打ち首こくまろ

限界オタクの最終処分場

ミリオンライブ二次創作界隈が「電子レンジ」氏に対して行うべきたったひとつのこと

 この記事では「二次創作界隈」 = 「二次創作の創作者」 + 「二次創作に触れて楽しんでいる人」と定義している。

はじめに結論

 今回の電子レンジ氏の行為に行うべきは、無視することでも、黙殺することでも、皮肉を言ったり茶化したりする事ではない。

 この界隈の一人一人が、電子レンジ氏が起こした行為を真正面から受け止め、「電子レンジ氏の行為は絶対に容認できないこと、自分たちは絶対に盗作行為を行わないこと、今後も界隈がそうあるために力を尽くすこと」を毅然と表明すること。

 電子レンジ氏の行為はただの盗作行為からは一線を画しており、特に「ISF(ミリオンライブの同人誌即売会)において海賊版に極めて近いグッズの頒布を行ったこと」「まるで原作者のような振る舞いで著作権を行使しようとしていること」の2点がミリオンライブ公式から見て心象最悪であり、二次創作界隈への信頼が無くなる可能性がある。このままだと二次創作活動について公式から何らかの制約を課されかねない。

 電子レンジ氏が攻撃を加え続けている以上、もはや問題を沈静化させるために黙っていれば解決するというフェーズではなく、僕たちみんながこの事件に対して向き合い、界隈に自浄作用があることを明確に示さなければならない。

二次創作の原理

 「二次創作はグレー」と説明される事が多いが、法的観点から見れば二次創作は完全な違法行為であることを確認しておきたい。著作物を原作者の許可なく改変することは、著作者の「翻案権」「同一性保持権」を侵害しており、明確な著作権侵害だ。

 ところが著作権侵害親告罪のため、著作者が自ら告訴しない限りは罪に問われることはない。二次創作は、著作権を持っている公式がその権利を行使していないので、「訴えられる可能性はあるが、訴えられていない」という状態になっている。当然、その著作権侵害物を閲覧したり金を払ったりしている人も同様のカルマを背負っている。

 何故、公式は二次創作を著作権侵害として告訴しないのだろうか。僕は公式側の人間ではないし、公式も理由を示す事はないので、考えてみる。考えた結果、2つの理由が挙げられる。

  • 二次創作の存在によって、ユーザコミュニティが活発になるから
  • 二次創作の存在が、公式から販売する各種商品と競合しないから

 この2つの前提があって初めて、公式にとって二次創作は「存在してもいい」存在になる。商品展開の邪魔にはならないし、ユーザコミュニティも発展する。長く見ると、自社のコンテンツの収益が拡大する。良いことづくめだ。言わば、公式は二次創作界隈に対して、この2つの条件が守られる土壌がある事を信頼している。同様に二次創作界隈は、二次創作を行っても公式から訴えられない事を信頼している。二次創作が許される背景には、このような相互の信頼関係がある事が考えられる。

 当然、この信頼関係は言葉にして示されるものではなく、形が無くて見えない、極めて脆い信頼関係だ。だから、二次創作に携わる人間はこの信頼関係を厳守する事を強く求められる。さもなければ、多くの人の努力によって守られてきた二次創作界隈という遊び場が一瞬にして崩壊するだろう。

 その信頼関係を、思いっきり踏み千切ってしまったのが電子レンジ氏というわけだ。

電子レンジ氏の行為

 電子レンジ氏のこれまでの行為は以下のtogetterにまとめられている。

togetter.com

 彼の行為が雑多にまとめられているが、ここでは問題としたい「盗作行為」「二次的著作物の著作人格権行使」について抜き出したい。

 電子レンジ氏は当時10000人以上のフォロワーを抱える、ミリオンライブ二次創作界隈では人気の作家だった。彼のイラストは他の作家の追随を許さないほどスタイリッシュで切れ味があり、その味に多くの人の支持が集まったのだろうと思う。

 ところが3/22、電子レンジ氏がこれまでのツイートを全削除し、代わりに以下のツイートを投稿する。

 この段階では「著しい模倣」がどの程度のものか分からず、「数点のイラストについて模写を行なって発表した」という程度の問題だと考えている人が多数いた(自分もその一人だった)。しかし、この後匿名アカウントからトレス検証画像が次々に投稿される。「著しい模倣」とは完全なトレスであること、その点数は数え切れないほどに登り、もはや彼の発表したイラストの大半が盗作である事が明らかになっていった。

 この時点で特に悪質だったのは以下のイラスト。電子レンジ氏はミリオンライブの周年ライブに設置されたプレゼントボックスにTシャツを贈り、それを受け取った声優がTシャツを着用した写真をTwitterにアップロードしたのだが、このイラストも盗作だった。

