打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

Stadiaと「クラウドゲーミング」という時代について

 techcrunch.com

 就活の時に「クラウドについてどう思いますか?」という質問に、「このままいけばPCのCPUとかメモリとかも全部クラウド化されて、ユーザの手元には画面を映すためだけの薄い板1枚だけが残るんじゃないですかね」と適当に答えたら「いやそんな事したら通信量エグいでしょ」と一笑に付された思い出があるんだけど、Googleはそこらへんの壁を難なくぶっ壊していくんだなぁと思った。

 「Googleが新しいゲーム機を発表する」という噂は少し前からあって、今更Googleコンシューマゲーム業界に参入する意味って...? と思ってたんだけど、実際に発表されたのがゲーム機ではなく「クラウドゲームサービス」だったので納得が行った。Googleは、自前の資産を使って既存のコンシューマゲーム業界を悉く破壊し尽くすつもりなのだ。

 既存コンシューマゲーム機の問題は、とにかくハードが高い事。PS4XBOX Oneは3万円以上もする。いや、これらが積んでいるCPUやGPUの値段を考えてもこれでも破格なのだが。また、本格的なPCゲームを遊ぼうとすると、ゲーミングPCを買ったりメモリやCPUを拡張しなければならないため、もっとお金がかかる。そして時代が進むとより良いグラフィックや処理速度が求められ、新たなハードが出現し、新しいゲームを遊ぼうとするとハードを買い直す必要がある。特にお金のない人にとって、コンシューマゲームを遊ぶ上でこの辺りがハードルになっていた。

 Stadiaは「ゲーム機の役割を全てGoogleのサーバが担う」事にして、この問題を力ずくで解決したのだ。高価なCPUやGPU、大量のメモリは、もうプレイヤーの手元に必要ない。何故ならそれらはGoogleがアホほど持っているからである。コントローラからのインプットをGoogleのサーバに送り、処理したものを映像としてプレイヤーのもとに送る事にすれば、プレイヤーに必要なのはコントローラとネットワーク、そして映像を映す画面だけである。この画面にはGoogle Chromeが用いられるらしいので、WindowsMacLinuxはおろか、TVやスマホもStadiaにアクセスしてゲームを楽しめる。そしてユーザはインプットしかしないので、チートの心配もない。う〜ん、すごい。

 いや、近年様々なサービスがWebアプリケーション化されて、ブラウザを通してどのデバイスからでも同じサービスを受けられるようになっているのだけど、それでもそれをゲームに対して完全に応用しようと考えるのはやっぱり凄い。しかしこの考えは、死ぬほど計算資源を持っているGoogleだからこそ思いつくことが出来てかつ実現可能なんだと思う。21世紀では、革命は銃口からではなくCPUやメモリから生まれるのだ。

 そんな革命家が突然乗り込んできたので、ソニーMicrosoftはかなりヤバいんじゃないだろうか。反対に独自のデバイスで独自路線を走っている任天堂はまだ安心か? 日本ではすでにファミリー層からの信頼を勝ち得ている感があるので、Stadiaとかいう得体の知れないプラットフォームに取って代わられることはすぐには無さそうだ。しかしそれも時間の問題なのかも知れない。

 料金体系やネットワークの帯域の心配、そして遅延の不安もあるんだけど、これをきっかけにゲーム業界が盛り上がってくれればなぁと思う。しかし懸念点としては、どうしても1企業のクラウドプラットフォームという関係上、遊びたいゲームがいつまでも遊べるとは限らくなってしまうという点だ。これはソシャゲと同様の問題なんだけど、Stadiaの場合かなり魅力的なプラットフォームすぎて、そこにゲームタイトルが集中的に投下された場合、もし仮にStadia自体がサービスを終了した場合、それらのタイトルは永久に遊べなくなってしまう可能性がある。そんなドラスティックな例じゃなくても、例えばゲーム内に出演している俳優がコカインで逮捕されてしまった場合、そのゲームが即座に配信停止となり、突然二度と遊べなくなってしまうかも知れない。

 ナイーブなオタクの戯言なんだが、やっぱりゲームは社会的には文化資産であり、個人的には思い出でもある。ストリーミングという儚い土台の上に立つゲームは、いとも簡単に消失してしまうだろう。そうならないためにも、Stadiaには出来るだけゲームを継続的に遊べるようなプラットフォームになって欲しいんだけど... 難しいかなぁ。