打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

精神年齢5歳でゲームをさせてくれ

 13時が早朝だと胸を張って言えた学生生活から卒業し、毎日死んだ目をしながら電車に揺られて朝の9時に出勤する社会人へと変身して数年が経った。

 社会人になって会社に入って右も左も分からず目の前の仕事こなすだけでヒーヒー言ってたあの頃、先輩社員によく言われていたのが「仕事をする時は、自分の立場より上の人の立場に立って仕事することが重要なんやで」という事。要は「プロジェクト全体の中で自分の仕事がどこにマッピングされているのか、常に頭に入れておく事」という事で、ある程度経験を積んできた今ならまぁ同意するんだけど、当時は表面上分かったフリをしながら「なんでお前がやるべき仕事を俺が忖度しながらやらなあかんねん」と心の中で中指を立てて面従腹背の構えを崩さなかった。

 そんな人間なので、課長が「まろみくん、技術ばかりじゃなくてプロジェクトのお金の流れのことも知っておかないと上に上がれないよ?」とか、社長が「社員全員が経営者目線を持って仕事をすることが大事」とか言っても全く聞く耳を持たなかった。僕は人やお金のマネジメントをしたくて会社に入ったわけじゃない。そうでなければ僕は自分で会社を立ち上げている。そんなものはあなた達管理職の仕事でしょ。僕はそんなものやりたくも無いし、考えたくも無い。頼むからこっちに押し付けないでくれ。

 まぁ、こんな感じで上の人の立場に立って考える事を徹底的に拒否していると僕のようにITピラミッドの底辺を這いずり回るウジ虫のような存在になるので、「コイツ世渡り超下手だな〜」と指差して笑うに留めて絶対に真似しないでほしいのだけど。一方で、自分よりも上の組織の考えを掴むとか、またはカウンターパート(客とか取引先)の思惑を酌むとか、そういう「自分が直接所属していない組織について忖度するスキルを身につけよ」という社会的な圧は、歳を取るに連れかなり増していってる感がある。幼稚園や小学校でも、道徳の時間とかで「相手の人の気持ちになって考えよう」という訓練を積まされる訳なんだけど、社会人になってレベルアップすると、この「人」が「法人」になったりする訳だ。そうしないと、相手組織と良好な関係が築けない。つまり組織を忖度するスキルは、社会人として仕事をしていく中で必須のスキルになる。こう考えると、上記の自分の行動は「ヤダヤダ! みんなの事なんて知らない! ボクはボクのやりたい仕事だけやるもん!」と駄々をこねる自己中心的なクソ野郎でありかなりヤバい。でも、僕の精神年齢は5歳程度だから仕方ない。みんな忖度してほしい。

 という訳で、仕事において忖度って重要だよねという話になるのだけど、忖度って疲れるし、辛いし、心が死ぬし、面白く無いし、出来ればやりたくない。自分のプライベートではこんなクソみたいなものからは出来るだけ距離を置いておきたい。だけど、最近は仕事以外でも忖度圧が増してきた感がある。ゲームがその一つだ。ここから本題。

 「ゲーム=ソシャゲ」になって久しい。開発費に数億〜数十億円かけたコンシューマーゲームが8000円で発売されたら「高い」と石を投げられてしまう一方で、数枚のイラストに人気声優のCVを付けたゲーム内カードに人は簡単に数万円注ぎ込んでしまうしまうと人類が知ってしまった以上、ゲーム業界の開発リソースがソシャゲに傾くのは物理法則上仕方がない(ところで「ソシャゲ」と言っても、今やソーシャル要素が無いゲームがほとんどなんですが、もっと良い呼び名無いんですかね)。

 僕も最近はソシャゲばかりやっている。最近はミリシタかデレステしかプレイしていないが、前はグリモアやゴ魔乙、FEHとかもやっていた。ソシャゲとは生きるために常に動き続ける事を宿命付けられた、言わばカツオのような存在で、これらのタイトルも御多分に洩れず、まるで当然の生命活動の一環のように新キャラクター・新イベント・新カード・新機能を次々に実装している。こちらも基本的にそれらの新要素を当然のように日々咀嚼している訳だが、中には「これはちょっと...」と思うものも存在する。例えば「射幸心を煽りたい」という欲望が剥き出しになったガチャが始まったり、これまで頑張って集めて育成してきたカードが無になるような強力新カードが実装されたり、イベントが鬼のように難しかったり、推しキャラがいくら待っても実装されなかったり、公開されたストーリーがクソつまらなかったり...