 その他にも、依頼を受けて納品したイラストも盗作行為が発覚(しかも複数件)したりと、電子レンジ氏の著しいモラルの欠如が暴かれていった。

 ただし、この時点までにおいての焦点は盗作行為のみであり、それは電子レンジ氏とその被害者のみで完結する話だった(盗作Tシャツプレゼント事件はその範疇ではないかもしれないが)。しかし、4/12以降に発覚した問題はこれまでの盗作行為から一線を画している。電子レンジ氏の行為はただの盗作では片付けられない。

ミリジャンにおける公式イラスト盗作問題

 「ミリジャン」とは電子レンジ氏が頒布した、ミリオンライブを題材としたボードゲーム。6000円超(通販だと8000円)という強気の価格設定が一部で物議を醸したようだが、これに使用されたイラストにも盗作が発覚している。それも、よりによって公式イラストからの盗作

 ミリジャンの場合もう一つ問題があって、それは過去公式から販売されたグッズとコンセプトが酷似していること。

www.asovision.com

 これは2013年に発売された公式グッズなのだが、「ターン制で順番に山からカードを取っていき」「役が完成したら上がり」「役はそれぞれのアイドルの組み合わせに因むもの」という主要なコンセプトがことごとく一致している。公式グッズの方は既に販売終了しており、ミリジャンの存在が公式の商売を邪魔しているわけではないが、それでも公式の感情を刺激しかねない非常に危険なグッズであることは間違いない。この程度のこと指摘する人間周りにおらんかったんか。

 それに加えて公式イラストからの盗作である。自分の絵柄で描いたグッズなら擁護のしようもあるが、公式から盗作したイラストを印刷しグッズとして販売するのは明らかに一線を踏み越えている。キャラクターが入れ替わっているだけで、これは公式イラストを無断で使用した海賊版グッズに極めて近い。さらに問題なのは、これが同人誌即売会のISFで頒布されたこと。健全な二次創作発表の場であるはずの同人誌即売会で、海賊版紛いのグッズが堂々と販売されていた事は極めて重大なインシデントだ。

 当然、ISFのような著作権侵害物を大っぴらに売買できるイベントが開催できるのも公式が黙認しているからであり、それはコミュニティが発展すること、それによって自社が損をしないことを期待してのものだ。そのような場で「公式が以前販売したものと酷似したグッズに」「公式の著作物をトレスして印刷して販売されていた」という事実の重大さを、僕たちはもっと認識した方がいい。普通にISFが取り潰されても文句が言えない。

 ぶっちゃけ、この事についてはISFから声明を出すべきで、そうでなければこの行為を黙認と捉えられかねないし、このままにして第二第三の電子レンジが出現し同じように海賊版紛いグッズ頒布されるような事があれば、その時点でミリオンライブの二次創作界隈は死滅するだろう。再発防止とか具体的な対策等は必要ないと思うが、電子レンジ氏のこの行為に対しては明確にNOを示し、ISFはこのような表現を絶対に許さないという事を毅然と表明するべきだ。それが二次創作発表の場を運営する人間としての矜持だと思うのだが、どうだろうか。

盗作検証者に対し弁護士を通しての警告問題

 「吹雪P@お絵描き練習中〜」氏(以下吹雪氏)は問題発覚以降、電子レンジ氏の問題追及・ミリジャンの返金交渉を行なっていた。4/12にミリジャン公式絵盗作が発覚してからはその検証画像をリツイートしていたりしていたのだが、4/15に電子レンジ氏の代理人を名乗る人物からの警告書を電子レンジ氏本人のDMから受け取る。

 著作権法的には正当(二次的著作物にも同一性保持権などが認められている)なものの、盗作で糾弾されている本人がその検証をしている人に対して法的手段に訴えるというのは、倫理的にはぶっ壊れている行動と言わざるを得ない。

 それ以上に電子レンジ氏の行為は、自らが著作権を侵害する二次創作者であるという立場を棚に上げた振る舞いであり、公式と二次創作界隈との信頼関係を揺るがしかねない。電子レンジ氏は警告書を公開した場合には実際に存在賠償請求を行う事を示唆しており、吹雪氏が警告書を公開してしまった以上、実際に訴訟が行われる可能性が小さくない。

 そしてもし電子レンジ氏が勝訴して損害賠償を勝ち取った時、ミリオンライブ公式はどう考えるだろうか。良かれと思って黙認してきた二次創作物で、それを転載した人間を相手取り訴訟を起こし、数十万円を手にするケースを、これもまた黙認するのだろうか。残念ながらこれは楽観的な想定だと思う。電子レンジ氏に対してはもちろん、その他の二次創作界隈の人間に対しても何らかの介入が発生する可能性がある。

