けることは難しかったの思うのだが、その盛り上がりを持続させることが出来たのは、選手として参加していた各ストリーマーの配信企画の数々だろう。

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 特にチームヘラクレス因幡はねるは、神域リーグ参加メンバーを集めてのバラエティ企画を期間中連発していた。2週間の間隔がある中でも、こうした企画の存在によりコンテンツとしての連続性が保たれ、リーグ全体の盛り上がりに大きく寄与したと言えると思う。

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 また、上記のようなバラエティ企画以外でも、異なるチームメンバー同士での交流性も絶え間なく行われてきた。特に、各チームのAランク選手が集合した交流戦は、ハイレベルな対局とガチ過ぎる検討内容が大きな反響を呼んだ。

 約半年の期間中、裏方や主催者だけでなく、選手自らもがリーグ全体を盛り上げようとしていたのは特筆すべきだろう。視聴者を楽しませるスキルに長けたストリーマーを集めたことでこのような動きが自発的に発生し、半年もの長期企画を盛り上がりを持続したまま走り抜けることが出来たのだ。

次節に向けて改善してほしいところ

最終節の形式

 全10節の中でも最終節のみ開催形式が異なり、3試合同時開始・同時進行となっていた。これは主催の天開司から「目無し問題解消のため」と説明されていた。

 「目無し」とは優勝可能性のなくなった状態のことを言う。優勝という大きな目的が無くなり、また優勝争いをしている他プレイヤーを妨害してもいいのかというマナー的な問題も関わり、プレイヤーには通常の状況とは異なる異質なプレッシャーがかかる状態となる。

 これに対処するため、運営としては3試合同時開始とし、全チームが現実的な優勝可能性を持ったままの状態で試合を開始することで目無し問題を解消したかったのだろうと思われる。

 しかし、これは本質的な解決ではない。実際、チームアキレスは第九節終了時点で首位チームとの差が大きく広がり、この時点で目無しになっていた。同時開催では目無し問題を解決することは出来ないのだ。

 さらにこの方式は、優勝決定の瞬間を全員で見届けることが出来ないという、大規模企画の結末としては少し寂しい状況も作り出してしまった。

 個人的には、最終節も他の節と同じく順次試合を開始する方式で別に構わなかったと思う。目無し問題は麻雀においては解決不可能と割り切って、優勝決定の瞬間を見せるというエンターテイメント性を重視して欲しかった。目無しとなったチームについても、Mリーグと同じく、少しでも多くのポイントを得ることを是とするということをリーグとして宣言し、目無しチームのプレイングを正当化してあげれば良いのではないだろうか。

 どうしても目無し問題を緩和したいのであれば、麻雀プロリーグの一つ・RMUが導入している新決勝方式を最終戦に導入するという手法もある。簡単に言えば、トップのチームがアガれば優勝決定、それ以外は続行となるサドンデスマッチである。これも目無し問題を完全に解決することは出来ないものの、通常通りの試合を行うよりは下位チームの逆転可能性を残すことができる。ただ、これを行う場合、雀魂にそうした新機能を実装しなければならなくなるので難しいのだろうが。。。

チームメンバーについて

 最終戦が終わった後、選手や監督から「来年があれば、同じメンバーで戦いたい」という台詞を多く聞くことができて涙を誘うのだが、一方でもし来年開催されるのであれば、チームメンバーは1からドラフトを行なって欲しい。

 大きな理由は、Cランクとして採用された4選手がもう既に初級者を脱して中級者になってしまったからだ。神域リーグの魅力に、「異なるスキル帯のメンバーが団結して優勝を目指す」というストーリーや、「初級者の目線に立って指導や牌譜検討を行う」という麻雀の学習コンテンツの魅力が占める割合は大きいと思っている。その中で、スキル分布が上位に偏った状態で第二期を行なっても、それらの魅力が損なわれてしまう可能性が高いと思うためだ。

 また、神域リーグという存在が初期ドラフトで選ばれた12名だけの既得権になって欲しくないという思いもある。神域リーグがこれだけ大きなコンテンツとなり、ストリーマーとしてのキャリアを大きくステップアップした選手も多くいたと思う。だからこそ、次期は新しい選手を抜擢して欲しいし、神域リーグから新しく羽ばたくストリーマーを発掘して欲しい。同じメンバーでマンネリ化しながら続けていくよりも、常に新しい風を取り入れながら、麻雀界とストリーマー界を繋ぐコンテンツとして、いつまでも発展していってほしい。

あと連盟はいい加減所属プロを雀魂関連のイベントに出演できるようにさせて欲しい