 ちょっと文句が言いたくてTwitterを開く。僕と同じような文句を呟いている人がいたりして少し安心するのだが、時々、以下のような内容のツイートがRTを経て回ってきたりする。

 「ソシャゲも慈善事業じゃないんだから出番に格差が出るのは仕方がない」

 「2月の売り上げは会社事情的に重要だからそりゃここで射幸心煽るでしょ」

 「最近セルラン下がってたからテコ入れしたんだろうなぁ みんなも課金しろよな」

 「Twitterでぶつくさ文句言っても何も変わらないよ?w みんなゲームを楽しもうぜ!」

 は?

 いや、まぁ、分かるよ。ソシャゲの売り上げって重要だよね。コンシューマーゲームと違ってソシャゲは、売り上げが減ってサービス終了したら二度とプレイできなくなるからね。ここ数年、多くのソシャゲがサービス終了し、サーバー上から消去されたそれらのゲームのほとんどは検索エンジンのどこにもインデックスされず、記録からも記憶からも抹消されている。その悲惨な末路を僕たちはよく知っている。だから、君の言うことも分かるよ。君はこのゲームに長く続いてほしいんだね。だから、このゲームの売り上げのこともずっと考えてる。運営のことも君は人一倍考えている。君は正しい。 大人だね。そうだね。文句なんて言ってないで、いつも頑張ってくれてる運営の人たちに感謝しないとね。

 知らね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!

 いやマジで知らねえわ。なんで? なんで、ただの1ユーザーの俺がそんな、運営のことをわざわざ忖度してあげないといけないの? 俺は楽しむためにゲームやってるの! 実際楽しんでるし、概ね満足してるからここまでゲーム続けてるの。だけど文句の一つや二つぐらい言いたくなる時もあるの! それをなんだ、運営の立場に立ったら仕方の無いこと? 文句を言うのは非生産的だと? はぁ???? そもそもゲーム自体が非生産的じゃろがい!!! 文句ぐらい好き勝手言わせーや!!!!!!!!!!

 思いの丈をぶちまけた後なのでとりあえずフォローしておくと、上記の「運営の立場に立った発言全般」は完全な正論だと思っているし、反論する気もない。ソシャゲは売り上げが立たなければ死んでしまう運命にある。大好きなゲームが死んでしまうのは僕も悲しい。そんなゲーム達が、時には一部のプレイヤーに対してストレスを与えるようなアップデートやイベントを行う時もある、ということは分かっている。ゲーム運営の状況や思惑なんかも何となく透けて見えてしまう時もある。だから、「これはちょっと...」と思うようなアップデートが入っても、「運営の立場に立つとこれは仕方ないよな...」と心の隅っこではぶっちゃけ思っている。何故なら社会人だから。そう言うことを忖度できるスキルは嫌でも身についているからだ。

 しかし同時に文句もめっちゃ言いたくなる。何故なら社会人だから。そういうことを忖度するのは仕事で散々求められているのに、ゲームでもそんな余計なストレス、抱えたくないからだ。そもそも、ゲーム運営は僕の上司でも取引先でも何でもない。僕はどこまで行っても1ユーザー。事情を分かった顔で言われたって、運営の事情を酌み取る必要はどこにもありはしないのだ。

 そして「仕方ないと思うこと」と「文句を言うこと」は両立すると思っている。僕が電車に揺られながら毎日朝9時に出勤するのは就業規則にそう書いてあるからで、これを僕は「仕方のないこと」だと思っているが、文句はバリバリに言っている。みんなもそうだと思う。いくら文句を言うことが非生産的だと言われようが、それは人類皆に与えられた権利だ。憲法にもそう書いてある。

 ゴタゴタ並べたけれども、結局言いたい事をまとめると「ただの1ユーザーの僕が運営の事を考える必要なんて1ミリもないこと」「文句を言う権利は誰にだってあること」の2つ。運営の事情を斟酌出来る人は偉いと思うんだけど、僕はそれに付き合うつもりは一切ない。肉体年齢なりの仕草は仕事でちゃんとやっているから、お願いだからゲームでは精神年齢(5歳)なりに駄々をこねさせて欲しい。