 ちなみにこの問題について、電子レンジ氏・吹雪氏のどちらかが警告書を偽造している可能性が否定できないのだが、電子レンジ氏が偽造したとしても法的手段を執ると宣言していること自体が問題なのでこの議論とは関係なく、また吹雪氏が偽造している可能性については「私文書偽造は懲役もあり得る犯罪であり、リスクが高すぎること」「のちに電子レンジ氏のDMから警告書が送信されてきたスクショを公開しているため、信頼性が高いこと」「盗作を行なった人物が弁護士を雇って著作権法違反で告発するというストーリーは常人には考えられないこと」から限りなくゼロに近い。ここではこの警告書は本物であるとして扱いたい。

日本トレパク史上最悪の事件

 まだ界隈の雰囲気として、電子レンジ氏の行為について明言を避ける、ボヤかす、黙殺するといった行動を取る人が多数見られる。これは通常の盗作騒動であれば正しい対応だ。それは当事者同士の問題なので、そこの中だけで解決すればいい。無駄に口を突っ込むと逆に荒れたり雰囲気が悪く可能性がある。見守るのが界隈にとって一番良いだろう。

 ただし、電子レンジ氏の行為は残念ながらもうそういったフェーズにはない。盗作行為の検証の延長線上に発覚した問題なので錯覚しやすいが、「第三者の作品を盗作する」のと「公式のイラストを盗作して高額のグッズとして販売する」のとは悪質さが別次元だ。さらに、それを追及していた人に対し、あたかも一次創作者のような振る舞いで著作権を行使するというのも、公式から見たら信じられない振る舞いだろう。

 ここまで悪質な事件であれば、界隈の人間がこの事件について沈黙することが良策であるはずがない。黙っていたって延焼は止まらない、この界隈に対する印象もどんどん悪くなる。そしてこのまま有耶無耶になって、電子レンジ氏の事件を知らない人が流入して、いつかまた電子レンジ氏のようなモンスターが現れる。その時に間違いなくミリオンライブの二次創作は死ぬ。みんなそんな未来を望むのだろうか。

 そしてそれ以上に重要なのが、公式と界隈の信頼関係を今こそ守ることだ。電子レンジ氏の行為はこの信頼関係に対する破壊行為で、これに対して何もしないのは、今まで僕たちを信頼してくれていたミリオンライブ公式への裏切りだ。別に電子レンジ氏を攻撃しろと言っているわけではない。

 必要なのはこの界隈の一人一人が、電子レンジ氏が起こした行為を真正面から受け止め、「電子レンジ氏の行為は絶対に容認できないこと、自分たちは絶対に盗作行為を行わないこと、今後も界隈がそうあるために力を尽くすこと」を毅然と表明すること。

 電子レンジ氏というモンスターが生まれてしまった事を正面から受け止める。そしてそれを検証して、二度とこのような事が起こらないようにみんなで気をつける。そんな自浄作用がある集団である事を示す事が、公式への心象を考えればまず第一に行わなければならない事だ。

 ハッキリ言ってこの電子レンジ氏の事件は、日本の二次創作界隈で発生したトレパクの中でも最悪の事件だと思う。これ以上があるなら教えて欲しい。そういう事件がミリオンライブの界隈の中で発生している。この事を僕たちはもっと自覚したほうがいい。

 界隈の雰囲気が悪くなる? 今だってどんどん過去の盗作が発覚しているし、何よりも電子レンジ氏自身が燃料を注いでいるじゃないか。みんなが言及することで他ジャンルにまで話題が届くことが嫌? こんな悪質な事件、多くの人にまで拡散されるなんて時間の問題だ。楽しみたいだけなのに、何故そんな事をしなければならないのか? 確かに二次創作は楽しい遊びだが、それは公式の企業活動を邪魔しないという大前提の上にあるもので、それが脅かされているのならば立ち向かわなければならない。それが二次創作に触れる人間全員の責任であり、それが嫌であれば二次創作に向いていない。

 ミリシタから入った人間にとって、ミリオンライブの二次創作は非常に多様で、新鮮で、元のキャラクターの魅力に作者の味が加わった、素晴らしい作品が数多くある界隈だと思っている。ISFに行けば毎回20冊ほどは買っているし、Twitterでは日々様々なイラストやSSが流れてきて、僕の生活を彩っている。このような素晴らしい界隈が、これからも末永く続く事を切に願っている。